モバイルマーケティングに対する錯覚From Netinsider(34)

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» 2001年12月19日 12時00分 公開
[森 美知典,Vagabond/@IT]

価値主導時代の次世代マーケティング戦略分析
顧客の心をつかむ次世代モバイルマーケティングの実現に向けて

第2回 モバイルマーケティングに対する錯覚

 前回(モバイル時代、顧客価値観の変容)は、顧客の変容を価値観、人間関係、コミュニケーション、それぞれのレイヤーで説明した。その変化に伴い、モバイルマーケティングが期待されていることも触れた。

 しかし、現在語られているそれは、あまりにも顧客心理から懸け離れたものではないだろうか?

 今回は、顧客の変容に対し、いまだに従来の概念を持ち続けている現状のモバイルマーケティングの問題点を指摘したいと思う。

 モバイルマーケティングを考えるときに、意識するポイントとして、3つの脆弱性への注意を喚起したい。

 すなわち、

  1. キャリア主導型ビジネスモデルの脆弱性
  2. 実際のモバイルWebサイトへの過度な期待の脆弱性
  3. 企業主導型マーケティングの脆弱性

である。

キャリア主導型ビジネスモデルの脆弱性

 キャリア主導型モバイルビジネス構造は、ユーザー課金モデルによって成功したといわれているが、最近そのユーザー課金の恩恵を受けていたコンテンツプロバイダの雲行きが怪しい。

 キャリアとコンテンツプロバイダの関係は、コンテンツが拡大すればユーザーが拡大し、ユーザーが拡大すれば課金収入が期待できるという、Win-Winの関係と呼ばれていた。

 しかし一般的な資料ではあるが、NTT-Xと三菱総合研究所が実施したgooリサーチ自主調査によると、ユーザーがよく利用する有料コンテンツは着メロが64.5%、次いで生活情報系が30.7%、情報検索系が30.1%と、利用コンテンツが着メロのみに集中していることが分かる。

 また、1カ月間にコンテンツに支払う金額も300〜400円程度が上限(400円以下で全体の54.5%を占める)という実態が見え始めてきた。

 キャリアにとっては、どんなコンテンツが売れようが、収益には影響を及ぼさないが、コンテンツプロバイダにとっては投資額の割に回収ができないというかなりシビアな問題となってきている。

 キャリア⇔コンテンツプロバイダ⇔ユーザーのグッドサイクルにより成長してきたモバイルコンテンツビジネスは、顧客拡大に伴うシステム投資に悩むコンテンツプロバイダをキーに、一気にバッドサイクルに陥る危険が伴っているといわざるを得ない。

実際のモバイルWebサイトへの過度な期待の脆弱性

 ブラウザフォンの爆発的な加入者数により、モバイルインターネットサービスのビジネスチャンスが強調されるが、本当にユーザーはモバイルWebサイトを使っているのだろうか?

 ユーザーがブラウザフォンを使用する際の主な機能は、以下の4つに大別される。

音声通話機能  Web閲覧機能

電子メール機能 スケジュール機能



 日経BP社インターネット視聴率センターの調査を参考にすれば、ユーザーが携帯電話の機能で重視するものは、音声通話機能を100とした場合、

  • Web閲覧機能=28
  • 電子メール機能=86
  • スケジュール機能=9

という数字になるのである。

 ユーザーが携帯電話を必要とするのは主として音声通話とメールである、というこの現実と、iモードサイトにはビジネスチャンスが転がっている、という文脈には、大きなズレはないだろうか?

企業主導型マーケティングの脆弱性

 3つ目のポイントは企業主導型マーケティングの限界である。

 市場が成熟し各企業がパイの取り合いをしなければならなくなった現状において、一方向的な「垂れ流し」広告はその弱点をさらけ出すことになった。認知の最大化を図るマス・プロモーションだけでは、顧客のマインドシェアを獲得することができなくなったのである。

 例えば、「ネオ・ソフト・マーガリン」や「キリン・ラガービール」など、主要なブランドはほとんどのターゲットが知っている。もはや認知率を向上させても意味がないのである。また、前回述べたように、急速な顧客の変容を考えれば、ある集団に向けたアプローチではなく、いかに「個」という最小単位にアプローチできるか、が重要になってくる。

 そういった流れのうえでITマーケティング、とりわけモバイルマーケティングに熱い目がそそがれたのも納得がいく。

  • 「個人」にアプローチできる
  • 「時間」でアプローチできる
  • 「場所」でアプローチできる……

 しかし、現在のモバイルマーケティングをかんがみるに、マーケティングの方式は変われども価値訴求の方向性はいまだ企業から顧客の方向なのである。

 顧客志向と叫ぶ現在のマーケティングも、企業が主体的に創造した価値を、顧客1人1人に訴求しているのみにすぎないのではないか。

 例えば、

  • 会員登録したはいいが、毎日毎日機械的にプッシュメールが配信される
  • ユーザーのパケット料を無視したサイト都合によるナビゲーションフロー
  • 問い合わせ体制などバックエンドを考慮しないモバイルビジネス構築

 これらの問題は、モバイルという武器を持っているにもかかわらず、新しい顧客とのコミュニケーションを見つけられない企業のジレンマを象徴しているようにも見受けられる。

 以上のように、現状の企業が想定するマーケティングと、変容した顧客のニーズとの間はいまだミスマッチが存在しているといわざるを得ない。

 次回では、ではどういった方向でのアプローチがモバイルマーケティングに有効なのか、その可能性について述べてみたい。


(第3回に続く)

Profile

森 美知典(もり みちのり)

イエルネット株式会社 プランナー

某モバイルコンテンツプロバイダーを経て2000年、イエルネットに入社。現在に至る。ストラテジック・プランナーとして、eビジネス構築の企画戦略に携わる。

イエルネット株式会社

企業のeビジネスを、企画戦略からインターフェイスデザイン、システム構築まで、トータルでサポートする。PCだけでなく、ブラウザフォンやPDAなど、マルチプラットフォームでの開発を得意とし、新時代のコミュニケーションデザインをミッションとして、さまざまな企業の業務支援を行っている。

東京都渋谷区渋谷2-2-10 青山H&Aビル4F

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※本記事は、 【NETINSIDER】vol.131(2001年11月15日)に掲載されたものです。

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