「PC持ち出し禁止令は怖くない」――外出先での業務メール閲覧に新機軸:フィードパスがモバイルSaaSを展開
外出時のすき間時間で電子メールを確認したいビジネスパーソンは多い。だが企業は情報漏えいを懸念してPCの持ち出しを禁じる。こうした背景の中、フィードパスは携帯電話からセキュアに電子メールを閲覧できるSaaSサービスを新展開、秘められたモバイルSaaSの需要を掘り起こす。
「携帯電話で業務メールを確認したいという要望は、ビジネスパーソンにとって当然のものだ」
SaaS(サービスとしてのソフトウェア)型Webメール「feedpath Zebra」を展開するフィードパスの後藤康成取締役CTOはこう言い切る。仕事で携帯電話を使うビジネスパーソンが多く、「携帯電話をビジネスツールと見立てており、機能へのニーズも高い」(同氏)からだ。
紛失による情報漏えいのリスクをなくすために、多くの企業ではノートPCなどの持ち出しを禁止している。一方で、「外出時のわずかな時間で電子メールをチェックし、早急に対応したい」というユーザーの要望は日増しに強くなっている。ビジネスパーソンの就労時間に占める移動時間の割合は約30%に上るといい、すき間時間の有効活用は仕事の成果に直結する。
こうした背景の中、同社は9月17日に、feedpath Zebraの電子メールを携帯電話から閲覧できるオプションサービス「feedpath Zebra for ケータイ」の提供を開始した。アプリケーションやWebブラウザ上でサーバのデータを見る仕組みなので情報漏えいの心配はない。またSaaSとして提供されるため、ユーザーは認証を通らなければデータにアクセスできない。電子メールのセキュアな閲覧を実現し、社外で業務メールを手軽に確認するというビジネスパーソンの要望を満たす「モバイルSaaS」を、新たなSaaSビジネスの収益源として掘り起こしていく。
メールの読み書き、アドレス帳の参照など基本機能に特化
feedpath Zebra for ケータイは、電子メールの送受信や削除、表示設定の変更、アドレスの参照といった機能を提供する。「メールをその場で確認して、急ぎの返事をしたい」(事業推進本部副本部長の葛山哲司事業企画グループマネジャー)というユーザーの声を反映し、基本機能に特化して作り込んだ。スケジューラーやカレンダーなどの機能は、今後のバージョンアップで利用できるようにしていく見込みだ。
電子メールのデータは同社のサーバで一元管理しており、外部に漏れないようになっている。携帯電話での操作の同期を自動で取り、サーバ側でデータを更新する仕組みのため、携帯電話で読んだ電子メールはPC上で既読になるといったことが実現する。電子メールのアドレスや内容は端末側に残らず、WordやExcelといったファイルも端末側でダウンロードできないようになっている。
feedpath Zebraを導入している企業を対象に、オプションサービスとして展開する。利用料は無料。NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルの3キャリアでサービスを利用できる。
iPhoneやBlackBerryでの利用、年内がめど
葛山氏は「3キャリアへの対応は、あくまでもサービスの第1弾」と強調する。
同サービスの展開に先駆け、フィードパスは社内にモバイルプロジェクト「feedpath Zebra de Mobile」を立ち上げている。その根底には、「企業向けにサービスをするにあたり、携帯電話は必要十分条件となっている。SaaSを展開する企業として、携帯電話向けのサービスがあって当然のもの」(後藤氏)という思想がある。
次なる展開として同社が描く戦略は、iPhoneやBlackBerryといったスマートフォンでfeedpath Zebraを利用できるようにすることだ。「年内のリリースをめど」(葛山氏)に、サービスの開発を進めている。スマートフォンは電子メールの閲覧など、ビジネスシーンでの利用に適している。企業におけるこれらの端末の利用拡大を見込み、モバイルSaaSの訴求に先手を打つ。
SaaSの認知度は向上、コンプライアンスに訴求
feedpath Zebraのユーザー数は2008年6月現在で2500を超えた。2007年4月にサービスを開始し、2008年1月にプランの名称やサービスの内容を分かりやすく変更した。SaaSを啓発するためにブランド戦略を練り直したことなどが奏功し、1月に比べユーザー数が10倍に膨らんだ。
Webメールの普及を後押ししたのは、2007年4月の日本大学によるGoogle Appsの導入にあると葛山氏は続ける。この事例を起点にして、大学などの教育機関や企業からfeedpath Zebraの引き合いが増え始めたという。「1000ユーザー以上の導入も話が進んでいる」(同氏)など、Webメールに対するユーザー企業の反応に、確かな手応えを感じている。
「企業のIT投資は、インフラやアプリケーションから、コンプライアンスに移っている」(葛山氏)。フィードパスは、データを一括で管理できるSaaSに加え、モバイルSaaSにも注力する。携帯電話とSaaSを緊密に連携させたサービスは、セキュリティへの配慮という観点から、企業のSaaS導入の有力な選択肢になりつつあるとともに、SaaSの企業活用が実用段階に入っていることを示している。
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