ありふれた商品でもカテゴリーキラーになれる:キラーウェブを創る(2) ケンコーコム(4/4 ページ)
ネットの世界で勝ちパターンを見つけるのは簡単なことではない。ケンコーコムは、健康商品というありふれた商材をどうネットで売るかについて試行錯誤を繰り返すことで、Webサイトを「キラーウェブ」に育て上げた。
同社のアフィリエイトは、ドメイン名でリンクできる仕組みだ。つまり、広告掲載サイトは「kenko.com/xxxxx」というURLで、ケンコーコムの商品ページへのリンクを張る。これは「被リンク」といって検索エンジンが高く評価するのだ。つまり、たくさんのリンクを張られているサイトは人気サイトに違いないということで、リンクを「人気投票」のように解釈する。
ASP事業者を通じて行うものは、事業者のURLにリンクを張られる仕組みなので、SEO上のメリットは出せない。同社のアフィリエイト登録者数は、2007年4月で約6000人を超えた。しかし、アフィリエイト経由の売り上げは、まだ全体の数%にも満たない。現時点では、売り上げメリットよりもSEOメリットのほうが大きい。トラックバック式ブログポータルの「ケンブロ」や月に一度リリースされる「売れ筋ランキング」なども、SEOに好影響を与えている。
ケンコーコムのリテール事業は、自社サイト、楽天支店、Yahoo!ショッピング支店、モバイル支店の4サイトがある。そのうち、自社サイトの売り上げが全体の65%を占める。その自社サイトに訪れるユーザーは、60%が検索エンジン経由だ。いかにロングテールが機能しているかが、数字でも表れている。
商品数と月商の相関関係が分かってからは、売り上げは伸びていった。2003年にテレビ番組で放映され、「シジューム茶」と「ローズヒップオイル」がブームになった。その追い風を受け、月商がはじめて1億円を超えた。
その後はリアル店舗では買いにくい避妊具などの商品や、ティッシュペーパーのようなかさばる商品、こだわり商品などが売れ筋になった。マスのプロモーションが行き届いていない商品を幅広く揃えていることも、大きな強みである。現在、カテゴリーのトップで年商65億円(2006年度)だ。健康に関する市場は、数兆から十兆円を超える市場で、そのうちのEC事業は将来2ケタ以上になると予測する。そうなれば、数千億円から一兆円を超えるマーケットが誕生する。
後藤氏のビジネスにおける信条は「ブラさない」「顧客視点を貫く」「試行錯誤を続ける」の3つだ。これらは、ビジネスにおける最も重要な姿勢だといえるが、同時に今のケンコーコムの「強み」を的確に表現した言葉でもある――。
自社の「勝ちパターン」を見つけるのは、そう簡単なことではない。いくら机上で予測しても、ビジネスの現場では数々の想定外が待ち受けている。「失敗」とどう向き合うか、それが失敗を失敗たらしめるのか。これらを考えることが、成功へのプロセスにつながるかどうかの分岐点になる。
著者プロフィール:前野智純(まえのともずみ)
エクストラコミュニケーションズの代表取締役。「キラーWebでNo.1をつくる」をテーマに、コンサルティングやプロデュース、マーケティングなど各種Webサービスを提供している。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「キラーウェブがキラーカンパニーを創る」で、Webマーケティング関連の記事を執筆中。著書には「キラーウェブ」 「Webプロデュースのプロが教えるサイト集客のツボ」などがある。
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