東芝から独立し、2003年10月に4社が集まって設立された東芝ソリューション。2004年は社内改革に力を入れた。IT投資はまだまだ上向かない状況で、中国へのオフショアリングやUMLを活用したプロジェクトの実施など、着実に顧客へのサービス品質を高めている。2005年は個人情報保護法が施行され、早くから対応を表明していた同社に期待が集まる。

ITmedia 2004年を総括してください。

澤田 東芝ソリューションは、2003年の10月に東芝本社から独立したばかりであるため、2004年を振り返ると改革、改善の1年だったというのが本音です。4つの会社で育った人が集まっているため、従業員を1つに方向に持っていくことに社内的にエネルギーを使っています。

 最も大事なことは、付加価値の高いビジネスにリソースを集中することです。たとえば、システムインテグレーターであるわれわれがPCを販売しても効率が悪いため、なるべく避ける方向で考えています。その分野を端的に言えばソリューションということになります。また、顧客の視点で考えることも重視しました。“期待に応えるな、期待を超えろ”というロゴを作り、言われたシステムをただ開発するのではなく、顧客があっと驚くような価値を提供しようと努めています。

 また、CS向上委員会を毎月行っています。これは、顧客企業にアンケートを行い、営業活動をどう評価しているかを調査し、社長以下全員が、毎月1回議論します。

 一方、ソリューションを提供する上でのコンセプトとして、プラットフォームフリーを掲げています。現在はオープンシステムの時代であるため、いいハードウェアやソフトウェア製品が次々と登場します。いい製品を組み合わせて提供するソリューションベンダーとして、顧客にアピールしています。

中国調達に注力

 2004年にわれわれが取り組んだもう1つの分野は中国調達でした。デジタル家電などハードウェア製品の価格がどんどん下がる原因は、中国で製造し、低価格で販売すれば、顧客が満足するという考え方でビジネスをしているからです。ソフトウェアも完全にそういう時代に入りました。どこの会社も様子を見ながら始めている段階ですが、われわれは腰を据えて中国調達を行っています。

ITmedia システム要件を中国に投げるオフショア開発というイメージですか?

澤田 それだけでは限界があります。現在、中国から多くの人が東京に来て、上流工程の設計からプロジェクトに入ってもらっています。逆に、日本人が多く中国に行き、商習慣の違いなどのサポートをしています。距離が離れているため、仕様書に記載されている内容が不十分であったり、文化の違いなどで、判断に相違があった場合でも、コミュニケーションの難しさから、現場の判断でプログラムを書いてしまい、結果的に納品されたソフトウェアが全く使えなかったという経験を過去8年間で何度もしています。オフショアリングでは、“日本は出す人、中国は受ける人”のような発想をするとうまくいきません。そのため、相互の人間をバラバラに日本と中国に配置するようにしています。

ITmedia 仕様書の理解を統一するためにUMLで書くという話も聞きます。

澤田 UMLにも取り組んでおり、2004年度も12のプロジェクトにおいて、UMLで仕様書を書くトライアルをしています。また、UMLからソースコードを生成するツールを開発し、現在は拡張版の構築に着手しています。

ITmedia 顧客企業の動きで目だったことはありますか。

澤田 消費者との接点をシステム化する企業が多かった印象があります。具体的に言えばコールセンターです。製造業が顧客とのチャネルを増やし、製品に関するクレームを管理するといったニーズです。2005年で言えば、4月に施行される個人情報保護法に絡んだシステム化ニーズに注目してます。

個人情報保護法への対応

ITmedia 企業は個人情報保護法に対して、違反しないことを目標にするのか、あるいは、より積極的な態度で臨むべきでしょうか。

澤田 セキュリティポリシーをどう設定するかにかかっています。実際に、セキュリティポリシーがある企業は少ないですが、無い企業は何をしていいかが分からないので、われわれはコンサルティングする形で企業と話をしています。教育や、犯罪に遭った場合の対処方法の徹底など、最低限の情報保護への取り組みについては優先して取り組まなくてはいけません。


ERPや業務アプリケーションなどの機能的な不十分さと顧客ニーズのギャップを埋めるのが仕事と澤田氏。「逆にあまり完璧な製品が出てくると困るかもしれない」と笑う。

 ただし、内部の従業員に悪意があって、意図的に犯行に及ぶケースなどは、なかなか対処が難しいです。だれがデータベースから情報をコピーしたかなどを特定することは、通常はできないことが多い。ログの確保など、システムとして対応するには、2年など段階的な計画の中で順次行う必要があります。

 そのため、顧客企業のシステムを開発する際に使うテストデータももらえない状況です。もし、本番データをもらってそれが流出したら大変なことになりますので、顧客に負担を掛けることになりますが、テストデータには本番データではなく加工したものを使っています。現在は、テストで使った用紙を気軽に捨てることもできません。特別な箱を用意して、そこに入れ、密封して裁断するというプロセスを踏んで処分しています。

ITmedia 導入事例を教えてください。

澤田 2004年に一番多かったのはコールセンター、そして調達システムの構築です。もともと、東芝で調達コストの削減を目指したときに使ったシステムを外販向けに作り直したものです。松下電器などに提供しています。

ITmedia 2005年の展望は?

澤田 IT投資がどんどん増えてほしいと考えていますが、経営側としてはそうは思っていません。投資効果が出る目処がつかなければ投資しないという傾向は今後も変わらないでしょう。顧客企業がベンダーを選ぶ基準は大きく分けて、提案力、システムインテグレーション力、コストの3つです。コスト競争力では、中国調達の活用など他社よりも優れているという確信しています。

 課題は提案力です。われわれの技術者の多くはアプリケーションエンジニアです。今後のアプリケーションエンジニアは、業務コンサルティングができなくてはなりません。

 対象とする顧客としてはやはり中堅中小企業への取り組みを強化したいです。販売管理や生産管理など、導入が比較的容易な製品を扱うことで何らかの方向性を出していきたいと思います。

 IBMはPwCを、NECは先日アビームコンサルティングを買収しました。富士通には富士通総合研究所があります。しかし、われわれはコンサルタント部門を持っていません。そのため、提案が個人の能力にかかっている傾向があり、2005年に向けての課題です。

流通業などは2日から営業していることもあり、すぐに顧客企業の接待が始まります。毎年、気づいたら正月が終わっていたということが多い。年賀状をもらうとその場でアドレス帳のメンテナンスをします。バッチ処理ではなかなか難しいですが、オンデマンドで管理していけば意外に容易です。

[ITmedia]

この記事に対する感想

    この企業の方針・戦略について
    よく理解できた 理解できた あまり理解できなかった

    この企業の製品・サービスについて(信頼性)
    大変信頼している 信頼している あまり信頼していない

    この企業の製品・サービスについて(興味・関心)
    大変興味・関心がある 興味・関心がある あまり興味・関心がない



関連リンク