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価値主導時代の次世代マーケティング戦略分析
顧客の心をつかむ次世代モバイルマーケティングの実現に向けて
「モノは作っても売れない」
そういった声をクライアント企業の担当者から聞くことが多い。作れば売れていた時代から、モノがあふれて売れない時代へとシフトした、と。
市場の成熟化やインターネット、モバイルの登場は、顧客を大きく変容させた。それはすなわち、企業がマーケティングの在り方を根本から見直す時期にきている、ということにほかならない。
この新しいパラダイムを読み解いていかなければ、顧客、もしくはその根底に流れる価値観の変化を見誤ってしまうことにもなりかねない。では一体、具体的に何が変容したのだろうか?
第1回は「変容のポイント」について考察する。
大衆の時代であった1970年代まで、価値観は均質で価値基準の尺度は家族や一般大衆であった。
顧客は完全に“マス”ととらえられ、マーケティングは巨大なマスメディアシステムに頼り切っていた。
その後、メディアの多様化が進展し、それに伴い、1990年代ごろまでには顧客は似たような環境で生活するセグメント集団を価値基準の対象とする形へと移り変わった。いわゆる分衆の時代である。
均質だった価値観は自分らしさを求めて多様化を始めていったのだ。これまでの均質な価値観やそのお仕着せの価値集団を捨て、自らの価値観に合ったトレンドリーダーやカリスマの価値に自分の価値を投影することにより、出来上がった“自分らしさ”を追求するという個の時代へと移り変わってきたのである。
そして現在。その個の時代はさらに進展した。
個人の中に固定した価値観が存在するという構図ではなく、価値観そのものが人を動かす時代になりつつある。1人の人間がおのおののシチュエーションごとにいくつもの価値観にコミットし、その価値観に共感する人々とだけ、その場限りの関係性を持つ。そのようなライフスタイルをユーザーは模索し始めているのである。
価値観が変わっていくと同時に人間同士の関係も変容してきた。そこにはインターネットやケータイなどのデジタルメディアの存在が大きくかかわっている。
これまでの人間関係は、学校や職場などの制度上の集団、もしくは地元や家族など地縁・血縁的な集団をベースに成り立ってきた。
しかしデジタルメディアでは、自らの価値観により、自分の属する集団をバーチャルの中で選択できるようになった。価値観の合わない人間やその関係を、自らの選択により排除できるようになったのである。つまり、「個」の価値観に沿った形で人間関係を再編集できるようになったのだ。
そして彼らは、その再編集された人間関係をリアルの世界にも持ち込む。彼らの関係性は、地縁・血縁などに依存しないため、互いのコミットを常に求めるというわけではなく、会いたいとき、もしくは会うべきときに関係性を持つ、いわば関係性のオン/オフを使い分けるような形態を取り始めた。
それはすなわち、家族や学校、職場といった既存の共同体へのコミットが薄まり、価値観を中心とした共同体を、それぞれの個人が取捨選択する時代への変容を意味している。
「ハードが変わればそれを使うソフトも変化する」
以上の変化には、メディアやハードの進歩が大きく関与している。
最も大きく影響したのが、コミュニケーションツールとして最も身近な存在である電話であり、そして電話のモバイル化である。電話は人間の関係性に大きな変化をもたらした。
黒電話の時代、電話は家族のメディアであり、基本的には用件のみのコミュニケーションを担っていた。双方のタイミングが合わなければ、どんなに伝えたい用件があったとしても伝達できないのが当たり前の時代であったのだ。
コードレスフォンの時代では、自分の部屋でプライベートなコミュニケーションを取ることが可能になり、長電話をする=家にいながら個人の時間を多く過ごす人々が増加してきた。
また留守電機能により、相手がいなくても用件を伝えることが可能になったために、ある程度、時間を超えたコミュニケーションができるようになってきたのである。
そして携帯電話時代の現在、電話が完全に個人のものになっただけでなく、携帯メールによって、複数の人間との非用件的な“おしゃべり”コミュニケーションを取ることが定着し始めている。
用件の伝達が目的ではなく、相手の行動を把握することや自分の行動・気持ちを伝えることが目的となってきている。
場所的な制限により、用件を伝えるだけであったコミュニケーションツールが、いまや非用件の“おしゃべり”をメインとする、コンテクスト(文脈・前後関係)を確認するツールに変化している。
もしこの仮説が正しければ、特に若年層の携帯ユーザーはコンテンツという生活上の「点」の楽しみよりも、「線」であるコンテクストに対し価値を置き始めているといえる。
モバイルマーケティングについて、大きな期待が各方面から寄せられているのは事実だ。
いわく、
確かに上記の顧客変容に対し、「個」でつかまえることができ、コミュニケーションデバイスとしての機能を持つ携帯電話は、マーケティングツールとして、非常に魅力的である。
現在、凄まじい数のモバイル端末がユーザーのポケットに入ったことで、ビジネスチャンスの拡大のみが語られる。
しかしその実、ユーザーの価値観はこれまで以上にさらに複雑怪奇なものになり、そのユーザーの心理的変化をとらえられなければ今後の競争環境で勝者になることはできない。
次回は、現在のモバイルビジネスの脆弱さを指摘しつつ、現状の企業マーケティングとユーザニーズのはざまにあるジレンマを掘り起こしていく。
(第2回に続く)
森 美知典(もり みちのり)
イエルネット株式会社 プランナー
某モバイルコンテンツプロバイダーを経て2000年、イエルネットに入社。現在に至る。ストラテジック・プランナーとして、eビジネス構築の企画戦略に携わる。
イエルネット株式会社
企業のeビジネスを、企画戦略からインターフェイスデザイン、システム構築まで、トータルでサポートする。PCだけでなく、ブラウザフォンやPDAなど、マルチプラットフォームでの開発を得意とし、新時代のコミュニケーションデザインをミッションとして、さまざまな企業の業務支援を行っている。
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