functional diagram
VE(注1)で用いられる図表で、機能分析で抽出した要素機能の相互関係を体系化して表現する系統図のこと。
「機能系統図」の語はFASTダイアグラム(注2)を含む各種系統図の総称としても用いられるが、日本では産業能率短期大学(現・産業能率大学)教授だった玉井正寿によって考案されたものを指すことが多い。
玉井の機能系統図は考察対象が顧客や利用者に提供する機能(最終目的機能)を最上位に置き、それを分解(機能分析)した要素機能の相互関係を“目的−手段”の観点で階層的に整理・記述する。これにより、VEの機能評価とアイデア発想のフェイズで機能分野を明確に示すことができる。
一般的な機能系統図の作成方法は次のとおり。まず、対象を構成する機能をそれぞれ「(名詞)を(動詞)する」の形で定義し、機能カードにまとめていく。機能カードには機能名や制約事項(コストなど)も記載する。機能が出尽くしたら各機能カードに対して「何のためにその機能が必要なのか?」という質問を投げ掛け、回答に該当する上位の機能カードを探す。見当たらない場合は機能カードを追加作成する。これを繰り返して機能カード(機能)同士をつないでいく。
機能系統図を作ることで機能の要不要や適否を確認できるとともに、機能の見落としを防止できる。また、製品(あるいはサービスなど)の基本機能をベースに上位機能(最上位が基本機能)と下位機能の関係が明確化され、機能設計の考え方を関係者で共有できる。
VEでは上位機能(目的)が同じでも、下位機能(実現手段/実装方法)が異なる機能系統図を複数作成する。こうして目的の達成度や制約事項の累積を数値的に表現し、それを総合判断することによって最適な手段を選択する。
システム構築やソフトウェア開発では上流工程の早い段階から「どの製品を使うか」「開発言語を何にするか」という議論になりがちだが、システムに求められる本質的な機能要件を実装独立な形で定義できるツールとしても有用である。
(注1)VE
(注2)FASTダイアグラム
▼『機能分析──エンジニアに送る価値とコストの独創的問題解決法』 玉井正寿=著/産業能率短期大学出版部/1967年11月
▼「機能系統図の作り方」 玉井正寿=著/日本VE協会 『バリューエンジニアリング』No.7, 1976年
▼『機能分析──企業のシステム改革・効率化の基礎的ツール』 秋山兼夫=著/日本規格協会/1989年3月
▼『新・VEの基本──価値分析の考え方と実践プロセス』 土屋裕=監修/産能大学VE研究グループ=著/産能大学出版部/1998年5月
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