オラクル、SOA構築基盤の拡張パック最新版をリリースSOAのライフサイクル開発ツールを新たに提供

» 2010年06月14日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 日本オラクルは6月11日、SOAによる業務システムの構築基盤「Oracle Applications Integration Architecture Foundation Pack 11g R1」(以下、Oracle AIA FP 11g)の提供を開始したと発表した。

 ガートナーが2007年5月と2009年5月に行った調査結果によると、日本企業のSOA適用における問題点は「開発方法論が乱立・未確定」が最も多く、「投資対効果が不明瞭」や「エンジニアのスキルがない」「開発ツールが未成熟」などが続いている。この結果に対して、日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 Fusion Middlewareビジネス推進本部 担当シニアマネージャー 中村秀樹氏は「問題点を大きく分けると、『何をしたらよいのか分からない』や『開発難易度が高い』『投資を回収しづらい』などが挙げられる。これに対してオラクルでは、過去の成功体験やノウハウを基にテンプレート化やパッケージ化を図ることで、これらの問題を解決しようとしている」と答えた。

中村氏写真 日本オラクル Fusion Middleware事業統括本部 Fusion Middlewareビジネス推進本部 担当シニアマネージャー 中村秀樹氏

 このような問題を解決するために、オラクルは2007年7月にSOAのノウハウを詰め込んだアプリケーション統合基盤「Oracle Application Integration Architecture」(Oracle AIA)を発表。Oracle AIAは、各業務アプリケーションを事前定義されたビジネスオブジェクトとサービスを使って統合する「プロセス統合パック」、他ベンダ製品や独自開発システムにも対応可能な「ファウンデーションパック」、各種ビジネスプロセスをBPMLなどで図式化した「リファレンスプロセスモデル」の3種類で構成される。

 「事例を基に算出したコスト削減効果を見ると、コスト面では導入で20%、アップグレードで55%、保守で50%の削減効果が見られた。導入期間では、平均導入期間で30%、平均アップグレード期間で50%短縮できた。これはテンプレートを用いて導入することで、導入時の開発工数が減るだけでなく、アップグレードや保守時にも、手組みシステムと比較して一般化されたテンプレートの方が工数が少なく済むためだ」(中村氏)と説明し、Oracle AIAのメリットをアピールした。

 今回発表したのは、Oracle AIAの拡張機能の1つであるファウンデーションパック「Oracle AIA FP 11g」の最新版。SOAのライフサイクル管理をしながら開発ができるツール「AIA Lifecycle Workbench」が追加されたほか、Oracle Fusion Middleware 11gに対応した。そのほか、134種類の共通オブジェクト、1300個の共通サービスが追加された。

 従来オラクルでは、SOAライフサイクルの運用部分をサービス管理ツール「Oracle Enterprise Repository」で担っていた。今回AIA Lifecycle Workbenchが追加されたことで、開発者は業務フローを業務処理ごとに分解して既存サービスを再利用したり、新サービスをWeb画面上で用意に実行することが可能になる。このAIA Lifecycle Workbenchで開発したサービス情報は、Oracle Enterprise Repositoryで共有することができる。

 また、Oracle AIA FP 11gでは134種類のシステム連携基盤共通データモデルを追加。これにより、SOAシステムを共通データモデルによる疎結合が容易になり、データ変換パターン数が減少する。その分のコスト削減効果が見込めるという。業界別では、「銀行取引および財産管理拡張ファウンデーションパック」と「保険業向け拡張ファウンデーションパック」が追加された。

 中村氏は、最近のERPを取り巻くアーキテクチャのトレンドについて「最近のERP関連開発のトレンドは、ERPを中心にアドオンを開発する従来型と、SOAを中心にしてERPやホストをつなげる連携型の中間に位置する“ハイブリッド型”が増えている。これは、ERPを中心にその周辺をSOAで個別パッケージなどをつなぎ合わせるものだ。このアーキテクチャを採用することで、コア業務とノンコア業務を分別し、柔軟性とコストのバランスを図るのが容易になっている点が特徴だ。コストプレッシャーの問題もあり、この手法が増えている」と説明した。

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