チーム開発をもっとJazzyに、IBM Rational「アジャイル開発」には抵抗感?

» 2009年02月23日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 日本IBMは2月23日、ソフトウェア開発ツールの新版「Rational Team Concert V.1.0.1.1」など3製品を発表した。チーム開発のコラボレーション基盤である「Jazz」に基づく製品で、アジャイル開発を実現した上で、開発のライフサイクル全般を統合管理し、最適化するという。競合に打ち勝つ戦略的な値付けも行い、これまでの大規模顧客だけでなく、中小規模企業の獲得も目指す。

 IBMのRationalブランドは6年前に買収した製品で、「要件定義などの上流から開発、テスト、リリース、メンテナンスまで一連のプロセスに対してツールとメソドロジーを提供する」(日本IBMの理事 ラショナル事業部 事業部長の渡辺公成氏)。IBMは特にチーム開発での生産性向上を目指してJazzと呼ぶコラボレーション基盤を整備している。新製品は日本語版製品で初めてJazzに対応した。

日本IBMの理事 ラショナル事業部 事業部長の渡辺公成氏

 JazzはEclipseのクライアント機能を統合した上で、ソフトウェア開発のライフサイクル(作業項目、障害、ビルド状況、ソースコードなどの成果物)の管理を可能にした。機能の追求ではなく、チーム生産性の向上を第一に考えられるように設計されている。また、協力会社など外部組織を含めた開発を意識し、開発ガイドラインやマニュアルなどが定めるルールをJazzプラットフォームに統合し、開発者が意識しなくてもガイドラインに沿った開発ができるようにした。

 JazzはJavaや.NETに対応したAPIを提供可能で、ほかの開発ツールと組み合わせて使うこともできる「オープンプラットフォーム」(渡辺氏)。すでに世界では20以上の関連ソリューションがパートナーから発表されていて、IBMは2009年中にこれを50まで増やすことを計画している。

 IBMが今回発表したRational Team Concertはソフトウェア開発における構成管理とビルド管理、作業管理の機能を統合した製品。プロジェクトの進ちょくやメンバーの参加状況などのデータを開発者に意識させることなく自動収集し、ダッシュボードにリアルタイムで表示する。Wikiやチャットなどの機能もあり、チーム開発の生産性向上を図るという。英語版は昨年6月に米国などで発表され、その導入顧客へのアンケート調査によると、開発チームの生産性が50%向上した例もあったという。

 価格は最大250ユーザーまで使える「Standard Edition」のサーバライセンス(3ユーザーライセンス付)が715万円(税抜き、以下同じ)。別売のユーザーライセンスは1ユーザーで55万7700円。50ユーザーまで使える「Express Edition」はサーバライセンス(3ユーザーライセンス付)が85万8000円、ユーザーライセンスは17万1600円。サーバライセンスが無償で最大10ユーザーまで使える「Express-c」もある。渡辺氏は「Standard Editonはかなり安い」と話し、中小規模のITサービス企業をターゲットにすると話した。

 同時に発表した「Rational Requirements Composer V1.0」は要件定義を行うための管理ソフトウェア。明確になっていない段階のシステム要求を、文書だけでなく、視覚的なイメージで管理して定義することで要求定義の生産性を高める。IBMによると要求定義の生産性を最大15%高めることができるという。価格はStandard Editonが500万5000円(サーバライセンス、3ユーザーライセンス付)。

 またテスト工程の管理を効率化する「Rational Quality Manager V1.0」も発表した。テスト状況をWebベースで一元管理し、テスト結果から問題解決の優先順位を決めて、解決することができる。Standard Editonの価格は286万円(サーバライセンス、3ユーザーライセンス付)。

 Rationalブランドの開発ツールはアジャイル開発を指向する製品で、「アジャイル開発のメソドロジーが組み込まれている」(渡辺氏)。しかし、金融機関を中心とする大規模顧客には「アジャイル開発は少人数向けの技法というイメージがマーケットで定着しているため、抵抗感が強い」(日本IBMのIBMソフトウェア・エバンジェリスト 玉川憲氏)。

 そのため「アジャイル開発」はマーケティング用語としてはあまり使っておらず、代わりに「アジリティ」などを打ち出している。だが、中小規模の企業ではアジャイル開発へのニーズが高く、セミナーなどを頻繁に行って「継続的に(アジャイル開発の)メッセージを出していきたい」(渡辺氏)としている。

 一方、中小規模の企業であればオープンソースライセンスの開発ツールも当然の選択肢となる。「Bugzilla」や「Subversion」などだ。玉川氏は「オープンソースの開発ツールでもそれぞれを連携させることは可能だが、データのひも付けなどは手作業となり、組織内のプロセス管理も難しい」と指摘、Rationalは「プロセスも含めて統合して提供する」と強調した。

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