iモードの登場、爆発的なヒットにより、ビジネスインフラとしてのモバイルに注目が集まる。表示画面が小さい、受信容量が少ない、回線が遅いなどといった不満も聞かれるが、インターネット対応携帯電話の利点はなんといっても「いつでも、どこでも、手軽に」情報を受発信できるところにあり、ユビキタス時代をリードする端末だ。電波さえ届いていれば、ほぼリアルタイムに、ダイレクトに相手に伝わるという点を高く評価している人も多いだろう。ビジネスシーンに活用されるモバイルを見ていく
社会人のほとんどが持ち歩き、いつでもどこでもネット接続が可能な携帯電話。メール送信やコンテンツ利用で終わるのではなく、その即時性を生かし、ビジネスシーンでどこまで活用できるかが勝負の分かれ目になってきている。
松下電器産業社長の中村邦夫氏が、携帯電話のメールを駆使し、役員や幹部に指示を出したり、檄を飛ばしたりするのは意外と有名な話だ。1分1秒を争うような現場では、ほぼリアルタイムであることが重要になる。PCのメールに比べ、携帯電話のメールは距離感が近く、言葉がストレートに相手へ伝わると感じられる。
ありがたくない(?)例としては、サーバなどでトラブルが発生した場合、アラートメッセージが携帯へ送信される機能を使う技術者も多い。サーバ関係のトラブルは、人がいない休みの日にビルの停電や空調停止によって起こることが結構あるようで、携帯へアラートを送信する設定にしているNEC 121wareの技術者は「盆も正月もない」と苦笑いしていた。
そのほかのケースでも、携帯電話でメールを受信したり(プッシュ型)、Web上で在庫確認をする(プル型)など「一方通行」で使われることが多かった。ここに来て、インターネットの双方向性(インタラクティブ型)を生かしたビジネスソリューションが本格的に稼働してきている。
コンシューマ向けになるが、クロネコヤマト(ヤマト運輸)が「宅急便メール通知サービス」を始めている。CMを見た方も多いと思うが、依頼(送り)主がメール通知サービスを申し込むと、事前にお届け先(受取人)の携帯電話やPCへ、荷物の配達時間をメールで通知するものだ。メール通知だけで終わるのではなく、メールに記載されたURLへアクセスし、配達日や時間帯の変更ができるという双方向性を兼ね備えている点がミソだ。
メールをiモードやEZweb(J-SKYには未対応)などで受け取り、その場で配達時間を変更できるのは多忙なビジネスマンにとっては便利だ。また、依頼主がメッセージをトラッキングできるため、オークションやお中元などで物を送りっぱなしにしてしまうということが避けられる。受取人側でも自分の受け取りたい配達予定日・時間帯に変更するといったことができるので、大きなメリットがある。
こうした企業システムとモバイルを連携するソリューションが増えている。中でも目立つのが外回りの営業マンを支援するシステムだ。
ソニーマーケティングでは、在庫管理やスケジュールが携帯電話上で確認できるシステムを導入しているという。「eMOUSE」と名付けられた営業支援システムは、携帯電話からのアクセスに対応し、在庫状況や最新の売れ行きデータ、販売店ごとの卸値などを参照できる。いままでの営業スタイルでは、商談の流れによって客先から会社へ電話をかけたり、PDAやノートPCを広げてインターネットアクセスする必要があった。それが、常にネットにつながっている携帯端末が普及したことで、ちょっとボタンを押せば、最新の在庫状況や卸値がサッと引き出せる。また、メールやスケジュール管理も携帯電話の画面上で行えるため、その日のスケジュールを確認したり、会社のパソコン宛のメールをチェックするために会社に行く必要がない。
在庫確認が即座にできるということは顧客満足の向上に繋がり、出先でスケジュールの確認や変更できるということは、いちいち会社に電話して社内に残っている人間の手をわずらわせることなく、社内のコラボレートを迅速に行うことができるということだ。
こうした時間短縮は結果的に商談に割く時間を増やすことになり、また個々の営業マンにとっても直行直帰が容易になる。例えば10人の営業マンがいる部門で、1日1時間ずつ営業時間が増えたとしたら、部門として1カ月200時間以上の営業力の強化になる──。モバイルに振り回されるのではなく、モバイルによって新しい時間を創出し、ゆとりあるビジネスを目指したい。
