バイクの売れ行きにはさまざまなパターンがあります。発表時には大いに話題となったものの、勢いよく売れたのは初年度だけという機種もあれば、何年もコンスタントに売れ続けているモデルもあります。
今回紹介するのは、2017年12月の発売以来、401cc以上の小型二輪クラスにおいて5年連続でダントツに売れているカワサキの「Z900RS」です。
1972年に発売された伝説の名車、「Z1」(正式名称:900スーパー4)や「Z2」(正式名称:750RS)をモチーフとするネオクラシックモデル、その魅力について解説しましょう。
モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。
沖縄県が米国から返還された1972年、二輪業界にも衝撃的な出来事がありました。カワサキが世界最速を目指して開発した「900スーパー4」(型式名:Z1)が、欧州および北米市場で発売されたのです。当時は業界の自主規制により、日本では750cc超のバイクが販売できませんでした。そこで翌1973年に排気量をダウンして国内でリリースされたのが「750RS」(型式名:Z2)です。
発売から半世紀が経過した今もなおプレミアム価格で取引されている「Z1」「Z2」。この名車をモチーフに誕生したのが「Z900RS」です。実は1990年代のネイキッドブームの際にも、カワサキは「ゼファー400/750/1100」という「Z1」「Z2」にインスパイアされたモデルをリリースしましたが、「Z900RS」は直球とも言えるほどスタイリングを忠実に再現。これが40代以上のベテランライダーの心をわしづかみにしたのです。
ベースとなっているのは、かなり尖ったスタイリングのスーパーネイキッド「Z900」ですが、ワイヤースポークを思わせるホイールやメインフレームをRS専用に設計したり、高性能なブレーキセットを投入したりしており、「Z900」の面影はエンジンぐらいといっても過言ではありません。
フロントカウルやローポジションハンドル、専用シートを装備してカフェレーサースタイルとした「Z900RS カフェ」(146万3000円)や、リヤショックとフロントブレーキセットに海外製のパーツを使用した上位グレードの「Z900RS SE」(165万円)など、バリエーションが豊富なのもこのシリーズの特徴と言えるでしょう。
エンジンは948ccの水冷並列4気筒です。ハード面は「Z900」と共通ですが、マシンの特性に合わせて最高出力は125psから111psへとわずかに減じられています。とはいえ、ほぼリッタークラスの直4エンジンはさすがにパワフルで、200kgを超える車体を軽々と加速させます。
2023年モデルは最新の排ガス規制に適合しましたが、最高出力、最大トルクとも変わっておらず、さらにスロットルレスポンスが熟成されました。
ハンドリングは、やはりベースが「Z900」なので旋回力が高く、スポーティーと表現できるものです。往年の「Z1」「Z2」はリヤに2本ショックを採用していましたが、「Z900RS」は最新のリンク式モノショックです。
当時のルックスを重んじるなら前者を選択していたでしょうが、カワサキはハンドリングにおいても妥協したくなかったのでしょう。それが正解であったことは、ワインディングロードを走ると実感できます。
発売当初からアフターパーツメーカーが注力していたことから、カスタムパーツが豊富にあるのも「Z900RS」の特徴です。その数は今もなお増え続けており、マフラー一つ取ってもツーリング先でかぶる確率が非常に少ないのです。自分だけの1台を作り上げられる点も、長く支持されている理由の一つでしょう。
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