自分が応援したい都道府県や市区町村に寄付ができる制度「ふるさと納税」。寄付金の一部が所得税および住民税から控除されることもあり、利用している人も多いでしょう。
その際に使う「ふるさと納税ポータルサイト」の多くは、寄付金額に応じてポイントがたまる仕組みがあるため、利用者にとってはお得感があります。
しかし総務省は、このポイント付与を禁止することを決定しました。ふるさと納税でポイ活をしていた人にとってはショックな話でしょう。そこで、この決定が利用者にどのような影響を及ぼすのか、ふるさと納税の今後について解説します。
石倉博子
ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。
“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。大学では美学美術史と油絵を学び、文学と造形の学士を取得。しかし今は芸術とは程遠いお金の計算に情熱を燃やす人間になっている。伏線がきれいに回収された小説を読むのが好き。
総務省は6月、自治体が利用者にポイントを付与するサイトを通じて寄付を募ることを、2025年10月から禁止すると発表しました。
ふるさと納税を行う自治体は、ふるさと納税ポータルサイトに手数料を支払って、寄付の募集をしてもらいます。ふるさと納税ポータルサイトは、手軽に寄付ができる仕組みを提供し、利用者を増やすことに力を入れます。その際、たくさんの返礼品を紹介したり、ポイントを付与したりして集客します。
今回の改正で、ポイント付与を行っているサイトから寄付を募ることが禁止されるので、実質、ポータルサイトはポイント付与をやめることになります。ポイントシステムの改修には、ある程度の期間が必要になることから、2025年10月からの施行となっています。
総務省は、ポイント付与を禁止にした理由について、「ふるさと納税のポータルサイトによる、寄付に伴うポイント付与の競争が過熱していること」、「サイトを運営する仲介業者に支払う自治体の経費がかさんでいること」が理由であると説明しています。
総務大臣の発言から、自治体がポータルサイトに支払う手数料がポイントの原資になっていることを問題視していることがうかがえます。つまりポイントの付与が、仲介業者に支払う手数料が膨らむ要因の一つと考え、これを禁止することで、自治体の手元により多くのお金が残るようにすることが狙いのようです。
ふるさと納税については、本来の制度の趣旨からずれてきていることが度々問題となっており、これまでに幾度となく改正が行われています。今回の改正は、税金をポイント還元の原資としないための見直しといえるでしょう。
今回の改正で最も気になるのが、ふるさと納税の利用者にとっては、損なのか、得なのかということです。単純に考えると、寄付することで返礼品とポイントがもらえていたのが、改正によってポイントがもらえなくなるのは損になります。
しかし、ポイント付与自体がふるさと納税の本来の機能にはないものなので、正しい姿に戻ったと考えれば、損も得もないといえます。ふるさと納税でポイントをたくさんためていた人にとっては、今までがラッキーだったということでしょう。
自治体にとっては、ポータルサイトに支払う手数料が、今回の改正によって下がるとは限らないため、判断がしづらいところでしょう。なぜならポータルサイトの事業者は、ポイントの原資は自社負担と主張しているからです。実際、ポイントの原資が、自治体が支払った手数料であるかどうかの内訳は示されていないので、「ポイントの廃止=手数料の値下げ」とはならない難しさがあります。
ただ、大手ポータルサイトの一つが手数料を下げたら、競争原理が働き、全体的に手数料が引き下がる可能性があります。手数料が下がれば、自治体の収入が増えます。自治体の収入が増えれば、利用者にとっては、本来の趣旨である「地方を応援する」ことにより貢献できることになります。直接的な“得”はありませんが、制度の健全化が期待できれば、制度を長く利用できるでしょう。
2023年度の寄付総額は1兆1175億円と、4年連続で過去最高となっています。2025年にはアマゾンがふるさと納税ポータルサイト事業に参入することが報道されており、ポータルサイト事業がしのぎを削る状況となるかもしれません。今後は、ポイントによる集客ができなくなるので、サイトの利便性やポイント以外の付加価値を提供することで他社との差別化を図る必要があり、より本質的な競争となっていくでしょう。
利用者の今後を考えると、2025年9月までポイント付与が続くと思われるので、2025年9月あたりに駆け込み需要が起こると予想できます。ふるさと納税の寄付は年末に集中する傾向がありますが、2025年は駆け込み需要で前倒しとなり、人気の返礼品は早々に品切れとなることが考えられるので、目当ての返礼品がある場合は早めに寄付をスタートした方がよいでしょう。
ふるさと納税の実情は、返礼品を目当てに行っている人がほとんどだと思います。そのためポイント付与がなくなっても、ふるさと納税の利用者はさほど減らないのではないでしょうか。利用者目線で考えれば、ふるさと納税の返礼品で家計が助かるのであれば、制度を利用し続けたいと思うでしょう。
今後も、制度の健全化のために改正は続いていくと思われるので、納税者、利用者として注目していきましょう。
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