IBMがLinux向けメインフレーム製品を発表
IBMがx86システムに対抗して発表した「Enterprise Linux Server」のz/VMでは、1台の物理システム上で数百〜数千のLinux仮想サーバを稼働できる。
米IBMは今後も引き続き、仮想化されたx86サーバで構成される大規模クラスタに対抗する製品として自社のメインフレームを推進する方針だ。
同社は12月8日、企業での大規模な統合プロジェクトに狙いを定めた2機種の新しいLinuxメインフレーム、ならびに企業での顧客データの管理を容易にするソフトウェアとサービスの新パッケージを発表した。
このところ、IBMのSystem zビジネスは不況などの影響で落ち込んでおり、同社のメインフレームの7〜9月期の売り上げは昨年同期比で約26%減少した。
しかしIBMでは、System zメインフレーム上で運用されるLinuxワークロードは増加傾向にあるとしている。同社によれば、2007年7〜9月期から今年7〜9月期までの間に、IBMがメインフレームに搭載して出荷したLinuxのキャパシティーは100%増加したという。
LinuxはIBMの新製品の重要な要素だ。同社が投入する2機種のLinuxメインフレームは、Linuxを基盤とした大規模な統合プロジェクトを計画している企業に選択肢を提供することを狙ったもの。これらのシステムには「Enterprise Class」と「Business Class」という構成が用意され、z/VM(IBMのメインフレーム用仮想化プラットフォーム)などのコンポーネントが含まれる。
z/VMを利用すれば、1台の物理システム上で数百〜数千のLinux仮想サーバを稼働でき、しかも高度なセキュリティと可用性を実現できる。
IBMによると、これほどのレベルの可用性と拡張性は、仮想化されたx86環境では存在しないという。
IBMでSystem zを担当するジェネラルマネジャー、トム・ロサミリア氏は「IBMは大規模なサーバ統合という新たな市場トレンドに注目し、メインフレームの能力をさらに高めるつもりだ」と発表文で述べている。「多数のワークロードのセキュリティを処理し、しかもこういった大規模なシステムで高い可用性を実現するのに必要な環境を提供できるのはEnterprise Linux Serverだけだ」
IBMの新システムでは、必要に応じて処理能力を追加した分だけ料金を支払うという方式も用意され、構成サイズが拡大するのに伴い、処理能力当たりの価格が低く設定される。
さらにIBMは、6月に立ち上げたソフトウェア構想を拡大し、データウェアハウジング、電子決済、ディザスタリカバリ、セキュリティ、SAPアプリケーション、クラウドコンピューティングといった特定のワークロード向けにメインフレームをカスタマイズする方針だという。
IBMはまず、LinuxワークロードおよびCRM(カスタマーリレーションシップ管理)ソフトウェア「Chordiant」向けのシステムを提供する。「Chordiant Solution Edition」は、z/OS、DB2、WebSphereを搭載したプラットフォームで、顧客データ管理の改善を狙う。
「Enterprise Linux Edition」は、メインフレームのLinuxワークロード処理能力を高めることを目指したIBMの戦略に沿った製品だ。IBMによると、System zポートフォリオに含まれる6300本のアプリケーションのうち、3000本がLinux用アプリケーションだという。
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