「ワークマン」から、本格的なマウンテンバックパックが登場しました。最大の特徴は、レインスーツ用に開発したオリジナルの高透湿防水生地「イナレム」を本体表地に採用していることで、容量は50Lと80Lの2種類があります。
登山用のバックパックは、50Lクラスでおよそ3万円台が相場となっていますが、今回紹介する「イナレムギアシェルパック50」は何と6800円(税込)! 実際に長野県と岐阜県にまたがる日本百名山の一座、御嶽山の日帰り登山で使用してみたので、そのレビューをお届けしましょう。
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キャンプギアやゴルフウェアなど、近年はさまざまなジャンルに進出しているワークマン。「趣味の入口にいる人を応援する」というコンセプトのもと、高機能でありながら低価格な商品を多数ラインアップしています。
今回紹介する「イナレムギアシェルパック50」も、まさにそうしたコンセプトに則った商品です。登山に興味はあるけれど、年に数回しか使わないであろう大容量のバックパックに2万〜3万円も出すのはちょっと……という人にピッタリなアイテムと言えるでしょう。
価格は6800円で、有名ブランドの3分の1から4分の1という安さです。また容量80Lの「イナレムギアシェルパック80」でもプラス1000円の7800円ですので、エントリーユーザーにとって非常にうれしい価格設定となっています。
「イナレムギアシェルパック50」最大の特徴は、ワークマン独自の高透湿防水生地「イナレム」を本体表地に採用していることです。上下2気室のコンパートメントはそれぞれ開口部からの浸水を軽減する設計となっており、少々の雨であれば収納した荷物がぬれることはありません。
山の天候は変わりやすく、晴れ予報だったのに短時間だけ降られてしまうことも多々あるので、慌ててレインカバーを被せる必要がないというのはありがたいですね。
さらにうれしいのは、本体表地と同じイナレム素材のレインカバーが付属していることです。レインカバーはボトム部分のポケットに収納されており、強風で飛んでしまわないようにトグルとドローコードでしっかりと装着できる設計となっています。
メイン上部気室の開口部には、ドローコードと雨ぶたで閉じるトップローディングが採用されています。また、雨ぶた部分は多くのマウンテンバックパックがそうであるように、収納スペースが設けられています。レインスーツや防寒着など、すぐに取り出したいものを収納するのに便利です。
下部気室の開口部は、ファスナーを併用したロールクロージャーとなっており、これも雨が浸入しにくいのが特徴です。雨ぶたの収納スペースと同様に、ひんぱんに取り出すものをしまっておくのに重宝します。
背中と接触するバックパネルには、肩への負担を減らし、安定性を高めるアルミフレームが採用されています。ショルダーベルトには、バッグ本体を背中側へ引き寄せるショルダースタビライザー(ロードリフターストラップとも呼ばれる)が付くほか、幅の広いウエストベルトや、ホイッスル付きのチェストストラップなどを採用。
さらに、体と接触する全ての部分にクッション性の高いパッドや通気性に優れるメッシュ生地を使うなど、有名ブランドに比肩するほど設計が本格的であることが分かります。
本体の正面にはトレッキングポール用のループが装備されています。また、側面のメッシュポケットとコンプレッションベルトを併用することで、同じようにトレッキングポールを固定できます。実際に使ってみると、後者の方がスピーディに出し入れしやすいと感じました。
その他、ポケットは本体正面と両サイド、そしてウエストベルトに設けられています。それぞれの容量は大きくはないものの、小物の分別収納に便利です。
さて、「イナレムギアシェルパック50」の使い心地を確かめるため、御嶽山に登ってきました。標高2160mにある木曽側の田ノ原登山口から最高峰の剣ヶ峰(3067m)を目指すルートで、往復で7km弱、獲得標高は900m程度です。
筆者は筑波山や高尾山など低山ハイクの経験はあるものの、標高2000mを超える登山は初めて。9月中旬の好天に恵まれた日でしたが、レインスーツをはじめ、ダウンの防寒着上下やシングルバーナー、クッカーまで用意したところ、ペットボトルの水2L分を合わせて荷物の総重量は6.7kgとなりました。「イナレムギアシェルパック50」の重量は約1.8kgなので、合計で8.5kg。ビギナーにはなかなかの重さです。
ところが、登山用バックパックを背負う際の基本である「腰70%、肩30%」という荷重割合を意識しながら各部のストラップを調整すると、片手で持ち上げたときにズシリと伝わった重さが霧散し、意外なほど軽く感じられます。
重心が多少後ろ寄りになるので、急な斜面ではそれに注意する必要がありますが、普段使っているデイパックよりも背負い心地は圧倒的に優秀です。
斜度が急になったタイミングでトレッキングポールを出したり、雨が降ってきたときにレインスーツを羽織ったりと、その都度バックパックを降ろして各部の使い勝手を確認しましたが、特に不満はありません。
中でもひんぱんに開閉したのは左右のサイドポケットで、ペットボトルの出し入れ程度であれば、コンプレッションベルトが邪魔に感じることはありませんでした。
防水性については、降雨が短時間だったこともあり、内部への浸水は見られませんでした。バックパックの上げ下ろしは地味に体力を消耗するので、レインカバーなしでも多少の雨をしのげるのは有利と言えるでしょう。
無事に剣ヶ峰へ登頂することができた今回のフィールドテスト。50Lサイズは山小屋泊の1泊2日までの登山に適しているとされ、今回のような日帰りであれば十分以上の容量であることを確認できました。
筆者のようなビギナーをはじめ、新緑や紅葉シーズンにのみ登山をするというライト層にはちょうどよいバックパックと言えるでしょう。
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