中国オフショア開発においては、日本人と中国人の気質の違いに関する問題で苦労する場合が多い。しかし、その“中国人気質”を理解し、うまく利用すれば、納得いく仕事ができるはずだ。今回は、中国人気質を上手に利用した「品質管理」方法を紹介する。
オフショア開発時代の「開発コーディネータ」と銘打ったこの連載ですが、主に中国の話題を中心に関係者の皆さまが日ごろから感じている疑問や誤解に対して、事例をふんだんに交えながら具体的に答えてきました。
今回は、オフショア開発の重要なテーマである「品質管理」に関する話題を取り上げ、開発コーディネータが果たすべき主要な役割を解説します。
日本人と中国人のアルバイトを抱える東京のある中華料理店では、店主が愚痴をこぼしています。
「まじめに皿洗いするのは日本人。中国人は全然ダメ!」
この料理店では、アルバイトの給料はすべて時給制です。つまり、同じ時間働けば洗ったお皿の枚数にかかわらず同じ額の給料が支給されます。そんな事情もあってか、店主によると中国人のアルバイトは、
「店主が見ていないとすぐ遊ぶ」
「前もって準備しない」
「黙々と担当分のみをこなす」
などの素行が目立つようになりました。
ここで1つクイズです。
この店の中国人アルバイトを効率よく働かせるためには、いったいどうすればよいでしょうか?
回答:『時間給ではなく出来高歩合制にする』
先述の中国人アルバイトを働かせるためには、時間給ではなく出来高歩合制にすることです。店主が「働いた時間ではなく、洗った皿の枚数によって給料が決まる」と宣言した瞬間、いままで怠けていたように見える中国人アルバイトは、洗剤の白い泡をモクモクと立てて、見違えるような働きを見せるでしょう。
ただし、ここで注意事項が1つあります。
そうです。あらかじめ皿洗いの品質基準を決めておかなくてはいけません。そうしないとどうなるか、賢明な読者の方はもうお分かりでしょう。皿洗いの中国人アルバイトは、1枚でも多くのお皿を洗うために、スピードを最優先します。
初めは、きれいな皿もあれば汚い皿もあります。そのうち、「十分に洗い流したのか?」と疑問符の付く皿が現れ始めます。このとき、店主がアルバイトへの注意を怠ってしまうと、徐々に皿洗いの品質基準が低下してきます。それでも、何も注意せず出来高歩合制による給料の支払いを続けていると、やがてはほとんどの皿が不合格品となってしまいます。
皿洗いの中国人アルバイトの生産性を上げるには、洗った皿の枚数によって給料が決まる出来高歩合制が最も効率よい。出来高制を導入する際には、品質劣化を防止するための明確な合格基準(品質基準)を設置すること。
以上、中国オフショア開発の生産性と品質のバランスを考えるうえで、とても興味深い例え話を紹介しました。次に、この教訓をどうやってオフショア開発に生かせばよいのかを考えましょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.