企業経営におけるナレッジマネジメント・システム(以下KMシステム)の導入は、LANの浸透/グループウェアの登場などを背景に、1990年代半ば以降急速に進んだといわれている。一時のKMブームは去った感があるが、インターネット時代を迎えて情報資産の価値が高まる今日、その重要性はより増していると言えるだろう。本稿では、Business
Computingフォーラムが実施した第2回読者調査から、現在のKMシステム導入状況やその課題についてレポートする。
はじめに、Business Computing 読者が関わるシステムにおける、KMの導入状況から見てみよう。図1の通り、現在KMシステムを導入/運用しているのは、回答者全体の約3割であった。また「今後1年以内に導入する予定」「導入を検討中」という回答も合計すると3割を超えており、KM市場は今後とも継続的に成長していく模様だ。
以下では、KMシステムの現導入者および導入予定/検討中の回答者197人にフォーカスして、その導入実態などを見ていこう。
まず改めてKMシステムの導入目的を確認したところ、導入/予定者の8割近くが「社内の各種ドキュメント/情報の一元管理と共有」を挙げており、情報管理こそKMの最大目的であることが明らかになった(図2)。また、それに次いで「社員の生産性向上」「社員間コラボレーション促進」といった社内業務支援のポイントが上がっている反面、「企業間コラボレーション促進」「顧客満足度の向上」などの社外的効用に関しては、現在のところあまり目的化されていない様子だ。
次にKMシステムを導入/運用する際の課題をたずねた結果、もっとも大きなハードルは「ユーザーにKM導入目的や情報共有意識が浸透しない」点にあることが分った(図3)。ほかにも「実際にKMを推進する人材/実行組織の不在」「KMシステムの導入効果が不明瞭」など多くの課題が挙げられているが、“目的意識が共有できない”ことは、それら運用面の課題に先立って、KMの根幹に関わるクリティカルな問題と言えるだろう。
ちなみに読者のKM体験談からは、以下のようなコメントが寄せられた。
こうして見ると、KMの成否は“システム導入前”の段階で、どれだけユーザーと意識を共有できるかにかかっているようだ。ここでもう一度図2を振り返ると、従来KM導入目的は「情報管理」に力点が置かれていたが、KM本来の「知識経営」実現のためには、「社員の意識や組織風土の改革」こそが重視されるべきものなのかもしれない。
さて後半では、KMシステムを実現する技術やツールの利用状況/利用意向について、紹介していこう。
まず読者の関わるシステムで今後利用予定のKMテクノロジ分野を聞いた結果、「グループウェア」がトップに挙げられた(図4)。以下「イントラネット」「電子ファイル/ドキュメント管理」といった、これまでKMシステムを形成してきた伝統技術(?)が続く中、「EIP(企業情報ポータル)」利用意向が3割を超えている点が注目される。
KMツールとして今後も利用意向が高かったグループウェアについて、代表的な製品の導入状況/導入予定をたずねた結果が、図5だ。現在は「ロータス
Notes/Domino」導入率が最も高くなっており、「サイボウズ」「マイクロソフト Exchange Server」がそれに続いている。
グループウェアに続いて、EIPツールについての導入状況も聞いてみた(図6)。まだ広く導入されている製品はないものの、今後の予定を見ると「マイクロソフト
SharePoint Portal Server」「日本アイ・ビー・エム WebSphere Portal」といった、ソフトウェア総合ベンダーのポータル製品に注目している読者が比較的多いようだ。
最後に上記のようなKMツールを選択する際の要件を聞いた結果、KM導入/予定者の7割以上が「ユーザーが簡単/快適に使いこなせること」を重視していることが分った(図7)。KMツールは、ITリテラシの高低に関わらず多くのユーザーが日常的に使ってこそ価値があるものだけに、その使い勝手が重要であることは強調されてしかるべきだろう。
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