マイクロソフト「中古パソコンにOS供与」の意味:Weekly Memo(2/2 ページ)
マイクロソフトが先週24日、中古パソコンに対して正規のWindows OSライセンスを提供する施策を発表した。この施策、中古パソコンの企業ユースにも大きな意味がありそうだ。
新施策が企業ユースの弾みに
マイクロソフトの中川本部長に続いて挨拶に立ったRITEAの小澤昇 常務理事・事務局長は、「MARプログラムによって、Windows OS搭載済みの中古パソコンが数多く出回り、購入者が増えて市場が広がるだろう」と期待を込めて語った。
さらに小澤常務理事は、「2007年度の販売実績で158万9000台だった中古パソコンを、新規に製造した場合のCO2排出量と比べると、19万1000トンを削減することができる。これは太さ30cmの樹木が1年間に吸収するCO2の量として、123万3000本にあたる規模となる」と、環境対策への中古パソコンの効果を説明した。
安心、安価で環境にも優しいとなれば、個人のみならず、企業にとっても利用価値がありそうだ。中古パソコンの事情にも詳しい業界関係者が、今の状況をこう分析する。
「昨今の厳しい経済情勢の中で、安心して安く導入できるというのは、企業にとって魅力的なはず。しかも環境に優しいとあれば、なおさらだ。とりわけ今回のマイクロソフトの施策は、中古パソコンに対して同社がOSを保証する仕組みをつくったわけで、企業ユーザーの不安感を払拭するのに大きな材料となるだろう」
そしてこう続けた。「企業のクライアント環境における更新は、Windows 7の登場待ちといったところが多いが、XPを搭載した中古パソコンは次なる更新へ向けて、つなぎ役を果たすニーズが予想以上に出てくるのではないか。中古パソコンは安定的に調達するのが難しいが、そこの流通の仕組みが整ってくれば、企業向けビジネスが一定の規模に膨らむ可能性は大きい」
企業向けにしても個人向けにしても、今回のマイクロソフトの施策によって、パソコン市場にネットブックなどと同様、「中古パソコン」という1つの新しいジャンルが本格的に選択肢に加わった格好ではないだろうか。
そろそろ「中古パソコン」(マイクロソフトが使う「再生PC」も同じ)という呼称を、もっと親しみを感じる愛称に変えたほうがいいかもしれない。
プロフィール
まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
関連記事
- 5万円パソコンとクラウドの浅からぬ関係
個人向けに売れ行き好調の通称「5万円パソコン」や、安くて環境にも優しい中古パソコンが、クラウドサービスと合体するかもしれない。その浅からぬ関係とは――。 - 中古パソコンは企業向けに広がるか
今回は、中古情報機器協会が6月25日に発表した2007年度の中古情報機器の販売台数実績などから、好調・中古パソコンがもたらすさまざまなインパクトを探ってみたい。 - 4QのPC出荷台数は3.7%増、ミニノートで盛り返すも企業向けPCは厳冬
ミニノートPCの好調が国内のPC出荷台数を押し上げ、4Qは前年同期の3.7%増になることがIDC Japanの速報で分かった。一方で景気悪化に伴う出費控えで、企業向けPCの市場は苦戦を強いられそうだ。 - 中古PCは買い替え需要の潤滑油?――業界の新たな取り組みは「3R」へ
今や年間100万台以上の市場規模に達しているとも言われる中古パソコンだが、その品質やデータの消し忘れなどによる情報漏えいの懸念が指摘されてきた。そうした懸念を払拭しようと、中古情報機器の業界団体が新たな取り組みを開始した。 - <オルタナティブ・ブログ>中古パソコンでも単なる入れもの←中身のデータは大丈夫ですか?(新倉茂彦の情報セキュリティAtoZ)
- <オルタナティブ・ブログ>NetBookがビッグブラザーのところへ連れてっていってくれるかも(一般システムエンジニアの刻苦勉励)
- Windows 7 RCは5月5日リリース? Microsoftがリーク
- Vistaにすべきか、Windows 7を待つべきか――移行に悩むユーザーへ
Microsoftは、Windows VistaやWindows 7への移行を検討している企業を対象に詳細なガイダンスを公開した。Windows 7にいつ移行すべきかという問題をめぐって、ユーザーの間で生じている混乱を解消するのが基本的な狙いだ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.