数多いる一般の携帯電話ユーザー相手にマーケティング活動や各種サービスを提供するというソリューションは、iモ−ド登場の比較的初期からあったが、こちらのほうの進化もどどまるところを知らない。
実際に利用してみて便利に感じたのが、携帯電話の画面にバーコードを表示することで入場券代わりにするソリューションだ。飲食店利用時の割引サービスや、イベント会場への入場券がわりに利用するケースを見かけるようになった。
利用者のメリットとして、常時持ち歩いている携帯電話がチケットやクーポン代わりになるため、うっかり忘れて利用できないということがなくなる。そして、お店ごとに違うカードを沢山持ち歩く必要もない。また、店やイベント主催者のメリットは、誰が利用したのか瞬時にデータとして収集でき、イベントならチケットのもぎりの人件費と時間が削減できる。筆者もとあるIT系のセミナーで、バーコードチケットが導入されているのを体験したが、セミナー開始直前の一般入場は長蛇の列だったが、モバイルチケットを持っている人はバーコード画面を表示し、リーダーを画面に当てるだけで受付が完了するため非常にスムーズで、得した気分になったものだ。
そのバーコードが進化した形としては、国際航業が4月から売り出した「お得ーぽん(おとくーぽん)」がある。バーコードを携帯上に表示し、お店やイベントなどで利用する点は変わりがないが、従来と異なるのは地図情報を併せ持つ点だ。
お得ーぽんは、携帯電話のバーコードを入場券や割引券といった一過性のものにするのではなく、それをキーにしてポイントサービスを実施するものだ。今までポイントカードやスタンプカードを発行する店は多かったが、どこの誰がどんなものを買ったのかという点までデータ収集をしたものは少なかった。それだけ大がかりなCRMを導入する必要があり、また分析も大変だった。お得ーぽんは、POSを通じて「誰がどんな商品を買ったか」というデータを蓄積していく。そのデータは地図情報と連動させることで、どこから顧客が来ているのかを分析したり、店舗の近くにいる顧客向けにメールを配信するといったことがボタン1つで可能になる。また、携帯電話を使ったポイントサービスということもあり、貯めたポイントを利用して着メロや壁紙をダウンロードしたり、ゲームで遊べたりといったサービスも考えられている。このような高度な機能と手軽さにより、コンシューマと導入企業のお互いがメリットを享受できるうえ、良質なリピーター(ファン)を作ることができるだろう。
| ●クーポンサービス | ||
| お得ーぽん | 携帯・PDA | 国際航業 |
| キューフォン | 携帯・PDA | アラン |
| ●広告 | ||
| iモード広告 | 携帯電話 | ディーツー コミュニケーションズ |
| i-adシステム | 携帯電話 | エルケルム |
| ケータイクリック | 携帯電話 | シーエー・モバイル |
| ●プロモーション | ||
| ケータイGETサービス | 携帯電話 | ケイタイ・ゲット |
| Handy Web | 携帯電話 | オールウェイズ |
携帯電話にも対応したグループウェアを利用すればスケジュール管理やイントラ内のメール送受信が可能になり、コンテンツ変換ソフトまたはASPを利用することでPC向けのサイトが携帯電話対応に書き変わる。また、携帯電話向けの営業支援や在庫管理に特化したパッケージやASPも登場してきている。そして、こうしたソリューションはPCベースのものに比べて、導入コストが安価なものが多いのも特徴だ。
その意味では、モバイル・ソリューションは会社の部門レベル、店舗レベルでの積極的な導入を考えてもよいものだろう。そんな、ちょっとした工夫で営業部隊の生産性を上げたり、大きなマーケティング効果を生んだりと、ライバルに大きく差をつける原動力になりそうだ。
生井 俊(いくい しゅん)
1975年生まれ、東京都出身。国内初の交換留学制度を利用し、同志社大学留学。早稲田大学第一文学部卒業後、株式会社リコー入社。ソリューション営業として仙台支店(現・リコー東北株式会社)に配属となるが、1年で脱落。現在ライターとして活動中。近著に『万有縁力』(プレジデント社、共著)。今春に同友館より『インターネット・マーケティング・ハンドブック』(共著)を発刊予定
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