09年度のIT投資予算、「減少する」が6割超 わずか4カ月で11ポイント増:ソフト、サービスの投資抑制が顕著
国内企業のIT投資の抑制が加速しそうだ。IDC Japanの調査によると国内の民間企業の62%がIT投資予算を減らす。4カ月前の調査から11ポイントの増加となり、企業の投資意欲が減衰している。
2008年後半に深刻化した世界景気の後退で、国内企業のIT投資が一層抑制されそうだ。調査会社のIDC Japanが2月に実施した調査によると、国内の民間企業の62%がIT投資予算を減らすことが分かった。2008年11月の調査時は51%だった。数カ月の間に、企業の投資意欲が減衰した結果となった。
国内の民間企業のCIO(最高情報責任者)にIT投資動向を調査したところ、70%が世界規模の景気後退によって「悪い影響がある」と回答。11月の調査時は61%で、9ポイント上積みとなった。IT投資の予算も縮小傾向にあり、62%がIT投資の予算を減らすと答えた。これに伴い2009年のIT市場に成長率も減速するとIDCは見る。
IT予算の削減対象となる製品やサービスは、ソフトウェアやITサービスとなった。前回の調査ではPCを中心とするハードウェアの削減意向が強かったが、新たな削減項目が加わった。セキュリティ、コンプライアンスなどの分野では投資を継続する企業が多く、企業の危機管理分野での投資は鈍らない。
2009年度のIT投資予算が「増加する」と答えたのは6%とわずか。金融業やサービス業で投資の増加傾向が見られた。
IDC Japan ITスペンディング/ユーザー調査/ソフトウェア/コミュニケーショングループ グループディレクターの和田英穂氏は「世界景気の後退でIT予算は減少しているが、一部では変化が起こり始めている。ITベンダーは市場の変化を即時に把握し、市場の動きに先回りする予測能力の獲得が生き残りに必須となる」と発表文内で話している。
2月16日から18日に、国内の民間企業のCIOに「IT投資動向調査」を実施。326社の回答を得た。
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