プライベートクラウド構築を現実解にする:システム構築の新標準(2/2 ページ)
プライベートクラウドには、運用のガバナンスの整備や業務プロセスの標準化など、乗り越えておくべき課題が多い。大手ベンダーが提供するサービスを正しく理解することで、プライベートクラウド構築は実現に近づく。
コンサルティングとアプリケーションの充実で差別化を図るNEC
NECは「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」という名称で、クラウド関連の事業に着手している。
同サービスには(1)「SaaS型」、(2)「共同センター型」、(3)「個別対応型」の3つの提供形態がある。SaaS型は、インターネットバンキングや決済基盤といったバックオフィス関連の機能を、サービスとして提供する。共同センター型は、マルチテナント方式を活用し、複数の企業に業務システム基盤を提供する。個別対応型は、業務プロセスを改善するコンサルティングサービスや情報システムの構築、運用までを企業ごとに提供する。
このうち、プライベートクラウドの構築と運用を支援するサービスに当たるのが、個別対応型だ。システム面に加え、業務プロセスの改善までを含むサービス体系を提供している点、豊富なSaaSアプリケーションを用意している点が、他社のクラウドサービスとの差別化につながっている。
ただし、プライベートクラウドとSaaSを併用すると、異なる運用ポリシーやサービスレベル保証が混在してしまう。こうした面も考慮した上でコンサルティングサービスを提供できるかがポイントになる。
統合運用管理での利点を生かす日立製作所
日立製作所は「Harmonious Cloud」という総称の下、「プライベートクラウドソリューション」「ビジネスSaaSソリューション」「ビジネスPaaSソリューション」の3つのサービスを展開している。ユーザー企業が管理している情報システムに、日立製作所の各種製品で仮想化したリソースを新たに構築するものだ。
日立は国内で最も導入数の多い統合運用管理ミドルウェア「JP1」を提供している。仮想化環境を見据えた統合的な運用管理は、プライベートクラウドを構築する際に重要になる。その点において他社よりも優位なサービスといえる。この利点を生かしつつ、業務プロセスの共通化/共有化を目指すコンサルティングサービスをいかに充実させるかが、サービス拡大の鍵になる。
プライベートクラウドを構築するための肝は、運用のガバナンスを徹底して維持することだ。企業全体の業務プロセスの標準化も同時に整備していく必要があるなど、単純にクラウド関連の技術を取り入れるという考えだけでは、満足な情報システムの構築にはつながらない。具体的なサービスを知ることで、クラウドがもたらすメリットを自社やグループ企業内で享受できるようになる。
次回はプライベートクラウド構築の具体的な事例を紹介し、プライベートクラウドを活用するための秘訣を明らかにする。
著者紹介:岩上 由高(いわかみ ゆたか)
ノークリサーチのシニアアナリスト。早稲田大学理工学部大学院数理科学専攻卒。ジャストシステム、ソニー・システム・デザイン、フィードパスなどを経て現職を務める。豊富な知識と技術的な実績を生かし、各種リサーチ、執筆、コンサルティング業務に従事。著書は「クラウド大全」など。
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