筆者が以前に書いた、何げない文章が波紋を呼びました。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」
これは、日本の伝統的な教訓ですが、中国社会ではまったく逆なのです。皆さんは知っていましたか? 従って、日本があいまいな仕様書を出しても、中国側からは何の確認もないまま、いつの間にかプログラムが完成してしまいます。その結果、当然ながら、ユーザーの意図とは違うものが納品されます。
以下に、読者から寄せられたメールを引用します。
-----Original Message-----
先日、中国に行った際、同じような話がありました。
中国では「知らないことを質問することを恥ずかしいと思わない」だから、小さなことから自分で考えれば済むようなことまで、何でも質問します。その結果、日本人SEから「自分で考えろ!」「何でこんなことまで質問するか」とひんしゅくを買うことがよくあります。
質問の件数が多過ぎて日本側SEが閉口する、という話をよく聞きます。実際はどうなのでしょうか?
-----Original Message-----
この読者のご指摘のとおり、「聞かない中国人」と「何でも聞く中国人」の両方が存在することは事実なのです。両者はまったく逆の意見ですが、中国ではどちらも共存するところが面白いのです。従って、「質問の件数が多過ぎて日本側SEが閉口する」のは事実です。その原因を私なりに掘り下げてみました。
専門家である筆者の悪い癖か、こういうマイナス要因ばかりすぐに思い付いてしまいます。ところが、先述の読者は、「中国から質問が多いのは、とても喜ばしい現象」といいます。なぜなら、「従来の国内パートナーこそ、質問せずに勝手に仕様と違うものを作り込んできたから」だと説明します。さらにこの読者の方は、中国ベンダの質問が多発する理由について、次のように分析していました。
「知らないことを質問することを恥ずかしいと思わない」という問題については、筆者も引き続き調査を進めたいと思っています。中国オフショア開発の成否を左右する、重要な研究テーマの1つであると思います。
引き続き、読者の方からのメールを紹介したいと思います。
-----Original Message-----
幸地さんは、こんな経験ありませんか?
タクシーの運転手が、日本語の読み/発音について熱心に質問する。飲食店で「日本の方ですか? 私は日本語を勉強しているので、近くの席で話を聞いていてもいいですか?」と尋ねられる、などなどです。
余談ですが、祖父母が数十年前に大連を訪れた(旅行で)ときに、ホテルに帰ろうとした祖父母(当時は若かったと思いますが(笑))に学生風の中国人女性が、「日本語を勉強しています。教えてもらえませんか? 私はホテルに入れないので、××時にここで待っています」といって、実際にその時間にホテル前で待っていたそうです。
こういった行動は、日本人にはなかなかできませんよね。これらのことを聞くと、中国人は元来、「尋ねる」ことに抵抗がない民族なのでは? と考えたわけです。
-----Original Message-----
中国人は「質問したがらない」または「何でも質問するので閉口する」。この話題に対して、これまで10通近くのご意見メールをちょうだいしました。これは、筆者がいままで取り扱ってきた問題の中でも、過去最大の反響です。これは、そもそも180度趣旨が異なる意見が存在しており、その矛盾点や対立点を論じやすいという理由もあるでしょう。また、これに加えて、多くの人々が日常的に同じような体験をしており、独自の意見を持っていることが一因ではないでしょうか。
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