今年の夏アニメは豊作だと言われていますが、皆さんはどの作品を追っかけて見ていますか? 今期は特に『呪術廻戦』や『BLEACH』『文豪ストレイドッグス』など2期以降の続編ものが話題になっていますよね。確かにどれも素晴らしい作品ばかりですが、1期をチェックしていない途中参加の人には少し楽しみにくいのも事実です。
そこで今回は初めて見ても楽しめる今期からスタートのおすすめアニメをピックアップしました。Amazonプライムで追っかけで見られる作品を紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
フリーライターとして、家電、家具、アニメ等の記事を担当。大学時代から小説や脚本などの創作活動にはまり、脚本では『第33回シナリオS1グランプリ』にて奨励賞を受賞、小説では『自殺が存在しない国』(幻冬舎)を出版。なんでも書ける物書きの万事屋みたいなものを目指して活動中。最近はボクシングをやりはじめ、体重が8kg近く落ちて少し動きやすくなってきました。好きなのものは、アニメ、映画、小説、ボクシング、人間観察。好きな数字は「0」。Twitter:@kirimachannel
”幸せ”や”結婚”といったキーワードを盛り込んだ、最近あまり見かけないタイプのストレートなタイトルが印象的なアニメ。「結婚=幸せ」とはなんともアナクロと忌避感を覚えた人もいるかもしれません。しかし、タイトルから感じるほど本作は単純な話ではなく、シンデレラストーリー×異能バトル×ミステリーのひねりのある予測不能なエンタメ作品に仕上がっているので、男女問わず楽しんでもらえるはずです。
本作は明治のような大正のような、日本文化と異国情緒が交じり合う架空の時代が舞台。ヒロインの美世(みよ)は名家に生まれながらも、実の母を失い、継母と異母妹、そして実の父から虐められて育ちます。お茶を投げつけられたり、何の能力もないと罵られたりと、まさにシンデレラが受けたような酷い目に合うことに。悪役令嬢もびっくりの意地悪な継母と異母妹の存在により、美世の悲劇性は加速します。
自己肯定感に穴が開き、罵倒されることに慣れ切っていた美世。唯一心のよりどころとしていた幼馴染である辰石家の次男・幸次(こうじ)との縁談を期待するも、幸次の相手に選ばれたのは意地悪な異母妹の香耶(かや)でした。そして美世は、冷酷無慈悲として噂される久堂家への嫁入りを命じられることになってしまうのです。
絶望に絶望を重ねながら訪れた先で、美世は婚約者の久堂清霞(くどうきよか)と運命的な出会いを果たします。すぐに追い出されるのではと不安でいっぱいだった美世でしたが、清霞は噂とは異なる優しい心の持ち主であり、美世と清霞は徐々に仲を深めていきます。
最初は冷たいと思われた清霞ですが、美世を傷つけたと思えば素直に謝ったり、壊れてしまった美世の櫛の存在を知ると新しい櫛をさりげなくプレゼントしたりと、とても優しい面も。異能を操る対異特殊部隊の隊長としての厳しさと婚約者への優しさの両方を持った、ツンデレ要素満載の人物だったのです。そんな清霞の優しさに触れる中で、消え入りそうな声だった美世の声に張りが生まれ、申し訳なさそうな表情から笑顔が生まれ、美世の心が少しずつ回復していきます。
かくして幸せになったかと思われた美世でしたが、背後には政略結婚や異能を巡る争いも見え隠れします。美世が実は特殊な血を引いていることも判明し、物語は思いもよらない方向へ進んでいきます。幸せとは何かという普遍的なテーマと共に、陰謀渦巻く物語も楽しめる一石二鳥の作品と言えるでしょう。
血沸き肉躍るようなエンタメを求めるなら『アンデッドガール・マーダーファルス』は、まさにピッタリの1作です。本作に出てくるのは吸血鬼やら、人造人間やら、人狼やらといった異形のあるいは異常なキャラクターばかり。中には、名探偵シャーロック・ホームズや大怪盗アルセーヌ・ルパンなど歴史に名を残す人物も登場し、謎と異能力バトルに満ちた奇妙奇天烈な物語が展開されます。
