研究開発部門も顧客と“共創”――日鉄ソリューションズのDX事業戦略:Weekly Memo(2/2 ページ)
ITベンダーが顧客企業と進めるDXの“共創”に、事業部門だけでなく研究開発部門も加担する動きがみられるようになってきた。大手SIerの日鉄ソリューションズの取り組みから、その動きを探ってみたい。
システム研究開発センターが顧客と“共創”する理由
齋藤氏はさらに、世の中を技術でより良くするというビジョンを具体化するために、システム研究開発センターの運営理念を次のように表しているという。
「課題を抽出し、理解し、分析する力と情報技術をエンジニアリングする力をかけ合わせることによって、将来の社会課題を解決する」
同氏によると、ここで最大のポイントになるのが「課題の抽出」だという。どういうことか。
「私の印象では、数年前までは明確になっている課題を技術でどう解決するかを考えればよかったが、最近では目的は明確なのにどこに課題があるか分からないケースが見受けられるようになってきた。従って、まず課題をしっかりと抽出することが非常に重要になってきている」
こう説明した齋藤氏だが、具体例を示さなかったので少々分かりづらいかもしれない。だが、あえて同氏のこの説明を記したのは、DXを推進する難しさを指摘しているように思えたからだ。ここは読者諸氏の思考に委ねたい。
同センターのミッションについては、3年後の問題を解決する技術の習得に向けた「研究開発」、研究成果を実課題に適用する「事業対応」、次世代人材を輩出する「人材育成」の3つを挙げた。
また、同センターの組織構成としては、200人強の研究員が3つの研究部、11の研究グループで活動している。3つの研究部とは「IT基盤」「データ(基盤)」「アプリケーション(基盤)」である。
そして齋藤氏は説明の最後に、「お客さま・世の中との関係」という観点で、NSSOLのコーポレートメッセージを自分なりに理解した上でのメッセージとして、冒頭の発言を行った。つまり、「DX時代におけるITパートナーでありたい」との思いを、事業部門だけでなく、研究開発部門も強く抱いているというわけである。
図1は、「『お客様・市場』から見たシステム研究開発センターのポジションを描いた」(齋藤氏)ものである。「シス研」と表記されているのがシステム研究開発センターで、「事業組織」に対して事業対応や技術支援を行っているだけでなく、「お客様・市場」に対しても共同研究やPoC(実証実験)、共創の形で直接関わっていることを示している。同氏によると、後者の割合は現状で2割程度だが、案件は着実に増えつつあるという。
なぜ、同センターが顧客と直接やりとりするケースが増えているのか。これに対し、同氏は「DXの進展に伴い、お客さまから当センターが手掛けている最新技術を早く使いたいとのニーズが高まっているからだ」と答えた。先ほどのビジョンの話でいうと、「失笑」が「期待」に変わったのである。
では、いつ頃から顧客と直接やりとりするようになったのか。この点も気になったので会見後に聞いてみたところ、同氏は次のように答えた。
「お客さまとのやりとりが増え始めたのは、ここ2年ほどのことで、まさしくDXニーズの高まりに伴った格好だ。ただ、当社の場合、親会社も顧客であることから、私たちも顧客とのつながりは創業以来、強く意識してきた」(齋藤氏)
NSSOLの場合は先述したように歴史的な背景もあるが、ITベンダーにおいて研究開発部門が顧客と共創する動きは、富士通やNECなどでも見受けられる。最新技術が求められるDX時代の象徴的な動きの一つといえよう。
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