コレ1枚で分かる「bot(ボット)」:即席!3分で分かるITトレンド
今、ユーザーと自動対話する技術「bot(ボット)」が注目を集めています。その仕組みと、botを活用したサービス展開を解説します。
この連載は
カップめんを待つ間に、電車の待ち時間に、歯磨きしている間に“いまさら聞けない”ITトレンドが分かっちゃう! 今さら聞けないITの最新トレンドやビジネス戦略を、体系的に整理して分かりやすく解説する連載です。「この用語、案外、分かっているようで分かっていないかも」「IT用語を現場の社員にもっと分かりやすく説明できるようになりたい」――。情シスの皆さんのこんな課題を解決します。
IoT(Internet of Things)は、既存の常識をどのように変えようとしているのでしょうか。
「来週の金曜日のお昼頃に福岡に到着できる羽田からの航空券を予約して。」
「来週の金曜日というと、〇月〇日のことですね。ご希望の航空会社はありますか?」
「できればいつも使っているところで予約してみてくれないか。もし空いていなければ、他でも構わないよ。」
「以下のフライトではいかがでしょうか?」
【予約可能なフライト一覧を示す】
「それじゃあ、XXX123便を予約して。」
「承知しました。座席はどちらがいいでしょう。いつもご希望される窓側はいっぱいですから、通路側でもいいですか?」
「じゃあ、それでお願いします。できれば、前の方でね。」
「承知しました。支払いはいつものクレジットカードでいいですね。」
「いいよ。」
「予約しました。確認メールを送りましたので、ご確認ください。」
あなたの秘書とやりとりをしている訳ではありません。FacebookやLineといったスマートフォンのメッセージアプリとのやりとりです。
ITと人を“仲介する”さまざまな試み
さまざまなオンラインサービスを、普段使い馴れている「テキスト(文字)メッセージ」アプリを使い、日常の対話のように利用できる仕組みが登場しています。「bot(ボット)」と呼ばれるこの仕組みは、ITと人との関わり方を大きく変えてしまうかもしれません。
このbotを使ったオンラインサービスには航空券の予約以外にもいろいろと考えられています。
- 商品検索とオンラインショッピング
- 銀行の取引残高の確認や振り込み手続き
- ライブコンサートの検索とチケットの予約
- スケジュールの確認とアポイントメールの送信
- タクシーの呼び出し
- 天気予報の確認
- スポーツの対戦結果の照会 など
これまで、秘書や受け付け担当者といった人間が仲介者となって、対話から相手の意図を確認し、処理していた作業を、botが代わりにやってくれます。
botとは、「ロボット(ROBOT)」から生まれた言葉で、人に代わって作業を行うコンピュータプログラムのことです。botが登場した当初は、次のような単純作業を行うのが一般的でした。
- Webを巡回して情報を収集する
- 特定のタイトルや発信者のメールをTwitterやLineなどのメッセージアプリに転送する
- 決められた時間にパターン化されたテキストメッセージを発信する など
また、botをマルウェア(不正なことを行うソフトウェア)として、パソコンに侵入させ、機密情報を搾取したり、他人のパソコンを乗っ取って第三者にサイバー攻撃をしかけたりといった用途にも使われています。
最近では、冒頭で紹介したように、
- 人間が日常使っている言葉や表現を理解する
- 曖昧な表現から意図をくみ取る
- 日常の会話で使われる自然な表現で応答する
といったことを、人工知能の技術を使って実現したbotが登場しています。また、テキストではなく音声を認識させる技術を組み合せ、音声による会話でさまざまな処理をしてくれるものもあります。
このような「進化したbot」が使われる以前から、グラフィカルな操作画面(GUI:Graphical User Interface)を使って操作を簡単に、直感的に行えるような取り組みは行われてきました。しかし、操作の一つひとつにルールが定められている上に、アプリごとに操作の違いがあって、必ずしもうまくいっているとはいえません。
一方、テキストや音声での対話であれば、普通に会話をするように操作や指示ができるようになります。そうなれば、「ITは難しいから使えない・怖いから使いたくない」と考えている人たちの壁を引き下げ、利用者の裾野は広がり、利用の頻度も高まります。
この技術はオンラインサービスばかりではありません。家電製品や自動車などのモノの操作にも使われ始めています。例えば、
- カーナビ:目的地の検索や設定
- エアコン:温度調整
- テレビやビデオ:番組検索や録画予約 など
「進化したbot」はそんな「難しいIT」と「自然な人間」を仲介してくれる仕組みとして、ますます普及していくでしょう。
著者プロフィル:斎藤昌義
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤリティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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