時は明治30年。怪異や異形がはびこる不気味な世の中。主人公の青年・真打津軽(しんうちつがる)は”鬼殺し”として見世物小屋で化け物と戦いながら、生計を立てていました。人間でありながら鬼の特性を持つ、人間ならざる・鬼ならざる、境界線上に立つ半人半鬼であった真打は、類まれな身体能力で数々の怪異を倒す存在でありました。
歌うように独り言を奏でるひょうひょうとした彼の元に、カーテン付きの鳥籠を持ったメイド姿の女性が現れます。しかしながら、真打を嗅ぎまわっていた彼女は単なるメイドではなく、凄まじい戦闘能力を発揮して真打に襲い掛かってくるのです。
戦いが一段落したところ、鳥籠の中から何やら冗舌に語り掛ける声が。カーテンが開かれると、そこには生首となった美しい少女の姿がありました。生首でありながら落語家も驚くほどに舌が回る彼女の名は輪堂鴉夜(りんどうあや)。この世に1人しかいないとされる不老不死の存在であり、962年もの長い時を生きる異形の中の異形、まさにキングオブ異形であったのです。
話を聞いてみるに半年ほど前、鴉夜はとある日、とある人物によって襲撃を受けたことで首から下を失ってしまったのだという……。襲撃者の脇で様子を見守っていたのがMのマークが印象的な杖をついた老人でありました。この話を聞いた真打は、自分もそのMマークの杖の老人と出会ったことがあり、その老人の手によって半人半鬼にされたのだと鴉夜に告げます。かくして2人は謎の老人と接触すべく奇妙なヨーロッパ旅へと繰り出すこととなりました。
注目なのは変幻自在に動き回る人ならざる者たちの圧巻のバトルシーン。そして、真打と鴉夜の異様なまでにリズミカルなおしゃべりも魅力的です。三白眼でひょうひょうとしている一見死にたがりのようで生きたがりの真打と、長生きしたがゆえの洞察力と語彙力に満ち満ちた鴉夜の互いに罵るようなじゃれ合うような、丁々発止な物言いが癖になります。見終わった後には、彼らのあのやり取りをもう一度聞きたくなって、続きを思わずチェックしてしまうことでしょう。
少しばかり天然の眼鏡女子・三重あい(みえあい)と、そんな三重さんのことが好きでたまらない奥手男子の小村楓(こむらかえで)の2人の中学生を中心に描かれるピュアな恋愛物語です。
三重さんの隣の席に座りながらも、思春期奥手男子の典型である小村くんは声を掛けられずにただ見つめるか、妄想の中で謎のヨーロッパ風の町をデートするのが限界でした。そんなある日、三重さんが眼鏡を忘れてしまい、そのことをきっかけに三重さんから声を掛けられた小村くんは机をくっつけて一緒に1冊の教科書をシェアすることに。
突如近づいた三重さんにドギマギしながらも、なんとか平静を保つ小村くん。しかし、次の瞬間、三重さんの顔がくっついてしまいそうなくらい近距離に……。目が悪い三重さんは、「ところで誰だろう? よく見えなくて」と人物確認をしたかっただけなのですが、好きな子の急接近に小村くんはこれ以上にないくらいドキドキとしてしまうのでした。
このように本作は毎回何かと眼鏡を忘れてしまう三重さんと、目が悪いことで起きるドキドキ展開がいろいろなパターンで繰り広げられるラブコメ要素満載の作品となっています。好きな子に対して妄想力抜群なところや、好きな子に関するモノローグが多いところ、好きな子を目の前にすると挙動不審になってしまうところはまさに思春期ならでは。
恋愛で頭のスペックのほとんどを使い果たしている小村くんの姿に現在学生の皆さんは共感できるでしょうし、大人の皆さんも思春期を思い出しながら共感性羞恥によってある意味でのドキドキ感が味わえるかもしれません。
また、好きな子はたいてい実際以上に輝いて見えるものですが、今作における小村くんから見た三重さんの美しさもまた、これでもかというくらいに強調して描かれています。髪の束がそれぞれ生きているかのように繊細に動き、瞳に映る景色が星空のようにキラメキ、唇はやたらと艶やかで、ヒロインの美しさが巧みなアニメーションで表現されているのです。背景美術も含め画面全体がキラキラしており、青春の輝きを感じさせる作品に仕上がっています。
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