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» 2005年09月29日 12時00分 公開

日本と中国人の英語、現地ではこんな会話がされているオフショア開発時代の「開発コーディネータ」(13)(1/3 ページ)

最近の中国オフショア開発の流れを見ると、沿岸部からより人件費の安い内陸部へのシフトが加速している。しかし、中国内陸部の地方都市では、日本語が堪能な人材が圧倒的に不足しているのが現状だ。そのような場合、双方の母国語でない英語での会話を余儀なくされることもある。その際にはどのように対応すればよいのだろうか。

[幸地司,アイコーチ有限会社]

 最近の中国オフショア開発の流れを見ると、沿岸部から内陸部へのシフトが加速しています。北京や上海、大連などの大都市からの距離が遠くなればなるほど(内陸へ行くほど)、人件費が安くなるというのが最大の理由です。

ALT 大連の大学院で行われている工業用ロボット研究

 先日、中国山東省に合弁会社を設立した日本企業の開発マネージャと話す機会がありました。中国の大都市から離れた地方都市に進出するメリットをお聞きしたところ、人件費が安いことに加えて、人材が定着しやすいという点を強調されていたのが、印象に残っています。

 中国の地方都市は、北京や上海などの沿岸部の大都市と比べると、個々の技術レベルは劣るうえに、日本語の習熟度もあまり高くありません。しかし、地方都市に住む技術者は地元志向が強く、大都市の技術者と比べると離職率が低いため、人材教育のやりがいがあるというのです。

 最近は中国に飽きたらず、ベトナムにまで触手を伸ばしている筆者ですが、単に人件費が安いという理由だけで、むやみにオフショア発注先を広げる行為には反対です。特に、オフショア開発後発組の皆さまには、夢と戦略性を兼ね備えた企業活動を強く求めたいのです。「ビジョンなきものは去れ!」を合言葉にしています。

日本人と中国人が英会話をするとどうなる?

 さて、話を中国オフショア開発に戻しましょう。

 今年になって中国内陸部に進出した、ある独立系ソフトウェアハウスの責任者と話す機会を得ました。この企業は典型的な後発組です。しかし、いくつかの縁が重なって、トントン拍子で事が進んでいるといいます。詳しい話を伺ってみると、面白いことをおっしゃっておりました。

「わが社は、英語でコミュニケーションするつもりです」

 中国内陸部の地方都市では、日本語が堪能な人材が圧倒的に不足しています。人材を輩出するスピードよりも、日本企業が進出するスピードの方が何倍も速いことが原因です。ご多分に漏れず、この会社でも日本語が堪能なリーダー層が不足しているといいます。

 この責任者の方は、「向こうの方は英語がとても堪能なので、まずは英語でコミュニケーションを始めるつもりだ」と明かしてくれましたが、筆者はすかさず、こう答えました。

幸地 「日本か中国のどちらかに、英語のネイティブスピーカーはいますか?」

前出のソフトウェアハウス責任者N氏 「どちらにもいません」

幸地 「……(う〜ん、危険な香りがするなぁ)」

 最近、ほとんどの中国ベンダでは、日本語が堪能な人材を豊富に抱えているため、一部の例を除き、英語でコミュニケーションするという会社はなくなりつつあります。従って、日本人SEが「言葉が通じない!」と嘆くような、表面上の問題はほぼ解決に向かっています。

 ところが、中国側の日本語能力が低いプロジェクトだとそうもいかないのです。中国側の「ブリッジSE機能」が働かない場合、あなたは中国人プログラマと直接対話することになりかねません。一般的に中国オフショア開発では、プログラマレベルでは日本語でのコミュニケーションが難しいのです。

 筆者の場合、2001年に次のような経験をしました。そのときには、プロジェクトに火がついた状態だったので、コストを度外視して、中国から技術者を招聘しました。しかし、会議では、メモを取りながら必要最低限の事項だけを伝達するしかなかったのです。会議中の会話は英語、メモは日本語(漢字のみ)という、特殊な状況でした。

 現実には、いまでも英語でコミュニケーションしている中国オフショア開発の現場は存在します。筆者が知っている話では、このようなケースの場合、最初から狙っていたわけではなく、後から何らかの事情で「中国オフショア開発」を余儀なくされたパターンが多く、仕方なしに英語でコミュニケーションをしている場合がほとんどです。

 筆者は、オフショア開発では、原則として、どちらかにネイティブスピーカーがいる言語を使うべきだと考えています。相手が中国であれば、日本語か中国語に統一する方が望ましいのです。

 ところが、N氏の会社では、結局英語によるコミュニケーションを選択することになりました。その理由はこうです。

  • 英語を使うと、日本人にありがちな表現のあいまいさが解消される
  • コンピュータ言語に近いのは英語。だから仕様書の記述言語は英語が向いている
  • 困難といわれると、なおさら挑戦したくなるのがうちの社風だ!

 読者の皆さんはどう思われますか? ご意見のある方は、筆者が運営するオフショア開発専門ブログに、お気軽にコメントしてください。

 中国ビジネスに詳しいある専門家は、

 「日本人が中国人と会話するときは、時折英語を交えてコミュニケートするのが良い。双方が母国語でないので、対等な雰囲気で円滑に進められるメリットがある」

 とアドバイスしてくれました。なるほど、そんな考え方もあるのかと感心させられたものです。このような考えの下に立てば、中国拠点の立ち上げに奔走するN氏の会社も、英語が堪能な担当者が活躍すれば、十分に成功する可能性があります。N氏の会社の取り組みを、温かい目で見守りたいと思います。

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