日本IBMは8月1日、都内の日本IBM 晴海事業所内にクラウド・コンピューティングの検証施設「IBM クラウド・コンピューティング・センター@Japan」を開設したと発表した。クラウド・コンピューティングのビジネスメリットを顧客に提案したり、新しいシステム環境を検証する場として活用する。IBMによるとクラウドの検証施設の開設は日本で初めて。
IBMは世界各地でクラウド・コンピューティングの検証施設を設けていて、東京の開設は5番目。会見した米IBMのIBMソフトウェア・グループ ハイ・パフォーマンス・オンデマンド・ソリューションズ担当ストラテジー・バイス・プレジデントのウィリー・チゥ(Willy Chiu)氏は「このようなセンターを世界中に開設することで、クラウドのメリットを知ってもらい、顧客のビジネスをサポートしたい」と話した。「センターの数は今後数カ月で2倍にしたい」とも述べ、IBMとして積極的にクラウド・コンピューティングに投資する考えを強調した。
晴海事業所内に開設したセンターでは、「IBM System x」「Power Systems」「BladeCenter」などのサーバを利用し、仮想環境を構築。「IBM Tivoli」でシステムの運用管理を行う。
クラウド・コンピューティングは米アマゾンの「Amazon Web Service」や米グーグルの「App Engine」が有名だが、日本IBMのソフトウェア開発研究所 執行役員 岩野和生氏は、IBMが目指すクラウドを「エンタープライズ・クラウド」と定義する。「エンタープライズ・クラウドはセキュリティやモニタリング、データ保全性などこれまでIBMが蓄積してきた技術で、Webクラウドを補強する。これによって産業界に本当のパラダイムシフトを起こすことができる」と話した。
IBMはエンタープライズ・クラウドの適用分野として、ソフトウェア開発や研究開発、大規模情報処理などを挙げている。センターは顧客向けに半日の無償ワークショップを実施し、顧客に対してクラウドのメリットを理解してもらうとともに、センターを使ったクラウド・コンピューティングの実証実験を提案する。
大規模分散処理フレームワーク「Hadoop」のデモンストレーションも実施する。会見では、クラウド上にHadoopを構築してMapReduceプログラムを走らせるデモと、コラボレーション技術「Jazz」をベースにしたチーム開発環境を構築するデモがビデオで示された。Hadoopの構築は管理ノード2台、計算ノード8台からのなる10台分の環境を構築し、その上でHTTPサーバへのアクセスログを分析するMapReduceプログラムを走らせる内容。
もう1つのチーム開発環境構築のデモは、Jazzチームサーバを1台と、統合開発環境用のサーバを8台構築する内容だった。それぞれ管理画面から設定を行ってリクエストを出すだけで、数十分で構築できるという。IBMは仮想化、クラウド化されていない従来のシステム環境で同じような構築をしようとすると「2週間はかかる」としている。
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