BYODからビッグデータ活用まで インテルのIT部門が取り組む“業務変革”
9万5000人のIntel社員を支えるIT部門が、2012年に取り組んだ「BYODの推進」「ビッグデータ活用」などの成果を報告した。
半導体世界最大手・Intelの社内ITインフラを支えるIT部門はどのような活動を行っているか――インテルは3月21日、2012年のIT部門の活動成果を報告。同社情報システム部のキュウ・テンイ氏が国内外の取り組み成果を紹介した。
2012年時点で、Intelに在籍する社員は約9万5200人、事業拠点は63カ国164カ所。IT部門は約6500人で、59拠点で業務を行っている。また、社員1人当たりのIT支出額は1万3600ドル。この数字は「米国企業では珍しくないが、一般的な日本企業と比べれば2倍ほど」(テンイ氏)という。売上高に占めるIT支出の比率は2.53%となっている。
2012年に行った施策の1つは、モバイル端末の活用推進だ。同社が業務で使用するスマートフォンやタブレット端末の数は、前年の2万9000台から3万8500台へと増加。そのうち2万3500台は個人所有端末の業務利用(BYOD:Bring Your Own Device)によるもので、BYOD端末の数は前年比で約38%増えたという。
モバイル端末向け業務アプリケーションの開発も推進した。社員間のコラボレーションツールやグループウェア、社内用語辞典、航空機の予約用アプリ、各種申請・承認アプリなど、41種類のアプリを社員向けに提供しているという。
一連のモバイル化の成果は、具体的な数字で表れている。「BYODを導入したスタッフは、導入前と比べて1日当たりの業務時間を57分短縮できた」とテンイ氏。同社全体でみると2012年通年で500万時間分の生産性向上を果たし、人件費に換算すれば約100億円を削減できたという。「(帰宅時間が早くなることで)社員の満足度アップにも貢献できたはずだ」とテンイ氏は話す。
もう1つの施策はビッグデータの活用だ。チップ製造工場に設置したさまざまなセンサーのデータを複合的に分析することで、設計テストの時間を約4分の1まで短縮したという。「スマートフォンやタブレットは生産サイクルが短いため、チップもできるだけ早く市場投入することが求められる。その点でデータ分析が役立った」(テンイ氏)。これらのデータ活用に当たっては、オープンソースの分散処理フレームワーク「Apache Hadoop」を採用している。
データ分析はセキュリティ対策の強化にも役立っている。同社全社員のPCやスマートデバイスで発生するセキュリティ関連のログデータは、1日当たり億単位に上る。これらのデータをリアルタイムで相関分析することで、セキュリティ上の脅威の早期検出と対策につなげているという。このほかID・アクセス管理の徹底や、SSDの自動暗号化、ネットワーク型侵入防止システムの導入を通じ、「全PCのマルウェア感染率を1%未満に抑えられた」としている。
このほか、データセンターの集約やクラウドコンピューティングの活用も推進した。特にクラウド活用では、アプリケーションの仮想化率を前年の64%から75%へと向上。インフラ基盤の構築にかかる時間を従来の45分から10分未満に短縮し、新たなWebアプリの展開にかかる日数も従来の70日から1日未満に短縮したという。
インテルで情報システム部長を務める富澤直之氏は「2012年はIntelにとって変革を遂げなくてはいけない1年だった」と振り返る。「Ultrabookという新しいタイプのPCが普及し、Intelのプロセッサを積んだスマートフォンも登場する中で、IT部門に対しても新たな要求が生まれていた。そうした中、データ分析によるインサイトや業務のイノベーションを提供し、業務部門の成長を生み出せた」と富澤氏は話している。
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