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» 2005年12月28日 12時00分 公開

中国オフショア開発で日報を書かせる秘訣は?オフショア開発時代の「開発コーディネータ」(15)(2/3 ページ)

[幸地司,アイコーチ有限会社]

日報を書かせるならリアルタイムに精査せよ

 中国オフショア開発で日報を書かせるのなら、日本側でも素早くフィードバックする支援体制が求められます。フィードバックは、「その場で」「スペシフィックに」が大原則です。ところが、オフショア開発では「その場」に居合わすことができないため、日本からのフィードバックが遅れがちになってしまう傾向があります。

 さらに悪いことに、たとえ日本人が中国に渡航して「その場で」フィードバックしても、中国人技術者の日本語能力不足から、問題点を「スペシフィックに」把握できないケースが非常に多いのです。

 ここで、中国オフショア開発でよくある失敗事例を紹介しましょう。

 登場人物は、中国に駐在する日本人のプロジェクトマネージャ、日本語で日常会話をこなせるリーダー格の中国人SE、そしてデータ入力機能を担当する中国人S。Sは日本語をまったく話せません。

 中国人Sさんが担当するデータ入力機能がいつまでたっても完成しない。周りの社員は「Sが悪いから」といって、ずっと遊んでいた。

 遊んでいたといっても、技術者は黙々とPCの前に座っているだけなので、プロジェクトマネージャは夕方になるまで、チーム全体の作業が滞っていたことにまったく気が付かなかった。(中国地方都市にあるオフショアベンダでの1コマ)

 慌てた日本人のプロジェクトマネージャは、リーダー格の中国人SEを呼び付け、厳しく問いただした。

「なぜ、もっと早く報告しないのか!」

「Sが悪いから……」

「納期が遅れたら、お客さまに迷惑が掛かるだろ!」

「はい、ですから昨日の日報に書きました」

 プロジェクトマネージャの記憶によると、日報では「(自分の)進ちょくは順調」とあったはずだ。ところがよく確認してみると、日報の目立たない連絡事項の欄に、

「データ入力機能が早く完成してほしい」

 とだけ書いてあった。自分の担当部分は順調だが、チーム全体の進ちょくが危ないことを示しているらしい。

「これじゃ、何が懸案事項なのか、まったく理解できないだろうが!」

「でも、自分はちゃんと報告しましたから」

 中国では、どんなささいなレポートであっても、提出物はリアルタイムに精査しなくてはいけません。このような事例だと、プロジェクトマネージャは、リーダーSEの責任を追及することはできないでしょう。逆にいうと、提出物を精査できないなら、日報・週報・月報を提出させるべきではありません。その方が、コミュニケーションの質が高まることが多いのです。

 前出の事例に対して、中国に駐在する仲の良い日本人マネージャからコメントをいただきました。

-----Original Message-----

本当に共感します。

問題なら問題と、進ちょく報告なら進ちょく報告と、分かるように報告してほしいものです。

1つのメールにいろいろなことが一度に書かれていて、結局私が大事な問題を見落としていました。そのせいで後日、

「あなたに報告したのに、何も返事をしてくれなかったから失敗したじゃないですか」

と、担当者から文句をいわれたことがありました。

(中国に駐在する日本人マネージャ)

-----Original Message-----

 メールありがとうございます。よくぞ、筆者がいいたかったことを見抜いてくれました。

 中国人担当者の日本語が下手なのは仕方ないことです。しかし、そのために重要な報告内容が見落とされてしまうのは大問題です。

 先ほど、「上司は中国人担当者の責任を追及することはできない」と書きましたが、実際には「中国人は“ほうれんそう”ができない」「これだから中国人部下は扱いにくい」と憤慨する日本人が多く、非常に残念です。

 こうしたトラブルの再発を防ぐには、日本と中国で「報告」に対する温度差がどの程度あるのか調べてみるとよいでしょう。報告者は、一方的に相手に伝えるだけで報告の責任を果たしたことになるのでしょうか。

 それとも、相手(上司/日本人)の理解の確認まで「報告」のプロセスに含めるのでしょうか。「ほうれんそう」に対する意識の違いは、国や地域間の格差と同じくらい個人間の格差も無視できません。つまり、1つのプロジェクトの中に、報告の上手な中国人もいれば、報告の下手な日本人もいます。あなたのプロジェクトで用いられる「報告」の意味を厳密に定義することが重要です。

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