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成功するオウンドメディアマーケティング、その理論と実践著者インタビュー(2/2 ページ)

「オウンドメディア」の本質は企業と顧客との継続的なコミュニケーションの実践にある。企業を取り巻く「オウンドメディア」の現状とその効果的な活用法について、先ごろ「オウンドメディアマーケティング」を上梓した井浦知久氏(ユラス 代表取締役)に話を聞いた。

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オウンドメディア構築の手順:まずは戦略策定から

 では、「成功する」オウンドメディアの構築手順とはどのようなものなのだろうか? 井浦氏は以下のような手順が理想であるとする。

  1. 戦略の策定
  2. プラットフォーム構築
  3. 会員集客
  4. 施策の実施
  5. 施策の評価

 企業の形態とビジネスモデルによって、オウンドメディアマーケティングの戦略は変わると井浦氏は言う。すなわち、「メーカー系」「小売流通系」「製造小売系」「通販系」「サービス系」と、「自社商品の開発」「実店舗の所有」「顧客との直接対話」の掛け合わせだ。

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オウンドメディア戦略:「企業形態」×「ビジネスモデルの特徴」

 このフレームワークで簡単に分析すると、「メーカー系」企業のオウンドメディアマーケティング戦略は、顧客との接点を拡大し、実店舗を持つ小売りとの協業を行う方向で策定した方がよいということになる。具体的な販促施策は、この戦略に基づいて企画すべきだ。

 同じように、「小売流通系」企業の場合は、来店誘導を主軸に、地域住民との生活接点を強化する戦略を採用するべきだし、「製造小売系」企業は、来店誘導を促しながらも、店舗と連携したCRM施策が有効という判断になる。さらに、「通販系」企業はブランド強化、パーソナライズ、リアリティの演出、「サービス系」企業は長期的な関係構築、ライフタイムバリュー戦略に注力すべき、となる。

 井浦氏が冒頭で「トクするケータイサイト」の成功ポイントを「キャンペーン施策」にあるとしたのは、まさにマクドナルドが「製造小売系」企業としての戦略を策定しており、その戦略に沿ってクーポンを活用した販促キャンペーン施策を企画していたからだ。

 そして、Webサイトの構築やCRMプラットフォームの導入は、以上のような準備作業を経てから着手されるべきなのである。

CRMプラットフォームが可能にすること

 顧客はオウンドメディアを通じて個人情報を企業に委ね、その代わりにさまざまな特典サービスを受け取る権利を獲得する。キャンペーン施策を展開する基盤としてCRMが重要な位置を占めることは言うまでもない。実現できる機能は製品ごとに異なるものの、顧客のセグメントごとに実施する施策や配信メディア(Web、メール……)を切り分けたり、デバイスごとに最適化されたコンテンツの配信を可能にするなどの機能が一般的ではないだろうか。

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CRMベースのオウンドメディアマーケティング

 施策については、以下の5つのステップで管理される。

  1. 立案
  2. 実施
  3. 回収
  4. 結果の可視化
  5. 分析/施策へのフィードバック

 得られたフィードバックは次の施策立案時に参考にされて、キャンペーンの精度向上に貢献することになる。精度向上は、売上の上積みとして結果が残ることになるのだ。

 以上、オウンドメディアマーケティングを成功させるポイントについて、井浦氏へのインタビューをもとに考えてきた。インタビューの間、井浦氏は、戦略策定/施策立案の重要性を繰り返し語った。成功するオウンドメディアマーケティングは、企業のビジネスモデルと密接な関係性を有する。長期的な視点に立ち、「オウンドメディアを育てていく」という考えが、マーケティング担当者のみならず、経営者にも求められるということだ。

谷古宇浩司

アイティメディア ITインダストリー事業部 事業開発部 チーフアーキテクト。コンピュータ・ニュース社(BCN) 報道部 記者を経て、2002年にアットマーク・アイティ入社。@IT自分戦略研究所編集長、アイティメディア エンタープライズ編集長を歴任後、現職。


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