NECとEMCが、共同開発によるエントリストレージ製品の販売開始を発表した。NECは「iStorage Eシリーズ」、EMCは「CLARiX AX4」の製品名で、それぞれの販売チャネルを通じ全世界で販売する。生産は一括してNECが担当する。
これは、NECとEMCが2007年4月、企業情報管理に関する広範な提携の一環として共同開発すると発表していた製品。NEC執行役員常務の丸山好一氏はこれを1つのきっかけとして、「(国内ストレージ市場における)2社のシェアは10数%だが、3年後には30%程度にしたい」と話した。
両社は新製品により、全体として停滞するストレージ市場において、唯一高成長が見込まれるローエンド/エントリ市場を攻略する。この市場で求められる「低価格」「導入や管理が容易」「ニーズに合わせて迅速に拡張できる」といった要件に焦点を当てた。
新製品はiSCSIあるいはファイバチャネルの接続が可能なネットワークストレージ製品。もっとも目を引くのが最小構成で100万円以下という価格だ。正確にはiSCSI接続ディスクアレイコントローラ×1、SATAディスクドライブ(750GB)×4、管理ソフトウェアの構成でNECの希望小売価格が89万8000円となっている。この価格はコストパフォーマンスの高いインテルプロセッサの採用、ストレージインターフェイスとしてのiSCSIの採用、大量生産を前提とした価格設定により実現したと両社は説明する。
1つのシステムに最大60台のディスクドライブを収容できるため、750GBのドライブでは最大45TBの構成が可能という。SASドライブとSATAドライブの混在が可能で、データの利用頻度に応じた動的な再配置ができる。ディスクアレイコントローラは2枚まで搭載でき、負荷分散や障害対策が行える。ソフトウェア機能には2社の製品の間に多少の違いがあり、例えばEMCでは簡便なスナップショット機能に加え、数世代のスナップショットの取得やボリューム全体のコピーが可能な「SnapView」、遠隔複製を実現する「MirrorView」などをオプションで用意している。
2007年4月の発表で示唆されたとおり、新製品はStorage Bridge Bay (SBB) 1.0規格に対応している。SBBはファイバチャネル、iSCSIなどの接続技術にかかわらず、ストレージシステム側での接続インターフェイスを統一する動きだ。普及すればコンポーネントコストの低下も期待されるが、対応製品はまだ少なく、新バージョン2.0の策定も予定より遅れている状況だという。
国内では2社とも同製品を販売することになるが、すみ分けは自然にできるだろうという。NECはExpressサーバのこれまでの販路をそのまま活用する。一方、以前は大企業中心に事業を展開していたEMCは、2年前よりパートナービジネス拡大のため「Velocity」プログラムを推進、国内では現在16社が参加しているという。同社はこれらのパートナーを通じて新製品を拡販していく。
EMCはミッドレンジストレージをデルにOEM供給している。そのデルはエントリ/iSCSIストレージでイコールロジックを買収するなど独自のラインナップを拡大しつつある。今回のNECとの発表は、EMCとデルの関係にどのような影響を与えるのか。
米EMC 主席副社長のハワード・エライアス(Howard Elias)氏はこの質問に対し、同社のデルとの関係と、NECとの関係は性質が異なると説明した。
「デルとの関係は市場攻略におけるパートナーシップだ。一方NECとのパートナーシップは市場攻略だけでなく共同の開発・エンジニアリングを目的としている。デルは過去数年にわたり、EMCにとって数量ではナンバーワンのパートナーで、関係は非常に強く、将来ももちろんこれは続いていくだろう。一方でデルは、ローエンドでは以前から独自製品を展開してきた。ここに戦略の転換はない」(エライアス氏)。実際にデルも、新製品を自社のブランドで販売することを米国で発表したと同氏は指摘した。
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