正確で分かりやすい仕様伝達の方法
中国オフショア開発を成功させるためには、初期段階から要求仕様を固めることに加えて、中国企業側に日本語コミュニケーション能力の優れたリーダーを確保できていることが大前提です。そのうえで、中国人は「行間が読めない」ことを意識しながら、仕様書を作成しなければなりません。文章だけで細かいニュアンスを伝えるのではなく、図面やサンプルを多用し、できるだけ実データに近い資料やサンプルを補足資料として提供すると良いでしょう。
仕様書作成のコツ、口頭説明のコツ
正確で分かりやすい仕様伝達のコツは、正しく文書化すること、そして口頭で正確に説明すること、この2点に絞られます。
仕様書作成のコツ
正常系と異常系の仕様を明記
ある研究によると、システム開発における異常系処理の約7割は、プログラマが独断で決定するとされています。特に日本的なシステム開発アプローチでは、仕様書の網羅性が低いために気を付けなくてはいけません。オフショア開発における仕様書では、事前にどこが暫定仕様なのかを特定し、さらに暫定仕様が確定する時期も併せて盛り込んでおくとよいでしょう。
すべての処理条件を明記
判定条件や条件分岐の処理に関しては、すべての内容を明確に記述します。日本人なら常識的に理解できる内容であっても、外国人技術者が理解できるとは限らないからです。
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障害発生時の処理を予測
原則として、運用で発生し得る障害パターンは、すべて事前に洗い出しておかなくてはいけません。特に、日本がシステムを保守運用する契約になっている場合には、発注側が障害発生時の仕様について責任を持つことが重要です。
サンプルやデータを補足資料として活用
文章だけの抽象的な説明はできるだけ避けて、個条書きや図面を添付することも重要です。サンプルやデータは補足資料として有効だからです。特に、実際の業務に即した個別説明が最も効果的であるといえます。
用語の統一
無用な混乱を避けるため、仕様書で用いる用語は統一します。中には日本と中国とで意味が異なる用語があるので、特に注意しなくてはいけません。
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中国企業が感じるオフショア開発の問題点は“仕様関連”が最も多いとされます。そこで、中国企業向けに仕様書を記述する際には、常に具体的かつ個別説明を意識することが肝心です。そして、仕様を伝えるときには、日本から一方通行的に提示するのではなく、相手方の理解度を必ず口頭で確認しながら、進めた方が効果的です。全体の仕様理解度を測るには、中国企業が苦手とする「異常系、境界/限界系」の理解度に着目するとよいでしょう。ぜひお試しください。
次回は、日本企業の問題点として挙げられた残りの問題「仕様変更の段取りの悪さ」「担当者の技術力不足」「理不尽な条件の押し付け」などを紹介します。
profile
幸地 司(こうち つかさ)
アイコーチ有限会社 代表取締役
沖縄生まれ。九州大学大学院修了。株式会社リコーで画像技術の研究開発に従事、中国系ベンチャー企業のコンサルティング部門マネージャ職を経て、2003年にアイコーチ有限会社を設立。日本唯一の中国オフショア開発専門コンサルタントとして、ベンダや顧客企業の戦略策定段階から中国プロジェクトに参画。技術力に裏付けられた実践指導もさることながら、言葉や文化の違いを吸収してプロジェクト全体を最適化する調整手腕にも定評あり。日刊メールマガジン「中国ビジネス入門〜失敗しない対中交渉〜」や社長ブログの執筆を手がける傍ら、首都圏を中心にセミナー活動をこなす。
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