日本と中国人の英語、現地ではこんな会話がされているオフショア開発時代の「開発コーディネータ」(13)(2/3 ページ)

» 2005年09月29日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ有限会社]

英語でコミュニケートするなら、手順も欧米流を見習うべし

 中国では、日本語ができる優秀な人材の奪い合いがますます加熱しています。そのため、日本語が堪能で、かつ専門性の高い人材を数多く揃えようとすると、調達コストが異常に跳ね上がってしまい、まともな経営が成り立ちません。

われわれの場合、仕様書も会話もすべて英語です。日本語での仕様書&会話は、夢のようです。日本語ができて、当社の特殊な仕様が分かり、さらにプログラムも理解できる人間というのは皆無です。トレーニングしようにも、なかなか難しいのが現状です(中国子会社に駐在する日本人)。

ALT 筆者らが訪問した大連財形大学MBAクラス

 企業秘密のために詳しくは明かせませんが、特殊な機器を生産するメーカーに勤務する日本人から、中国とのコミュニケーションに悩んでいる様子が伝えられました。以前、本連載第8回目に「中国オフショア開発と組み込み系ソフトウェア開発の相性は悪い」という趣旨の記事を書きましたが、まったく同じ現象がここでも起きていたのです。ここに、前出の中国子会社に駐在する日本人の方が届いたメールを紹介します。

-----Original Message-----

問題はやはりコミュニケーションです。メール、電話、MSN Messenger(これは文字で打てますので、お互いに母国語ではない、英語で会話するには最適です)を駆使しておりますが、やはり問題があります。

なるべく最初の仕様書の中ですべてを盛り込もうとするのですが、足りないことも多いのが現状です。その場合、現地のプロジェクトリーダーはこちらに聞くこともなく、勝手に実装してしまうため、評価の段階で問題が発覚するという場合が多々あります。

-----Original Message-----

 ずいぶん古典的な悩みを抱えているようですが、このようなコミュニケーション上の課題こそが、オフショア開発における大半のトラブルの原因なのです。筆者は、これまでに数多くの中国企業の話を聞き、幅広いタイプの中国人技術者を見てきましたが、誤解を恐れずにいうと、「日本語能力」と「技術力」は意外なほど比例しないのです。

 今年8月、東京で開催した第6回オフショア開発勉強会では「でき過ぎる日本語通訳は、案件をつぶしてしまうことがある」という話を紹介しました。ほかにも、「中国に品質部署(SQA)を設置して、日本語が得意な中国人スタッフを配置したが、ドキュメントの体裁が良いだけで、中身はまったく役立たなかった」という事例も枚挙にいとまがありません。

 これらは、日本語能力とオフショア開発の品質の相関関係が小さいことを示す、格好の事例です。ここでは、日本人に求められる語学力と開発アプローチについて、筆者の提言を述べます。

  • 日本にいる担当者にとって中国語は必須ではない。しかし、中国が好き、あるいは文化・気質・慣習を理解しようとする心構えは必須である
  • 中国現地に駐在する幹部人材は、日常会話レベル以上の中国語能力が求められる
  • 膨大な資金を投じて中国オフショア開発をする目的を思い出そう。何年か先のゴールは明確だろうか。英語で仕様伝達すると決めたのであれば、開発アプローチもすべて欧米流に統一した方が分かりやすい。真っ先に着手すべきは、発注側の業務改革である

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