急成長するASP市場 第二世代へと突入する米国のASP@米国IT事情(1)

» 2000年05月22日 12時00分 公開
[長野弘子,@IT]

 昨年から急成長を遂げているアプリケーションサービスプロバイダ(ASP)は、企業に対して電子メールや共同作業ソフト、ERPやCRMなどの複雑なアプリケーションなどを、インターネットを通してレンタルするサービスだ。ASPを利用すれば、自社内で多数のソフトウェアをインストールして運営管理する必要がないため、企業は低コストで素早いシステム構築が行える。

急速に台頭するASP

 ASPの台頭は、IT専門家が不足する一方、スピードが勝負を決めるネットビジネスで企業が生き残るための折衷案とでも言えるものだ。米国IT協会(ITAA)によると、米国のIT専門家不足は1998年には30万人にのぼっており、Standish Groupの調査によると社内のITプロジェクトの46%が期限に間に合わず予算を大幅にオーバーしているという。ASPを使えば、IT専門家を雇わずに、安定したシステムを短期間で構築できるため、こうしたIT専門家の不足に対応できる。

 GartnerGroupは、社員ひとりの電子メールボックスにつきかかるコストは毎月40ドルだがASPに頼めば毎月5〜10ドルで済み、2001年には中小企業の電子メールシステムの65%はASPにより運営されると予測している。同社は、ASP市場は1999年には27億ドルに、2003年には227億ドル規模になると見込んでいる。

あらゆる企業が参入するASP市場

ASPサービスの仕組み 企業は、電子メールや共同作業ソフトからERPやCRMなどの複雑なアプリケーションまでをレンタルできるので、自社の主要ビジネスに専念できる

 現在、米国にはCorio、Digex、USinternetworkingを始めとする300社以上のASP企業が存在し、主要なハードウェア、ソフトウェア、ウェブコンサルティング、ISP/電話会社のほどんどすべてが同市場に参入を果たしている。ハードウェア企業にとっては、多数のアプリケーションと厖大なデータを運営管理する何千ものサーバーが設置されたデータセンターに、自社のマシンを売り込む大きなチャンスである。

 HPはこのビジネスチャンスを数10億ドル規模と見積もっている。同社は1999年5月、ソフト企業のSAPと電話会社のQwestと提携し、SAPソフトのASPサービスを販売し始めた。また、ソフト企業にとっては、自社のソフトをASP経由で提供できるので販売チャネルの拡大につながる。Microsoft、Oracleなどの主要ソフト企業はこぞって、ASPに自社のバックエンドシステムを販売するのに必死だ。

 ウェブコンサルティング企業は、企業のウェブサイトやECサイトを構築するのと同時に企業のバックエンドシステムもホスティングすることでさらなる売上増加が見込める。USWeb/CKSは1998年後半にASPに参入し、Microsoftとこの分野で大型提携を結んだ。 一方、ISP/電話会社にとっては、高速インフラをASPに提供できる。Qwestのように自ら企業向けにASPサービスを提供している企業もある。

課題が多いASP

 ASPは多数の企業が参入し、最も成長が期待される魅力的な市場だが、現状では顧客に対する柔軟なカスタマイズが提供されおらず、セキュリティが不十分など、多くの問題が残っていることも事実だ。特に、企業の重要な情報を管理するデータセンターのセキュリティ管理は重要であり、ASPのデータセンターの多くは警備員の厳重な監視のもと、指紋や声紋による入念な入室チェックが行われている。また、ASPの社員がデータにアクセスするのは顧客からの依頼があったときに限られており、顧客のアプリケーションへのアクセスはユーザー名とパスワードの他にもデジタル認証などが採用されている。

 ASPが一定基準を満たしていることをテストし、承認するためのプログラムも登場した。Ciscoはネットワーク技術者とASPの間の知識のギャップを埋めるための認証プログラム「Hosted Applications Intiative」、Sunは自社の技術仕様を満たしたASPを承認するプログラム「SunTone」を提供している。

第二世代へと突入する米国のASP

 ASP市場は、さらに進化を続けている。初期に市場に参入したCorioは、さまざまなアプリケーションを組み合わせて、垂直市場向けにカスタマイズしたソリューションを提供している。大手企業の多くは、レガシーシステムをいかにインターネットに統合するかが課題となっているが、多くのインターネット新興企業はレガシーシステムすら存在しない。そういった企業にとっては、企業の業務システム構築は最初から垂直市場向けのソリューションを提供するASPに任せた方が効率的である。

 また、急成長のBtoB市場で、ASPがネット上で売り手と買い手を結びつける「Eマーケットプレイス」としての役割を果たす可能性も大きい。企業はASPを通して共通の注文および在庫管理機能を使用しているので、それに企業間取引システムを追加するだけでいいからだ。Merrill Lynchによると、2003年までにEマーケットプレイス市場はBtoB市場の15〜20%(4000億〜5000億ドル)に達する見込みである。

Corio
http://www.corio.com/

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