日本オラクルの社長執行役員 最高経営責任者の遠藤隆雄氏は7月4日、2008年5月期(2007年6月から2008年5月末)の決算発表会見で、今年度の戦略を発表し、米本社が買収したBEAシステムズについて「BEAによってSOAプラットフォームを実現できる環境が整った。市場が広がったと理解している」と期待感を示した。
日本オラクルと日本BEAシステムズはすでにBEA製品の販売、サポートの窓口を日本オラクル側に統合することを発表している。7月以降、日本BEAシステムズの社員が日本オラクルに順次出向していて、最終的には120人あまりが日本オラクル内で働くことになる。日本BEAシステムズの代表取締役社長だった志賀徹也氏は社長を退任し、7月1日付で新たに日本オラクルの副社長執行役員システムテクノロジー営業統括本部長に就任した。米オラクルは買収後のミドルウェア戦略を発表している。
日本オラクルはBEA製品の取り扱いを始めることで、2009年5月期(2008年6月から2009年5月末)には「データベース&ミドルウェア事業」(前期まではデータベース・テクノロジー事業)で、8.5%の売上高成長を見込む。同事業の2008年5月期は前期比3.2%のマイナス成長だったので、BEA製品の投入に大きな期待を寄せていることが分かる。2007年の国内アプリケーションサーバ市場ではBEAシステムズが10.4%、日本オラクルが6.8%のシェアを獲得していて、BEA統合後の日本オラクルは市場4位の17.2%のシェアを握ることになる。
また、BEA製品の既存顧客に対してOracle Databaseやほかのミドルウェア製品を勧めるなどのクロスセルもやりやすくなるとしている。Oracle Database 11gの投入やBEA買収のごたごたで「踊り場」(日本オラクル 専務執行役員 最高財務責任者 野坂茂氏)だったデータベース事業も、「この第2四半期(9-11月期)には立ち上がってくる兆しがある」(遠藤氏)と見ている。
遠藤氏は上記のBEA製品の市場投入を含めた中期事業計画を現在策定している。「IT基盤の提供だけでなく、顧客の経営に貢献でき、長期的に信頼されるパートナーになること」が柱であり、技術的にはSOAの活用を顧客企業に訴える。
「これまではお願いして売ってもらうだけだった」というパートナー企業との連携も強化する方針。市場に向けての共同戦略をパートナーと策定して「オラクルの製品やソリューションの価値を正しく顧客に伝えていく」ことに注力する。オラクル社内、パートナーの技術者育成も力を入れる考えで、遠藤氏は「業務スキルを持ったコンサルタントやSOAのアーキテクトなど領域ごとの専門家を育成していきたい」と話した。
日本オラクルの2008年5月期は増収増益だった。売上高は前期比13.2%増の1141億1200万円。営業利益は5.3%増の387億3100万円。買収によって扱う製品が増えたことが貢献した。一方、人員増によって営業利益率は2.7ポイント低下したが、「予想の範囲内だった」(野坂氏)という。
事業別ではデータベース・テクノロジーが上記のように3.2%のマイナス。ビジネス・アプリケーションとアップデート&プロダクト・サポートは好調でそれぞれ19.6%、18.2%の増加だった。ソフトウェア関連全体では8.3%の増収だった。ソフトウェアの新規ライセンスに占めるビジネス・アプリケーションの比率は2007年5月期の11.3%から2008年5月期は13.6%に拡大した。エデュケーションサービスが20.7%、コンサルティングサービスが66.8%増えるなど、サービス事業も好調だった。
2009年5月期は売上高で13.9%増の1300億円を予想する。営業利益の予想は1.7%増の394億円。事業別ではデータベース&ミドルウェアが8.5%、ビジネス・アプリケーションが24.6%、アドバンスト・サポートで45.2%の増加を見込む。
オラクルはまた、現在建設中で7月末に竣工予定の本社ビルの名称を「青山オラクルセンター」と発表した。8月から9月にかけて引っ越しを行う予定で、分散している都内のオフィスを集約する。
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