デジタル改革時代に“選んではいけない”SIer:Weekly Memo(2/2 ページ)
企業にとってSIerは業務システムの構築・運用のみならず、デジタル変革の推進においてもパートナーになり得るのか――。NTTデータの話を基に考察してみたい。
SIerに求められるビジネス現場でのデジタル活用
そこで、NTTデータは今後の生産技術の方向性として、図1になぞらえて3つのアプローチを図っていく構えだ。3つのアプローチにおけるキーワードは、トラディショナル領域に向けてさらなる生産性向上を目指す「System Lifecycle Automation」、トラディショナルとデジタルの両領域に向けて既存IT資産のデジタル融合を目指す「Legacy Digital Integration」、そしてデジタル領域に向けて新しいサービスの創出を目指す「Digital Capability」である。
この中で、SIerにとってビジネスモデルの転換をも迫られるのが、Digital Capabilityである。ここではこのアプローチに注目したい。
冨安氏によると、これまでSIerはユーザー企業のIT部門の要求を受けて受託開発を行ってきた。一方、DXはユーザー企業にとってのユーザーであるエンドユーザーとの接点となるビジネス現場を中心に発生しており、SIerとは遠いところで動いていた。つまり、SIerのDX推進における課題は、ビジネスとITが分断されていることに起因しているのである。(図2)
こうした状況に対し、NTTデータはDX推進に向けてどのように取り組んでいるのか。それを示したのが図3だ。ポイントは、ビジネスの現場にITを近づけることである。ここでいうITとは、一通りのデジタル技術のスキルを備えた「フルスタックエンジニア」と呼ぶ人材と、その人材をユーザー企業に送り込んでビジネス現場で一緒に議論する「共創の場」を指す。
そのうえで、具体的に何をやるのかを示したのが図4である。この中でSIerがこれまで得意としてきたのは、業務システムの要件定義から右側の領域だ。しかし、DXを推進するためには、ビジネス現場寄りでの「ユーザーインタフェース(UI)/ユーザーエクスペリエンス(UX)デザイン」や「サービス企画」のケイパビリティも求められる。ちなみに同社では、これらのケイパビリティを発揮できるデジタルプラットフォームとして「Altemista」(アルティミスタ)と呼ぶ道具立てを用意している。
冨安氏によると、同社のDigital Capabilityにおける実績は2017年度(2018年3月期)、グローバルの受注額で120億円超、2016年度比3倍に迫る成長率で推移しているという。とはいえ、同社としてはこれからが本格的な取り組みとなる。「フルスタックエンジニアの育成を急ぐとともに、当社がDXの推進に向けてしっかりとご支援できることを今後もっと積極的にPRしていきたい」と同氏は意気込みを見せた。
さて最後に、今回のNTTデータの話を踏まえて、ユーザー企業がSIerをDX推進のパートナーに選ぶ際のコツについて5つ挙げておこう。その5つとは、「DX関連ソリューションがあるか」「DXに精通した人材がいるか」「実績があるか」「コストや取り組み姿勢に柔軟性があるか」、そして「ビジネスパートナーとして信頼できるか」である。裏を返せば、こうしたマインドのないSIerとの付き合いは考え直した方がいいかもしれない。
これからのDX時代は、SIerにとっても生き残りをかけた厳しい戦いになりそうだ。冨安氏の話からはそうした危機感もひしひしと伝わってきた。
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