多機能なハンディターミナルの活用でカーショップでの接客対応を迅速に
自動車用品販売大手のオートウェーブでは、店員が接客中に店内どこからでも在庫やピット空き状況の確認、注文が可能なPDAシステムを開発し、接客応対の品質を向上させた。PDAには、バーコード読み取りやタッチペン操作、無線LANなどの機能や堅牢性などが求められるが、同社はカシオのハンディターミナル「DT-5100」および「DT-5200」を採用している。
「ファミレスの注文端末」のような自動車用品店の注文システムを構築
広い店内に多彩な商品が陳列される自動車用品店。店員は、その広い店内を歩き回りつつ、お客様の相談を受けたり、販売やピット作業の手配を行ったりしている。
自動車部品はサイズ違いなどのバリエーションが多く、特にタイヤやホイールなど大きな商品では、全種類を店頭に陳列しておくわけにはいかない。そのため、店員がお客様の車種に合う商品を伝票に記入し、お客様はその伝票をレジに持っていって支払いをするのが一般的な販売スタイルだった。
「しかし、店員がその場で在庫を確認することができず、しばしばお客様を待たせてしまうことが最大の課題でした。また、在庫の管理も紙の伝票で行っていたため、欠品していたことに気付かず販売しようとしたり、逆に入荷していることに気付かず在庫切れと回答して販売機会を逃してしまったりすることもありました」と、オートウェーブ 営業本部の川島伸執行役員は言う。
川島氏は、そういった課題を解決するため、10年ほど前からハンディターミナルを使った販売システムを検討していた。
「ちょうどファミリーレストランの注文端末のようなイメージですね。お客様と立ち話をしながら、その場で在庫を確認して注文できるようになればと考えていました。ですが、ピット作業や値引き販売など自動車用品店特有の事情もありますし、ハードウェアの価格もネックとなり、なかなか実現できませんでした」(川島氏)
川島氏が考えていたのは、注文も在庫管理も、ピット作業の空き状況も、全て同じ端末で処理できるようなシステムだった。それを実現できる高機能なハンディターミナルは、なかなか見つからなかった。
しかし2002年、川島氏が待ち望んでいた端末がついに登場した。
「カシオのDT-5100で、何年も思い描いていたシステムがようやく現実のものになりました」と川島氏は言う。
2003年7月、埼玉県戸田市にオープンした美女木店で、DT-5100が最初に用いられることになった。その開店日に合わせてシステムを構築したのは、オートウェーブが開業して以来ずっと同社のシステム開発に携わっているシステムインテグレーターのKPSだ。
KPS 代表取締役の菅谷隆夫氏は、「このシステムでDT-5100を採用したのは、無線LANを搭載し、Webやメール、VoIP通話が可能で、さらにカメラが搭載されていることがポイントとなりました」と説明している。
より小型軽量で高速処理が可能なDT-5200を後継端末として選択
美女木店でのデビュー後、DT-5100を端末としたシステムは改良を加えつつ各店舗に展開されていった。
2006年7月には、茨城県ひたちなか市のひたちなかニューポート店がオープンした。ここでは、新たに登場した最新モデル、DT-5200を端末として採用している。
「DT-5200は、処理速度がかなり速くなりましたね。DT-5100では少し時間がかかっていた処理もあったのですが、それが改善されました。また、小型軽量になり、端末の角が丸みを帯びた形になったので持ちやすくなっています。電池の保ちも良くなりました。DT-5100もそうでしたが、DT-5200も普通に使っていて故障することはなく、安心して使える端末だと思います」と、川島氏は高く評価している。
実は、オートウェーブでは、DT-5100の次の端末として、DT-5200と他社製品との比較検討を行っていた。
「2003年の時点ではカシオ以外に導入できそうな端末はなかったのですが、最近は他社でも同様の機能を搭載した端末を出しているのですね。ただ、他社製品も良さそうな面はあったのですが、形も電池持続時間もDT-5100とほとんど同じでしたので、ひたちなかニューポート店では、より性能の高いDT-5200を使うことにしました」(川島氏)
迅速な接客と会員への手厚いフォロー、さらに店員の効率向上や通信コスト削減も実現
オートウェーブでは、DT-5100やDT-5200を、店内のさまざまなシーンで活用している。例えば売り場では、商品のバーコードを読み取って商品の情報や在庫状況を確認でき、商品の取り置きなどもリアルタイムでできるようになった。
注文時には、値引き処理なども端末上で入力でき、注文を確定すればレジにデータが送られる。
「紙の伝票を使っていた頃では店員がレジまで付き添って値引き処理を伝える必要があり、レジでも商品のJANコードを入力してから値引きした価格に打ち直さねばなりませんでした。店員は手間がかからなくなり、レジの処理が迅速になったおかげでお客様が待たされることも少なくなりました」(川島氏)
さらに、会員カードのバーコードを読み込めば、お客様が所有している車種などの情報を見ることができる。いちいち車種を聞いたりせずに済み、常連客を確実にフォローできるようになった。会員情報は全店舗で共有されているから、どの店に訪れても同様の対応が可能だ。
ピット作業の状況も、店内にいながらにして把握できる。何台が作業中なのか、その作業段階はどのくらいかを店員のDT-5200で確認できるほか、お客様はレシートに印刷された二次元バーコードを携帯電話で読み取ることで、自分の車がどのくらいの作業段階なのかを見ることができる。
お客様へのサービスを向上させると同時に、店員の作業効率も向上した。
「各店舗には20〜30台の端末がありますが、閉店後の棚卸し作業には、その店にある全ての端末を使っています」(オートウェーブ システム担当の松田功氏)
システムへのログインは名札に印刷されたバーコードを読み取るだけで済み、退勤時間の管理も端末上で行えるようになっている。
「また、店員向けの機能としては売上実績などをブラウズできるようにしました。権限によって見られる範囲は違いますが、個人の実績や店舗全体の実績を確認できます」(川島氏)
店員どうしの連絡にもVoIP電話機として活用されている。店舗間はWANで結ばれており、他店との通話も無料だ。なお、オートウェーブでは事務所でもVoIP化を行っており、両方の効果を合わせて通信コストは半減したという。
カメラ機能の活用で顧客満足度の向上を狙う
同社では、現状に満足しきっているわけではない。端末のさらなる活用を検討している。
「実は、まだ端末に内蔵されたカメラを活用できていないのです。詳しくは言えませんが、今後はカメラ機能を使って、お客様に喜ばれるようなサービスを提供していきたいですね。やはり、お客様のためになることが一番で、それが店のためにもなると思います」(川島氏)
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