食品鮮度管理の最前線で活躍する新鋭ハンディターミナル:食の安全・安心をシステムで支える
日本食研は、製品出荷段階での鮮度管理を強化すべく、愛媛県のKO宮殿工場配送センターに最新のWMS(倉庫管理システム)を導入し、端末としてカシオのハンディターミナルを採用した。「食の安全・安心」に対する消費者の意識が高まっている中、同社は物流段階における鮮度管理の強化に成功している。
消費者の要望に応えるべく鮮度管理を強化
日本食研は1971年の創業以来、家庭用のみならず業務用の混合調味料、さらには食材、資材に至るまで、実に7800品目にも上る多彩な商品の展開を通じて、食文化の創造に努めている。たれ類の出荷量およびから揚げ粉の生産量で国内トップシェアを獲得しているのをはじめ、オーストリアのウィーンにあるベルベデーレ宮殿をモチーフにしたKO宮殿工場や、同工場が登場するCMでも話題を集めている、食品業界でも注目の企業だ。
同社の特徴は、多彩な商品を自社で開発、製造、販売していることにある。営業は1800名体制、141拠点で日本全国を網羅し、百貨店やスーパー、食品メーカー、飲食店などの顧客に対し、商品を提供しているという。工場では、製品の品質はもちろん、多品種少量の商品を効率的に生産できるよう、そのラインには多くの工夫が盛り込まれている。そして、物流に関しても、人的ミス防止や作業の効率化を図るべく、WMSが活用されている。
このところ賞味期限や生産地、原材料など「食の安全・安心」に対する消費者の意識が高まっている。こうした社会情勢の下、日本食研では顧客により安心してもらえるよう、物流段階における鮮度管理の強化を図ることにした。具体的には、商品種別ごとに自社の出荷期限を設定し、基準に適合した鮮度の商品を出荷するようにしたのである。日本食研物流部の武方繁樹課長代理は、その経緯を次のように話す。
「食の安全・安心に対する社会的な要請は、日々高まってきています。その声は営業部門を通じてわたしたち物流部門にも伝わっており、従来の運用ではお客様の要望に対応することが難しくなってきたため、システム化して合理的に鮮度管理を行えるようにしようと考えました」(武方氏)
入荷・在庫・出荷管理でカシオのハンディターミナルを活用
鮮度管理をコアとするWMSの導入に当たっては、各社のパッケージシステムの比較検討はもちろん、専用のアプリケーションを開発することも含め、さまざまな手法が検討された。最終的には、最も目的にマッチしていること、また比較的短期間で導入が見込めるという点から、セイノー情報サービスの食品業界向け物流センター管理システム「SLOTS」の採用を決めた。
「商品ごとの出荷期限管理や、多品種少量商品の効率的な管理など、当社が目的としていた機能を備えているという点が最大の理由です。また、セイノー情報サービスは以前から物流面でお付き合いのあった西濃運輸のグループ企業であり、社会的な信用度が高いことも評価のポイントでした」と物流部の河口日出満係長は採用理由を話す。
2007年9月ごろからスタートしたSLOTSの導入プロジェクトの中では、検品用端末の選定も行われた。無線LANを通じてサーバと通信し、商品や棚のバーコードを読み取って入出庫などの処理を行うためのハンディターミナルが必要となるのだ。当初、セイノー情報サービスではSLOTS用の端末として、カシオの「DT-950」を推奨していた。
セイノー情報サービス第二開発部の五藤秀寿次長は「カシオのハンディターミナルは西濃運輸グループでもドライバー用端末として使っていたことから、その信頼性や使い勝手を評価していました。またSLOTS側のソフトウェア要件としてはWebとの親和性が重要でした。その点でカシオのDT-950はWindows CEをベースとしており、使い勝手のよいWebアプリケーションが構築できるBiz/Browserが動作することなどから、要件を満たしていました」と話す。
日本食研向けにシステム構築を進めている過程で、カシオが新製品「DT-X7」を発表した。DT-X7はSLOTSの端末としての基本的な条件を備えているだけでなく、性能面でも向上していた。カラー化された画面は視認性に優れ、小型・軽量化を図りながら持ちやすさを追求したデザインは携帯電話に近い操作性を実現しており、はじめてハンディターミナルを操作する人でも十分に使いこなせる端末であると判断し、DT-X7を推奨するべく検証を行った。
「これまでも多くのハンディターミナルに触れてきましたが、DT-X7は処理が速い。今後、オフライン時に端末内でデータを処理するというような使い方をする場合でも、軽快な動作が期待できます」(五藤氏)
しかし、DT-X7の特徴はそれだけではない。これまでのハンディターミナルになかった使いやすいデザインを徹底的に追及した製品だ。例えば、バーコードを読み取る際に自然な手の角度で扱えるよう、スキャナ部分には適度な傾きがつけられており、外形から直感的に読み取り角度が分かるようになっている。セイノー情報サービスでは、日本食研との打ち合わせの席にDT-950とDT-X7の両機種を持ち込み、日本食研の従業員が実際に持って比較し、DT-X7の採用を決めたという。
カラー画面でリアルタイムの在庫状況を示す
KO宮殿工場配送センターには、DT-X7が30台導入された。2008年3月17日の本稼働に先立ち、現場スタッフへのシステム操作指導や検証稼働などが行われている。ユーザーの年齢層は幅広く、Windows CEベースのハンディターミナル利用経験もなかったが、スムーズに習熟できたという。また、DT-X7のカラー画面を生かして、警告を赤で表示するなどSLOTSに改良を施した点も好評を得ている。
また、このシステム導入に伴って倉庫内の商品配置も変更された。以前は商品ごとに場所を決めておく固定ロケーションだったが、SLOTSによって柔軟な管理が可能になり、現在では完全フリーロケーションになっている。
「SLOTSは、主にロケーション別、賞味期限別で商品の在庫をリアルタイムで管理しています。現時点で、いつまでの期限の、どの商品が、どこに、どれだけ保管されているか、という情報を持っているのです。また、倉庫内の商品の移動なども、端末から情報を入力することで可能です」とセイノー情報サービスWMSチームの辻徹係長は話す。
倉庫内の従業員は、フォークリフトや庫内搬送車で移動しながら業務を行う。端末を落としたりぶつけたりすることも少なくないが、DT-X7は問題なく稼働し続けているという。
「現場で使うハンディターミナルは、画面の見やすさやレスポンスの良さも含め、過酷な条件下でも快適に使えることが重要で、DT-X7は期待に応えてくれています」と辻氏は話す。
他拠点とのシステム統合と生産部門へのフィードバックを
日本食研の武方氏も「 DT-X7は軽くて使い勝手の良いデザインで、DT-950より画面も大きくなっています。キー配列を携帯電話と同じにしてある点も、馴染みやすさにつながっています」と評価する。
DT-X7を通じて利用されているSLOTSについても、導入当初の狙いだった鮮度管理という役割を十分に果たしているという。在庫の鮮度状況も、リアルタイムで把握できるようになったという。
今後の展開として、今回導入されたKO宮殿工場配送センター(愛媛)に続いて、ほかの配送センターにもSLOTSとDT-X7のソリューションを導入することを考えている。同社では、できるだけ早く、2009年前半には2カ所目の導入をしたいとしている。配送センターのシステムを共通化することで、データの統合や、運用の効率化などを期待している。
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