日本と中国人の英語、現地ではこんな会話がされているオフショア開発時代の「開発コーディネータ」(13)(3/3 ページ)

» 2005年09月29日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ有限会社]
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特別緊急レポート:中国人民元の切り上げ、オフショア開発への影響はさまざま

 中国人民銀行は7月21日夜、人民元レートを事実上米ドルに固定している現在の為替制度を廃止し、同日午後7時以降、それまでの1ドル=8.2765元から、1ドル=8.1100元へ2%切り上げました

 中国オフショア開発に関係する者の間では、かなり前から中国人民元切り上げの噂が取りざたされていました。一部では、「北京オリンピックまで、人民元の切り上げはない」といった声もありましたが、その予測はあっけなく外れたことになります。それにしても、2005年7月21日夜(日本時間21:00)に突然発表されて、翌朝から実施されるなんて……。恐るべき中国的スピードです。

 人民元切り上げが発表された翌日の新聞報道では、「日本経済への影響は少ない」という財界の反応が紹介されていました。

 筆者自身、2%程度の人民元引き上げであれば、オフショア開発に与える影響は少ないだろうと予測していましたので、日本企業の冷静な反応にホット胸をなで下ろしたのが正直な気持ちです。

 早速、筆者が主宰するオフショア開発メールマガジンの読者を対象に、「人民元切り上げはオフショア開発に影響があるかどうか?」という緊急アンケートを実施しました。

ALT 人民元切り上げによって、貴社のオフショア開発は影響を受けますか?

 上記の結果を見ていただければ分かりますが、意外なことに、読者アンケートでは筆者の予想に反して、「影響あり」との回答が多かったのです。いったいどういうことでしょうか。中国の合弁企業に駐在する日本人マネージャの声に、耳を傾けてみます。

-----Original Message-----

人民元切り上げはオフショア開発に影響があると考えています。理由は以下の点です。

1.オフショア開発の目的がコストダウンであるので、単価UPになる元切り上げはコストダウン効果を落とす方向に働く(単純に元切り上げ=単価UPかは議論があるが、切り上げのレベルが内部努力を超えた場合は、単価UPしかないと考える)。

2.トータルコストダウン効果を継続して得るためには、オフショア開発に掛かる単価以外のさまざまなコストを削減する必要がある。

発注時のプロジェクト管理、フォローなどで発生するコストをいかに最小にしていくかの仕組みを取る、つまり、オフショア開発を効果的、効率的に実施する仕組みの確立が必要となる。

-----Original Message-----

 プロジェクトの成果に責任を持つ現場マネージャは、どうしても短期的な影響に振り回されやすいのです。一方で、筆者が尊敬する中国人経営者の1人である、ソフトブレーンの宋文洲会長は、出演したTV番組の中で人民元の切り上げや反日運動が日本企業に与える影響について次のように述べていました(◆=宋文洲会長)。

―――人民元の切り上げは、日本企業にどんな影響を与えるか?

◆安い中国人の人件費を狙っている会社は淘汰されますね。中国は生産拠点から市場重視へシフトします。

―――加熱する中国経済、バブル崩壊は?

◆人口が多く、器の大きい中国ではバブル崩壊の危険は小さいでしょう。

―――反日デモ、その真相は?

◆デモは、正常な現象ではないかと思うんです。でも、中国の市民レベルでは、日本企業の進出を歓迎していますよ。

―――反日デモによる日本企業への影響は?

◆日本企業への数字的な影響はありませんでした。ただし心理的な影響は残りました。

―――中国で失敗した企業の要因は?

◆中国人スタッフの使い方が悪いのです。原因は重要なポストを日本人だけで占めるからです。一番悪いのは、社長も日本人でナンバー2、ナンバー3もすべて日本人だとやりにくいのです。

ALT 上海ソフトウェアパーク

 このように、中国で活躍する日本人駐在員や、日本で成功した中国人経営者の言動を研究すると、中国ビジネスに欠かせない大切な要素が見えてきます。

 かつて日本円が高騰したとき、国内の輸出産業は相当な影響を受けました。その結果、日本企業は、かつてないほど継続的な体質改善を強いられることになったのです。ところが、その努力のかいあって、輸出産業は日本経済の成長をけん引する原動力となりました。

 中国オフショア開発を推進する企業は、人民元の切り上げの影響を利用して、グローバル市場における競争力を強化する企業努力に結び付けたいものです。

profile

幸地 司(こうち つかさ)

アイコーチ有限会社 代表取締役

沖縄生まれ。九州大学大学院修了。株式会社リコーで画像技術の研究開発に従事、中国系ベンチャー企業のコンサルティング部門マネージャ職を経て、2003年にアイコーチ有限会社を設立。日本唯一の中国オフショア開発専門コンサルタントとして、ベンダや顧客企業の戦略策定段階から中国プロジェクトに参画。技術力に裏付けられた実践指導もさることながら、言葉や文化の違いを吸収してプロジェクト全体を最適化する調整手腕にも定評あり。日刊メールマガジン「中国ビジネス入門 〜失敗しない対中交渉〜」や社長ブログの執筆を手がける傍ら、首都圏を中心にセミナー活動をこなす。

http://www.ai-coach.com/



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