CIOと情報システム部門の役割を見つめ直せCIO、もの申す(2)(1/2 ページ)

情報システム部門は時代とともに社内での位置付けや役割が変わってきている。これからの情報システム部門とCIOに求められるものとは?

» 2007年05月23日 12時00分 公開
[佐藤 良彦,@IT]

ITマネジメントの難しさ

 経営とITがもはや切り離すことのできない関係にあることは、いまさらいうまでもありません。ではさて一体、どのようにして経営とITの融合を図っていけばいいのでしょうか。

 ITマネジメントに関する意見や情報は、雑誌記事や論文、書籍、セミナーなど、さまざまなメディアにあふれています。経営者や情報システム部門の管理責任者の方々にとっては、ありがたい状況かもしれませんが、あるいはただ単に振り回されるだけという危険がないわけではありません。

 実際、現場でさまざまなマネジメントフレームを用いてプロセスを確立したとしても、本当に有効なITマネジメントが実行されているでしょうか。単なる手続きを進めるためだけのプロセス化に終わっていないでしょうか。たとえばみれば、高級外車は買ったけど運転技術が未熟なために乗りこなせない、大き過ぎて角を曲がり切れない、たくさん付いてる機能はほとんど使っていないという状況に陥っていませんか。あるいは右側通行と左側通行との違いのように、ルールの違いや土壌の違い、文化・認識・価値観・視点の違いなどのために、ステークホルダー(意思決定にかかわる社内の各担当者)の利便性や創造性(イノベーション力や機会)が失われていませんか。

 ITマネジメントにかかわるプロセスは、とりわけ分かりにくいものであるため、形骸(けいがい)化しやすく、多くの場合、分かる人にしか分からない無駄な取り決めが数多く作られ、時がたつにつれて、当初の必要性や思いに対する認識が関係者内で希薄化し、「決まりだから」と形ばかりのプロセスを繰り返しているという状態になりがちです。

 読者の皆さんの中には情報システム部門に異動してきて、いざ仕事を始めてみたら、なんでこんな手続きが必要なんだろうとか、どうしてこんな資料が必要なんだろうとか、どうしてこんなレビュー会議が存在するんだろうとか感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。それは、マネジメントフレームが陳腐化して、現状に合っていないのかもしれません。

 マネジメントのやり方は、時間の経過とともに常に見直していく必要があるのですが、マネジメントフレームに関する考察はまたの機会に取り上げるとして、今回はITマネジメントのフレームを作る前に必要となる大前提──情報システム部門自体の在り方(存在意義)や、それを統括するCIOや情報システム部門管理責任者の在り方や役割について少し触れておきたいと思います。

CIOとは一体、どのような存在か?

 前回「情報システム部門はビッグチャンスをつかめ」にも書きましたが、ITの領域で経験の浅い経営者にとって、ITマネジメントは依然として厄介なものです。日々変化を続けるIT技術をとらえ、企業経営の変化に対して必要なITソリューションを導出し、企業戦略と結び付けて実行していくことは、彼らにとって至難の業です。

 そこで昨今では、CIOの必要性が唱えられています。CIOをどのように定義するかについては、企業によってかなり相違があります。例えば、「企業において情報システムを統括し、かつIT戦略の立案、執行を主たる責任とする役員」として取締役を指す場合もあれば、執行役員制度に基づく役員で前出のCIOの責任の定義に合致していれば、取締役ではなくてもCIOと呼んでいる場合もあります。最近では、情報システムの統括責任者であれば、取締役や執行役員でなくても、CIOという役職名を冠している企業も少なくありません。CIOの位置付けは、依然として混沌かつあいまいであるというのが実情でしょう。

 つまり同じCIOといいながら、ポジションや役割にはかなりさまざまなバリエーションがあるということです。役員クラスのCIOとそれ以外では、執行権限に大きな違いがあるはずですから、スピード経営を目指す場合などでは顕著な差が出てくるでしょう。例えば、情報システムの日々決められた運用に関する決裁権は持っていても、新規プロジェクトの予算やリソース調達(人、物)に関して相応な権限が委譲されていないと、各方面への根回しや手続きが都度発生し、スピーディな意思決定と活動ができず、機会損失を招くかもしれません。

兼任CIOのパターン

 「CIO Magazine IT投資動向調査」によると、日本の企業で専任・兼務含めCIOがいるとする企業の割合は、だいたい4割ほどのようです。2006年度調査(IT投資動向調査2007)の業種別数値を見てみると、製造業で約35%、流通・小売・商社で約28%、金融・保険業で60%、サービス業で35%、その他業種で36%というところです。

 CIOの必要性を意識し、その設置に取り組む企業は増えてきていますが、経営とITの両方を理解し、それを執行まで移していくことのできる高度な経験とスキルを兼ね備えたCIOはまだまだ少ないのが実情です。例えば、専任のCIOを置いている企業の内訳を見ると、サービス業が最も多いのですがそれでも全体の約15%程度、製造業に至っては約5%程度にとどまっています。現実には兼任CIOを置く企業の比率が高いというわけです。

 兼務のパターンを考えてみると、社長自らがCIOを兼ねる場合、財務責任者がCIOを兼ねる場合、経営企画責任者がCIOを兼ねる場合などが考えられます。小生が見るに、これら兼務パターンの中で多いのは、経営企画責任者が兼務するパターンが約50%、財務責任者が兼務するパターンが約30%程度というところでしょう。またこの逆で、情報システム部門の責任者が経営企画責任者を兼任するという動きも見られます。

 しかし小生は、情報システム部門を主管とする責任者が財務責任者を兼ねるといったケースは見たことも聞いたこともありません。やはり、大きな支出予算を扱う部門の責任者が財務責任者を兼務するのはコーポレート・ガバナンス上、無理があるようです。IT投資対効果(ROI)がまだまだ分かりにくい今日において、予算の執行者と監視者を一緒にしては、対外的なアカウンタビリティを果たせません。

 とはいえ、CIOの役割は兼任ながらもより経営に近いポジション、責任を持つ役職にシフトしているようです。このような動向から、企業が経営とITとの融合を模索しながら、激化する競争力の強化と貢献へ向けた努力と活動がうかがえます。

 ここまでCIOにフォーカスして、その設置の動向を述べましたが、CIOを設置しさえすれば問題解決ということにはなりません。これと同時に、情報システム部門の在り方についても考える必要があります。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