業務用PDAと非接触ICタグ内蔵リストバンドで顧客に便利なフィットネスシステムを実現
山口県内各地でスイミングスクールおよびフィットネスクラブを経営するSSS(スリーエス)グループは、カシオ情報機器株式会社のフィットネスシステム「mobile check-fit」を新たに導入した。会員証の代わりにICタグを内蔵したリストバンドを使うシステムで、入退館の手続きを効率化して利便性を高めるだけでなく、トレーニングメニュー入力などを手軽に行えるようになり、トレーニングの充実感を得られるようになった。
トレーニング内容を管理するためICリストバンドで手軽に情報入力
多様なトレーニングマシンをはじめ、プールやダンススタジオなどを備えるフィットネス施設では、それぞれのメニューが多岐に渡るため、会員一人ひとりがどのようなトレーニングを行ったかという履歴を管理することが困難だった。しかし利用客は、それぞれの目的があって施設を利用しており、その目的のためには、トレーニングの履歴を管理し、その成果を見極めることが重要だ。
「運動そのものは楽なものではありません。例えばダイエットを目的にしている方なら、それぞれのトレーニング手段でどれだけ体脂肪を減らすことができたかを知ることで、モチベーションにつなげることができるはずです。お客様が、それぞれの目的に沿って効果的なトレーニングを選び、実施できるよう、トレーニング成果を明確に示せるシステムが必要だと感じていました」と、SSS(スリーエス)グループ常務取締役の井町雅之氏は語る。
こうした課題に対し、トレーニング機器メーカーではIT化したトレーニング機器を開発している。コンピュータと連動するトレーニングマシンによって、トレーニング情報を自動的に収集できるというシステムだ。
「ITトレーニングシステムも検討はしました。しかし、対応したマシンを揃えなくてはならずコストがかかりますし、ほとんどのシステムではマシントレーニングの情報しか入力できないという問題があり、導入には至りませんでした」(井町氏)
SSSグループにとって効果的な解決策を提示したのはカシオ情報機器だった。カシオ情報機器のフィットネス施設向け会員管理システムを10年ほど前から利用してきたSSSグループに対し、ICリストバンドの利用を提案した。
それが、「mobile check-fit」だ。非接触型ICタグ(日立製作所の「ミューチップ」)を内蔵したリストバンドと、ICタグリーダーおよび無線LAN機能を搭載したカシオ計算機製の業務用PDA「CASSIOPEIA DT-10」の組み合わせで、施設内のあらゆる場所から情報を入力できるようになっている。例えば、プールやスタジオでのトレーニングの際にも、インストラクターがPDAで出席を取ると同時にトレーニング内容を入力することが可能だ。
「mobile check-fitはトレーニングマシンとの連携機能はありませんが、既存トレーニングマシンはもちろん、施設全体のトレーニングに対応できます。ネットワークで各施設を結んで情報を一元管理し、別の施設でトレーニングを行っても、その情報を反映させられます」と、井町氏はその利点を語る。
なお、mobile check-fitは、各種トレーニングメニューの情報収集のみならず、カシオ情報機器のハイセキュリティ会員管理システム「チェックフィット・セキュア」と連携し、ICリストバンドを会員証代わりにした入退館処理も行える。フィットネス施設では、トレーニングウェアやスイムウェアに着替えてしまうため、紙やカードの会員証では持ち歩きに不便があったが、ICリストバンドなら、身に付けたままプールに入ることも可能だ。
スタッフの負担軽減だけでなく利用者の利便性が向上
mobile check-fitの構築は、SSSグループの要望を盛り込みつつ、2005年9月頃から約半年をかけて行われたという。
「例えば、血圧計の情報を取り込んで体調管理に利用できるようにしています。特に高齢のお客様は血圧を心配されることが多いので、このような機能をつけてもらいました。また、摂取カロリーの入力もできるようにしましたので、トレーニングによる消費カロリーや基礎代謝とのバランスも分かるようになっています」(井町氏)
mobile check-fitは、ICリストバンドをPDAのリーダー部にかざして読み取らせ、画面上のボタンをタッチしたり数字を入力するなど、簡単な操作でデータを入力できる。例えば、トレーニングマシンを利用する場合、ジムの壁にPDAが設置されており、マシンに応じた端末を選んでICリストバンドをかざし、負荷や回数、時間などの数値を入力するだけだ。プールやスタジオでのトレーニングに関しては、インストラクターの指導を受けるのであれば前述の通り出席確認と同時に入力される。プールなどで個人的にトレーニングを行う際には、メニュー画面から内容を選んで数値を入力することも可能だ。
トレーニング情報を入力する際、即座に消費カロリーを計算し、表示するようにしたのもSSSグループが工夫したポイントの一つだという。あらかじめ消費カロリーを知っておくことで、トレーニングにも身が入るというわけだ。もちろん、集計も自動的に行われ、退館時には当日分の集計データを受け取れるようになっている。
なお、これらの利用方法は施設内各所に掲示してあるほか、どうしても分からない利用者のために、スタッフを呼び出して説明を受けられるよう、ヘルプボタンも用意されている。
mobile check-fitは、SSSグループ7営業所8店舗のうちフィットネス施設4店舗、スイミングスクール2店舗に導入され、2006年7月から実際のサービスがスタートした。
「月額105円の有料オプションとして提供していますが、便利だということで利用するお客様が増えていますね。導入6店で合計約2万人のお客様が登録されていますが、サービス開始から1カ月の間に8000人あまりが利用されるようになりました」と、順調にスタートしている。
多くのユーザーがmobile check-fitを利用するようになったことで、スタッフ側の負担も軽減されることになった。
「これまで、トレーニング内容の管理は、病院のカルテのように紙に手書きで行っていました。毎月、それを集計してお客様に手渡ししていたのですが、この作業にはかなりの手間がかかりました。mobile check-fitをお使いのお客様なら、集計は完全に自動化されていますから、大いに助かっていますね」(井町氏)
利用者の健康管理に加え安全面にも配慮
SSSグループでは、子供の利用者向けの機能もmobile check-fitに盛り込んでいる。
「いつ来て、いつ帰ったのか、すぐに分かるよう、ICリストバンドでの入退館処理と同時に保護者にメールを送る機能をつけました。このようなご時世ですから、保護者の方に安心してもらえるようにしたいと考えたのです」(井町氏)
また、今後は、施設内の買い物にもICリストバンドを使えるようにしていきたいと井町氏はいう。
「その他の将来展望に関しては、まだ明らかにできませんが、お客様がご不満に感じる点があれば改善し、ご要望があれば計画的に取り組んでいこうと考えています。mobile check-fitの採用は世界初とのことですが、そんなことよりもお客様に満足していただきたいのです」
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