メカニズムがむき出しという、往年のバイクらしいスタイルの「ネオクラシックバイク」が、どの排気量でも人気を集めています。かつての名車に似せながらも設計技術は最新なので、故障やパーツ供給などに不安がありません。
今回は、原付二種からビッグバイクまで、国内メーカーから展開されている人気のネオクラシックバイクを紹介しましょう。
モーターサイクル&自転車ジャーナリスト。短大卒業後、好きが高じて二輪雑誌の編集プロダクションに就職し、6年の経験を積んだのちフリーランスへ。ニューモデルの試乗記事だけでもこれまでに1500本以上執筆し、現在進行形で増加中だ。また、中学〜工高時代はロードバイクにものめりこんでいたことから、10年前から自転車雑誌にも寄稿している。キャンプツーリングも古くからの趣味の一つであり、アウトドア系ギアにも明るい。
「ネオクラシックバイク」とは、その名のとおり「新しい設計の古典的スタイル」が特徴的なバイクのことです。もともとはカウリングを持たないネイキッドというカテゴリーから派生したジャンルなのですが、今では各排気量別の販売台数ランキングにおいて上位を独占するほど、世界的にも売れに売れています。
ビンテージやクラシックと呼ばれる本当に古いバイクは、排気ガスや騒音などの法規制が厳しくなる前のワイルドな乗り味と、昔ながらの製法による懐かしいスタイリングで人気を集めているのですが、中古車市場のタマ数の減少に呼応するかのように価格が高騰。500万円を超える個体も珍しくありません。たとえ手に入ったとしても、すでに車両メーカーからのパーツ供給が終了していることから、長く乗り続けるには何かしらの対策が必要となります。
ネオクラシックバイクは、そうした高値を付けている名車のスタイリングを元ネタにしているケースが多く、それでいてエンジンや車体の設計は新しいので、現代の交通事情に見合った走行性能を有しています。名車が現役だった時代を知るベテランだけでなく、若いライダーにも支持されており、その結果が好調な売れ行きに表れているのです。
車種が増えたことで、ネオクラシックバイクの定義は曖昧になっています。かつては「エンジンは空冷で、リアサスペンションはツインショックでなければ!」という風潮があったのも事実ですが、今でも共通項として残っているのは「ヘッドライトは丸型1灯」ということぐらいでしょうか。
ネオクラシックでも水冷エンジンが増えてきたのは、排気ガスや騒音規制に適合する上で有利だから。とはいえ、ユーザーを興醒めさせない範囲でどこまで最新技術を盛り込むかは、メーカーの腕の見せどころです。
2021年4月の発売以来、251cc〜400ccクラスで快進撃を続けているのがホンダの「GB350」です。丸型1灯ヘッドライト、直立シリンダーの348cc空冷単気筒エンジン、シンプルなスチール製セミダブルクレードルフレームなど、ザ・王道とも言うべきネオクラシックスタイルが幅広い層に支持されています。
見た目は古典的ですが、加速時の後輪スリップを制御するトラクションコントロールや、レバーの操作力を軽減するアシスト&スリッパークラッチ、急ブレーキを知らせるエマージェンシーストップシグナルなど、最新の装備を積極的に導入。リヤタイヤを18インチから17インチに小径化し、ラジアルタイヤを装着した「GB350 S(60万5000円)」もラインアップしています。
ホンダの「CL250」は、5月18日にリリースされたばかりのスクランブラーモデルです。2022年秋の海外ショーで初公開され、2023年3月に日本仕様が発表されたのですが、その段階から予約多数という人気ぶりです。ベースとなっているのはクルーザーモデルの「レブル 250」で、ホイール径を前後16インチからフロント19インチ、リヤ17インチに大径化したり、特徴的なアップマフラーを装着したりするなどして、往年のスクランブラースタイルを見事に再現しています。
ちなみにスクランブラーとは、舗装路もフラットダートも走れるジャンルの一種で、その最新版がアドベンチャーなどと呼ばれています。トップボックスやサドルバッグなど、ツーリングに適した純正アクセサリーが豊富なのも魅力の1つでしょう。
1958年8月に初代「C100」が発売され、世界最多量産バイクとしてギネスに載っているのが、ホンダの「スーパーカブ」。「C125」はスーパーカブ発売60周年にあたる2018年にリリースされた、非常に特別なモデルなのです。鳥の翼をモチーフとしたハンドルや、レッグシールドからリヤフェンダーへとつながるS字ラインなど、「C100」の特徴をうまく抽出しており、まさにネオクラシックと呼ぶにふさわしい出来映えです。
また、123ccの空冷単気筒エンジンは微振動が非常に少なく、シフトタッチも上質で、外観に見合うエレガントな乗り味となっています。オールLEDの灯火類をはじめ、ABSやスマートキー、チューブレスタイヤの採用など、原付二種とは思えないほどぜいたくな装備にも注目です。
近未来的な外観のスポーティーネイキッド「MT-07」をベースに、オーセンティックなスタイリングを与えたのがヤマハの「XSR700」です。2017年に発売され、2022年にはヘッドライトやウインカーのLED化、フロントディスクブレーキの大径化などを実施しましたが、基本的なスタイリングは初期から変わっていません。
「MT-07」よりもシート高が30mm高く、足着き性がやや厳しいのですが、「MT-07」譲りの688cc並列2気筒エンジンは低回転域から扱いやすく、スロットルを大きく開ければ快活に吹け上がるなど、その奥深い楽しさは傑作と呼べるほどです。販売台数ランキングの上位に顔を出す存在ではありませんが、人とは違うネオクラシックが欲しいという人に、自信を持っておすすめできる1台です。
2017年12月の発売以来、401cc以上において圧倒的に売れているバイクが、カワサキの「Z900RS」です。モチーフとなっているのは1972年11月にリリースされた「900スーパー4」、通称“Z1”で、ティアドロップタンクをはじめスタイリングこそ似せていますが、搭載されているのは最新の948cc水冷並列4気筒エンジンです。
倒立式のフロントフォークや、高性能なリンク式のリヤサスペンション、スーパースポーツ顔負けのブレーキシステムなど、ネオクラシックでありながら足周りは最上級のものを採用。ビキニカウルを装着してカフェレーサー風に仕立てた「Z900RS カフェ(146万3000円)」や、さらに足周りをハイグレードとした「Z900RS SE(165万円)」などもラインアップしています。
1966年に発売された「W1」に端を発するカワサキのWシリーズ。それをモチーフとするのが「W800」です。スチール製ダブルクレードルフレームに搭載されているのは、773ccの空冷並列2気筒エンジン。重いクランクマスが生み出すゆったりとした鼓動感と加速フィールは唯一無二のもので、2気筒らしい歯切れの良い排気音も含めて、ノスタルジックな雰囲気に浸ることができます。
フロントホイールが18インチの「W800 ストリート(113万3000円)」や、ビキニカウルとローハンドルを装着した「W800 カフェ(124万3000円)」といったモデルもラインアップ。さらに、吸収合併する前のブランド名を復活させた「メグロ K3(135万3000円)」という豪華仕様もあり、カワサキがいかにこのモデルを大切にしているかが分かるでしょう。
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