大型ショッピングモールのテナントで多機能端末として活躍するタッチパネルPC
群馬県高崎市の郊外に新設された大型商業施設、イオン高崎ショッピングセンターは2006年10月にオープンした。全周1.8kmの広大な敷地には3300台の無料駐車場が用意され、店内には大型スーパー「MYCALサティ」やシネコン「イオンシネマ」に加えて170もの専門店がテナントとして軒を連ねる。ここでは、広い店内で管理事務所と各テナントの円滑なコミュニケーションを実現するため、独自の情報システムが用いられている。その端末として多くの店で活用されているのが、カシオのタッチパネルPC「BT-9000」だ。
大型施設ならではの課題を解決する施設内コミュニケーションツール
現在、イオンモールは、ショッピングセンター開発をリードするディベロッパー企業として、お客様のあらゆるニーズに応える大規模複合型ショッピングセンターを各地で開発・運営している。
これら大型施設では、新たな情報システム「モールメッセンジャー」が事務所とテナント店との間のコミュニケーションツールとして用いられ始めている。過去の商業施設運営の経験を踏まえ、イオンモールが独自に開発したシステムだ。施設内にネットワークを張り巡らし、各店舗にはWindowsクライアントを設置、モール内の連絡事項や事務手続きなどをその場でやり取りすることが可能となっている。また、端末にはカードリーダーが内蔵されているので、同じインフラを利用してクレジットカードの処理も行えるようになっている。
「これまでのショッピングモールでも、POSレジに簡易的な連絡機能を搭載していましたが、携帯電話のメール程度の機能しかなく、事務所から各テナントに簡単な情報を配信するのが精一杯でした。各テナントの従業員登録や共有部分の設備予約などといったやり取りは、事務所に電話するか、直接事務所に来ていただくしかなかったのです。しかし巨大なショッピングモールでは、店舗と事務所の往復が大変です。お客様が多いときなどは、店のスタッフも店を離れられません。一方、モール側としても、多数の専門店がありますから、連絡事項があっても情報が届くまでに時間がかかってしまうのです」と語るのは、イオンモール 管理本部 情報システムグループ マネージャーの安井淳氏。
そこで、テナント用のカード端末を発展させ、コミュニケーションにも利用しようというアイデアで作られたのがモールメッセンジャーというわけだ。
省スペースかつ操作しやすい「BT-9000」を推奨端末に
2006年4月にオープンしたイオン千葉ニュータウンショッピングセンターでは、モールメッセンジャーのクライアントにノートPCを用いていた。しかし、実際に使ってみると、設置場所や操作性の面で、より改善したい点があったと安井氏は言う。
「現金決済用のレジとは別に置かねばなりませんし、カードリーダーも必要ですから、ノートPCでも意外に場所を取るのですね。また、PCのキーボードでの操作も、店員によっては使いにくいと感じていたようです。カードリーダーを組み込むことができ、タッチパネルを搭載し、かつ水にも強い端末が必要だと感じていました」
そこで選ばれたのが、カシオのタッチパネルPC「BT-9000」だった。
「タッチパネル操作ができるPCはたくさんありますが、一体型で防滴仕様、カードリーダー内蔵可能というのは他のメーカーにはありませんでした」(安井氏)
BT-9000は、2006年7月にリニューアルオープンしたイオン新居浜ショッピングセンターから採用されている。モールメッセンジャーも改良され、タッチパネルで操作しやすい画面が用意された。なお、ノートPCも引き続き使えるようになっており、店ごとの都合に合わせ、いずれかの端末を選べるという。
イオンモール イオン高崎ショッピングセンター 管理課の木村紀子氏は、新居浜店で管理を担当し、後に高崎店の担当となった。どちらの店でも、BT-9000は店舗スタッフから高く評価されているという。
「BT-9000は、PCに不慣れな店員さんでも使いやすいのがいいですね。カード専用端末などは操作に慣れが必要で、しかもキーの押し間違いなども多かったのですが、BT-9000のおかげで新人教育が楽になり、入力ミスも減りました。オープニングスタッフには、他店で経験を積んだヘルプ店員も多いのですが、そういう方々にもBT-9000の使いやすさを高く評価していただきました」
事務の手間を減らしつつ専門店とショッピングモールの連帯を強化
モールメッセンジャーでのコミュニケーションのため、イオンモールではBT-9000に小型キーボードを接続して利用している。
モールメッセンジャーでやり取りされる情報は、例えば会議やイベントなどの案内情報、衛生面や治安面などの注意情報が事務所側から配信され、店舗側からはショッピングモールに対する意見や要望などが送られる。ときには、長文を送ってくる店もあるとのこと。
「今では、日に3〜4通のメールが専門店から届きます。内容によっては、個別に返信するだけでなく、全店に通知することもありますね」と木村氏。
このようなやり取りのおかげで、以前より専門店との連帯感が強まったという。
また、モールメッセンジャーにはモール内の会議室予約や深夜作業の届出、レジ用紙の発注といったグループウェア的な機能もあり、予約や注文のミスもなくなった。
「今後は従業員登録のシステムもモールメッセンジャーに組み込みたいと考えています。各専門店で採用した従業員情報の登録を各専門店の端末から行っていただき、あとは事務所で入店カードを発行します。こうした機能を追加するのは、手間を減らすと同時に、個人情報をより安全に管理したいという考えからです」(安井氏)
イオンモールでは、今後も年間3〜4店のペースで新たなショッピングモールを展開していく計画だ。これら新規店舗でも、また既存店でもシステム更新や改装・増床などのタイミングに合わせて、モールメッセンジャーには引き続き改良を加えながら、BT-9000とともに展開していく方針だという。
「1〜2年の間には、全店にモールメッセンジャーを展開したいですね。そして、電子マネーへの対応も進めていきます。PCベースの端末を使っているのは、こうしたカードへの対応が従来型クレジット端末では難しいという理由もあるのです。専門店が販売に専念していただけるよう、我々はショッピングモールのインフラの中心にPC端末を据えることで、専門店を支援していきたいと考えています」(安井氏)
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