高校が「Wi-Fi 6」無線LANを導入した切実な理由 “教員の残業”を招いた問題とは?

10Gbps回線と「Wi-Fi 6」準拠の無線LANアクセスポイントを導入した札幌第一高等学校。その背景には教員の残業にもつながっていた、無視できないネットワークの問題があったという。それは何なのか。

» 2025年12月15日 08時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 1000人超の生徒を擁する私立の札幌第一高等学校が、校内ネットワークを刷新した。10Gbpsの光回線に加えて、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)準拠の無線LANアクセスポイント(以下、AP)を導入したのが骨子だ。通信速度の向上に加えて、教室だけではなく校庭などさまざまな場所でのネットワーク接続を実現した。刷新の背景には、同校が直面していた“ある課題”があった。

ネットワークのせいで教員が残業? 「Wi-Fi 6」無線LAN導入の訳

 1958年創立の札幌第一高等学校は、英会話サービスや動画サイトなどのオンラインサービスを教育活動で利用している。同校の従来のネットワークには、通信速度や通信可能エリアに制約があったことから、オンラインサービスの利用に支障が生じていた。従来のAPはチャネル設計の制約から増設が困難であり、2015年の新校舎完成時から2教室に1台ずつのAP設置にとどまっていた。そのため時間割を調整したり、活動自体を制限したりといった運用で対処していたという。

 札幌第一高等学校は授業を録画し、生徒に向けて配信している。生徒が欠席した場合でも後から学習できるようにしたり、復習の手段として生かしてもらったりするためだ。教員は配信のために、授業の録画ファイルを専用サイトにアップロードする必要がある。だが通信速度の制約から録画ファイルのアップロードに時間がかかり、結果として残業につながることもあり、教員にとって負担となっていた。

 ネットワークの課題解消のため、札幌第一高等学校は回線をデータ転送速度10Gbpsの光回線に刷新し、通信速度を向上させた。併せてAPを刷新し、バッファローの「WAPM-AX8R」に切り替えた。WAPM-AX8RはWi-Fi 6に準拠しており、利用する周波数帯が5GHz帯の場合で最大2401Mbps(理論値)、2.4GHz帯の場合で最大1147Mbps(同)のデータ転送速度を誇る。

 札幌第一高等学校は計70台以上のWAPM-AX8Rを導入した。各教室に1台ずつWAPM-AX8Rを設置し、校庭に面した校舎棟の壁面にも設置することで、教室に加えて校庭の一部でも無線LANを利用できるようにしたという。トレーニングルームを備えた地下歩行空間や体育館棟などにもWAPM-AX8Rを設置し、授業だけではなく行事や部活動などでも無線LANを利用しやすくした。

 回線およびAPの刷新により、札幌第一高等学校では生徒や教員が一斉にオンラインサービスを利用しても、遅延や切断がほぼ発生しなくなったという。通信可能エリアが広がり、生徒が自ら企画してイベントの映像配信をするなど、無線LANの活用の幅が広がっている。授業の録画ファイルのアップロードが迅速化したことで、教員の負担も軽減した。同校はバッファローのAP管理ツール「WLS-ADT/LW」も導入し、APの死活監視の効率化に生かす。本事例はバッファローが2025年12月10日に発表した。

画像 WAPM-AX8Rを導入した札幌第一高等学校(出典:バッファローのプレスリリース)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

注目のテーマ

あなたにおすすめの記事PR