研究開発部門も顧客と“共創”――日鉄ソリューションズのDX事業戦略:Weekly Memo(1/2 ページ)
ITベンダーが顧客企業と進めるDXの“共創”に、事業部門だけでなく研究開発部門も加担する動きがみられるようになってきた。大手SIerの日鉄ソリューションズの取り組みから、その動きを探ってみたい。
NSSOL研究開発部門の「風呂敷を広げたビジョン」
「私たちはお客さまにとってDX時代のITパートナーでありたい」――。日鉄ソリューションズ(NSSOL)執行役員 技術本部システム研究開発センター所長の齋藤 聡氏は、同社が先ごろ開いた研究開発の取り組みにおける記者説明会でこう強調した。
この発言、興味深いのはITベンダーにおける経営層やデジタルトランスフォーメーション(DX)事業を進める担当者ではなく、研究開発部門のトップの言葉であることだ。齋藤氏がこのように語った意図は何か。今回はこの点に注目したい。
NSSOLが開いた会見では、同社の研究開発部門である「システム研究開発センター」の取り組みとともに、「DataOps――データ活用ライフサイクルの実現」「DevAIOps――AIによるシステム開発の高度化への挑戦」「SIer(システムインテグレーター)のDXシステム開発・運用手法」など14の研究テーマの概要を公開した。
同社のシステム研究開発センターの興味深い点は、SIerの研究開発部門であることだ。SIerが研究開発部門を個別の組織として設置しているケースは珍しい。同社に研究開発部門があるのは、もともと親会社(現日本製鉄)にあったシステムに関する研究開発組織が、NSSOLの発足に至る過程で編入されたいきさつがあるからだ。
従って、システム研究開発センターは独立組織としての意識が高い。その一方で、NSSOLにおける技術力の担い手として、同社の大きな強みとなっている。
そんなシステム研究開発センターの取り組みを説明する上で、齋藤氏はまず、同センターの目指すビジョンを次のように表現した。
「世の中を技術でより良くする」
非常にシンプルなビジョンだが、これはNSSOLの次の経営理念をベースにしている。
日鉄ソリューションズは、情報技術のプロフェッショナルとして、真の価値の創造により、お客様との信頼関係を築き、ともに成長を続け、社会の発展に貢献する
この中でもとりわけ最後の「社会の発展に貢献する」との意思を受け、上記のようなシンプルなビジョンを打ち出している。
だが、齋藤氏によると、数年前まではこのビジョンについて、外部から「風呂敷を広げ過ぎだ」と失笑を買うケースが少なくなかったそうだ。それが最近では賛同を得るようになってきたという。実はこの外部の反応の変化も、今回のDXの話に関係している。
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