実際にデータセンターを比較検討する間違いだらけのデータセンター選択(9)(2/3 ページ)

» 2007年03月14日 12時00分 公開
[近藤 邦昭,まほろば工房]

ファシリティ(設備)の比較

 これらデータセンターの比較を行うために、図1のような調査票を用意し、これに記載された「ラックに関する項目」「立地と回線」「電源設備」「データセンターサービス」、そして「セキュリティ」に関して調査しました。これらについて、各データセンターの特徴を比較していきたいと思います。

ALT 図1 データセンター各社見学の際に使用した調査票(クリックで拡大します)

1)ラック

 この連載では、ラックで気になる部分として、横幅、奥行き、高さ、マウントレールの位置、そしてねじの形状を取り上げました。

 ラックの幅は3社のいずれのデータセンターでも700mmと十分な幅があり、マウントレールの外側を介してケーブリングができるようになっています。奥行きは900mmと1000mmの2種類がありました。

 900mmを標準で出しているのはMFですが、設置機器によって1000mmを選択可能とのことです。

 ラックの高さは、43Uから48Uですが、ラック上部の1〜3Uが、インターネットコネクティビティやほかのラックとの接続のための、イーサネットや光ファイバのパッチパネルに利用されている場合が多いようです。

 ラックは、すべて独立架となっており、隣のラックとはラックの側面パネルで仕切られていますが、複数ラックを借りる場合を考慮してケーブリング用の穴があり、必要に応じて、両側から外すことでケーブリングできるように設計されています。

 ねじの形状に関しては、いずれもマウントレールにナットを脱着できるタイプのものが利用されていました。

2)排熱設計

 ラックタイプのデータセンターレンタルの場合、気になるのがラックからの排熱設計です。これは、各社独自の実験・検証を行いながらラックの配置、データセンター全体の設計を行っています。結果的にどこも十分な排熱設計がなされているのですが、排熱設計の考え方は各社異なり、比較対象としては面白いといえます。

 3カ所すべてで基本的な構成として取られているのが、ホットアイルとコールドアイルを設定し、ラックの列を構築する方式です。ビットアイルの場合はさらに、通常ラックの内側から外側に空気を排気する場合が多いのに対し、逆にラックへ冷風を吸入するタイプのファンをラックの扉面に設置していました。これにより、排気型のファンよりラック内の温度をムラなく下げることができるということです。

 SBIDCの場合は、さらにコールドアイルに扉を設置してほかの空間と分離しています。これにより、ラックが吸い込む前面からの空気がほかのホットアイルなどからの回り込み熱などで温まらないようにし、高負荷な機器を設定しても各機器に高い温度の空気が吸い込まれないようにしています(特許申請中だそうです)。ホットアイルにも、センター内の空調設備の吸入口に空気が流れるように、天井部分に空気を強制的に対流させるためのファンを設置してありました。

 一方、MFの場合は、データセンターが置かれているビル自体がオフィスビルということもあり、ほかのデータセンターに比べ天井高が比較的低くなっています。しかし、この特徴をうまく利用し、天井面から排熱された温まった空気を吸い込み、空調設備に吸い込ませることで、データセンター全体をムラなく冷やす構造が取られていました。

 いずれも近年の各サーバ、ネットワーク機器の高負荷による排熱量に対応するよう、独自の検証を進め、高負荷機器を十分設置できるように設計されていました。しかし、データセンター側の設計が十分でも、利用者がその設計を超えて使えば、元も子もありません。設置機器の熱量設計に十分配慮して機器を設置することは、相変わらず必要といえます。

3)電源設備

 電源設備は、特別高圧部分と冗長電源設備、そして各ラックへの配電状況に分けて考える必要があります。

 特別高圧部分は、どのデータセンターも6600Vまたは22000Vが2系統以上引き込まれています。電圧の差は、地域的な制約などもありますから問題ではなく、2系統以上が引き込まれている点が重要で、この点はいずれも問題ありません。

 冗長電源設備は、いずれも予備発電装置がデータセンター専用に設置されており、これで賄っています。特にビットアイルの場合、予備発電装置は単独で24時間の運転が可能だそうです。一方、SBIDCは、燃料供給に関して供給会社と特別な契約を結び、発電開始とともに燃料供給が開始できるような体制を作っているとのことです。いずれの場合も必要十分な体制が組まれていました。

 各ラックへの電源供給は、基本的に各ラックまで1系統の電源が標準で引かれており、バックアップ用の2系統目は別途リクエストに応じて設置可能となるようです。電源の種類は、100VACが基本で、200VACは応相談。48VDCはなし。

 電源容量は、標準ではビットアイルが3kVA、MFが2kVAとのことです。いずれも相談に応じて容量アップは可能とのことです。SBIDCは、標準的な値は設けずレンタル時にリクエストに応じて設置するとのことでした。

4)セキュリティ

 セキュリティは、入館セキュリティとラックセキュリティについて比較します。

 入館セキュリティは、建物への入館から受付そして機器設置スペースまでの入館を指します。細かい点では各社微妙な差がありますが、共通しているのが「連れ込み防止対策」です。基本的に使われているのは非接触カードキーによる入館管理で、機器設置スペースまでの出入りの管理をこのカードキーによって行っているようです。SBIDCの場合は、機器設置スペースとの間に1人しか入れないゲートがあり、これによって、連れ込みを完全に防止しているようです。MFの場合は、必ずデータセンター担当者のアテンドが付くことで防止しています。

 ラックセキュリティのポイントは、関係するラック以外をいじれないこと。つまり、無関係の人が自社の契約しているラックを不用意に触れないようにしていることです。

 いずれの場合も、ラックごとに鍵が分かれており、データセンター入館時に受付で必要なラックの鍵しか貸与されないことで防いでいるのが基本です。しかし、ケージ貸しのような場合もあり、この場合は必要に応じてアテンドが付き、データセンターの担当者によってしかラックの開錠ができないというケースもあります。

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