日本ではよく、「上司は部下に細かく指示しない方がよい」といわれる。しかし、中国人はどんなに細かい指示やチェックをしても、指示待ち人間にはならない傾向があるといわれている。今回は、このような中国人独自の習慣や特徴について、読者の声をふんだんに紹介しながら対策を考える。
「中国人は、彼らにどんなに細かい指示やチェックをしても、指示待ち人間にはならないのです。細かく口を出そうが、出すまいが、勝手にどんどんと仕事を進めて何かしら作ってしまうのです」(ソフトブレーンメールマガジン2005/7/1号 七田真之氏の北京レポートより)。
「中国人に細かい指示を与えても、積極性が失われない」。非常に興味深いコメントですね。日本ではよく、上司は部下に細かく指示しない方がよい、細かい指示ばかりしていると積極性をなくす、自分で考えなくなり成長しなくなる、などといわれています。筆者も、一般論としては、これらの考え方は正しいと思います。
今回は、「細かい指示をしても、積極性を失わない」や「質問することを恥ずかしく思う、または質問攻めにする」といった、中国人独自の習慣や特徴について、筆者が運営しているメールマガジンに寄せられた読者の声を中心にお届けしたいと思います。
さて、前出の“七田真之の北京レポート”では、こんな事例を挙げています。(日は日本人上司、中は中国人の部下)
日 「そういえばあの件どうなった?」
中 「はい、順調に進んでいます」
日 「そう。“順調に”ってどのくらい進んだの?」
中 「半分くらいです」
日 「半分ってどうやって計算したの? 半分の根拠は?」
中 「ええっと。10個のドキュメントのうち5個できました」
日 「“できた”というのはどうやって判断したの?」
中 「ドキュメントを作成し、翻訳も終わりました」
日 「○○さんはそれを見てOK出したの?」
中 「いいえ、まだ見せていません」
日 「じゃあまだ半分終わったことにならないね」
中 「はい、ではすぐ見てもらいます」
この会話は、普段、筆者が中国オフショア開発実践セミナーで強調している「報告の可視化・定量化」の重要性を見事に表現しています。中国オフショア開発においては、「細かくチェックする」上司を、“明確な指示を出す有能な上司”だととらえると良いでしょう。共感を呼ぶ事例です。
あなたの周りにも、似たような境遇の方がいるのではないでしょうか。そこで、筆者のメルマガ読者に緊急アンケートを実施してみました。質問は「(前出の会話のように)細かいチェックを行っても、中国人の積極性はまったく失われない、という主張は本当だろうか?」というものです。
引用したレポートでは、以下のように締めくくられています。
「少なくとも中国では、細かく確認しないで完成するのを待っていては、期待どおりのものが出てくることは奇跡ですし、また逆に明確な指示をしない上司も部下から嫌われてしまいます」(ソフトブレーンメールマガジン2005/7/1号 七田真之氏の北京レポートより)。
中国オフショア開発の関係者の方々には、上記をあらためて肝に銘じてほしいのです。プロジェクトチームの結果に責任を持つのは上司(マネージャ)の役割です。そのために、上司はあらかじめきちっとした開発プロセスを定義しなくてはいけません。そのうえで、規定されたプロセスを正確に全うするのが部下(担当者)の役割なのです。「仕事は教えてもらうものではなく、先輩から盗むものだ」という職人かたぎの方は、中国では特に注意していただきたいものです。
日本全国で営業支援パッケージツールを販売する、ソフトブレーンを創設した中国人経営者の宋文洲会長は、部下からの報告に個人の思惑が紛れ込まないよう、報告書はあらかじめすべてチェックリスト(選択肢)形式にすることを、強く推奨しています。この手法は筆者も大賛成です。中国オフショア開発では、全般的に発注側の指示の甘さが目立ちます。もし、あなたが何度も「中国が勝手に作業を進めた」と不満を口にするのであれば、その原因はあなた自身にあるのかもしれません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.