マイクロソフトはいかに顧客をサポートしているのか(2/2 ページ)
日本の顧客がカスタマーサービスに求めるレベルが高いことは疑う余地もない。幅広いターゲット層に向けて多種多様な製品を提供する日本マイクロソフトは、顧客満足度を高めるためにどのような取り組みをしているのだろうか。
日本水準のサービスを本社に要求
そうした中、日本マイクロソフトが現在注力するサポート領域が「クラウド」だ。「クラウドは目に見える製品ではないため、サポートがすべてなのだ」と佐々木氏は強調する。仮にサポートが不十分だと顧客が感じれば、すぐに競合サービスに乗り換えられてしまう可能性があるのだという。さらに日本の顧客は要求水準がグローバルで見ても非常に高いため、クラウドサービス自体の品質向上を求めて米国本社に要望を出し続けるとともに、クラウド専任チームを立ち上げ、日本人スタッフが24時間365日体制でサポートを行っている。
「日本の顧客のサポートは、単に日本語が話せるだけでは通用せず、日本在住で、日本の文化も含めて理解している人間でないと難しい。この点にこだわり、数年前からすべてのクラウドサービスを日本で対応している」(佐々木氏)
サポート体制に加えて、サポートの内容も重要だ。クラウドサービスに対するサポートの勘所として、佐々木氏は「障害を起こさない」「障害時のコミュニケーション」「事後のコミュニケーション」という3つのポイントを挙げる。
1つ目は、そもそも障害が起きないようにするべく、クラウドサービスのネットワーク構成を新しいアーキテクチャにした。これは日本の要望で変更したものだという。「他社のクラウドサービスを見ると、主に障害はフェールオーバーした際に発生している。マイクロソフトでは、仮にデータセンターAのシステムが壊れてもわずか数十秒でデータセンターBのシステムに切り替わるなど、ユーザーが気付くことがないようなシステム構成になっている」と佐々木氏は話す。
2つ目は、障害時の対応である。米国のやり方だと何か変化があったら情報を出すのが一般的だが、日本の水準に合わせてテコ入れ。現在は、1時間に1回の障害状況アップデートだが、情報の更新頻度を早くして、最終的には15分に1回のアップデートを目指しているという。また、これから取り組もうとしているのは、顧客ごとにサービス状況を知らせることである。
「データセンターごとの障害状況は把握できるが、ユーザーが知りたいのは自分の利用するサービスがどういう状態にあるのかということだ」(佐々木氏)
最後は、障害対応後の顧客とのコミュニケーションについてだ。米国だとクラウド事業者と顧客はサービスレベルで契約しているため、あくまでこの基準を守っているかどうかが重要になる。従って、仮に障害が起きてもサービスレベルを保っていればあまり問題はないのだという。しかし、日本の場合そうはいかない。原因の究明と具体的な再発防止策について報告書を求められるのだ。
「システムが停止したときに、顧客に謝罪し、対策を説明するという文化が米国本社にはなかったため、この改善から始めた。その地道な取り組みが実を結び、今では本社や我々サポートチームなどが協力して日本の顧客に合わせたサービスを提供できるようになった。同時に障害発生の頻度も減少している」と佐々木氏は力を込めた。
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