AI社会に“働かざるもの食うべからず”は非常識?:ホリエモンが吠える(2/2 ページ)
AIやロボットは私たちの働き方を、生活をどう変えるのか。堀江貴文氏(実業家)、林要氏(ロボット開発者)、中野信子氏(脳科学者)が語る近未来の姿とは……?
最後は全員、エンターテインメントの世界へ?
「仕事をしないと生きていけない」という考えも、思い込みにすぎないと堀江氏は斬り捨てる。「今は過渡期なんです。農業生産だってどんどん自動化していて、人間が介在する必要がありません。“働かざるもの食うべからず”は大昔の常識。朝から晩まで必死に農作物を作っていた時代の道徳ですよ。富は機械が作って、人間は自由に遊び、遊ぶことが仕事になる。これが近未来の姿です」(堀江氏)
こうした理由から、いま、堀江氏が個人的に注目しているのはエンターテインメント産業だそうだ。また、林氏も、「ロボットが社会に浸透してきたとき、最後に残る人間の仕事はエンターテインメントやホスピタリティの領域になると思います」と堀江氏の意見に共感した。
ただ、自由な状態が必ずしも幸福であるとは限らない。中野氏は、仕事がなくなり、自由になったとしても人間は満たされないと指摘する。その理由を、専業主婦を例に挙げて説明した。
「機械によって、専業主婦への概念が変わりました。昔は飯炊き、掃除、洗濯があって1日中家事に追われ、すごく大変でした。それを全て機械がやってくれるようになり、働かなくても男が養ってくれる専業主婦は憧れの存在に変わったわけです。しかし、そうした生活に不満を抱える専業主婦は多くいます。その理由は、自分の存在価値を実感できず、自己実現ができないからです」(中野氏)
その自己実現の欲求を満たすためにエンターテインメントが必要とされるかもしれないという。
「イノベーション」は人間にしか起こせない
多くの仕事がAIに代替されるという話が続く中、“人間にしかできないこと”に林氏が挙げたのは「イノベーション」だった。
「非合理性をベースにしているからイノベーションが起きると思うのです。好きなものに対してとっさに反応したり、思い入れで動くといった非合理的な行動をとることで課題を突破する力が生まれます。合理的に判断するAIにはできないことです」(林氏)
合理性を求めてばかりでは、ありきたりな解しか出ず、イノベーションは生まれないという。AIの場合、失敗する確率などから物事を合理的に判断するが、情熱をもった人であれば失敗する確率が高かったとしても挑戦する非合理性を持ち合わせている。その、“AI的”には一種のエラーのようなものが、ときとして課題を突破し、イノベーションを起こすのだ。
「好きなことを情熱的にやっている人のパワーはAIには持てないものです。そうした人間が持つ非合理性がAIとの違いであり、人間ならではの武器なのではないでしょうか」(林氏)
人間がAIと違うのは好きなものに対する情熱を持てること。いま、存在する多くの仕事がAIに代替されることは悪いことではなく、むしろ純粋に好きなことに打ち込む時間が増えることで、人間がより人間らしく生きていける社会へ進んでいくのかもしれない。
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