Salesforceが“0円”でAIトレーニングを提供 大盤振る舞いの背景とは

SalesforceがAIトレーニングの無料化に踏み切った。自社の7万2000人の従業員に向けたAIスキル向上のための取り組みにも力を入れており、社内外を問わずAIスキルの底上げを目指している。

» 2024年10月21日 10時00分 公開
[Roberto TorresCIO Dive]
CIO Dive

 Salesforceは2024年9月18日、AIトレーニングの機会を無料提供する計画「AI for All」を発表した。同社は2025年末まで、トレーニングプラットフォーム「Trailhead」のインストラクターによるAIコースと資格認定プログラムの受講料を全て無料にする。これは同社のAI戦略の重要な布石だった。

Salesforceが“0円”でAIトレーニングを提供 大盤振る舞いの背景とは

 同社はまた、サンフランシスコ本社にAIスキルを中心に学べる物理的なトレーニングハブを開設する計画も発表した。このハブには、AIツールとエージェントに焦点を当てた従業員のスキルアップのための専用フロアが設けられる予定だ。

 2024年9月第3週初めの記者会見でブライアン・ミルハム氏(社長兼COO《最高執行責任者》)は、このAIトレーニングに対する取り組みは「地域社会への5000万ドルの投資」に相当すると述べた。

 SalesforceのAIトレーニングの推進は、同社がカスタマーサービスや営業、マーケティングなどの日々のタスクを自動で処理するよう設計された生成AIプラットフォーム「Agentforce」を立ち上げたことと関係する(注1)。

 「AIの第3波、すなわちエージェントの時代だ」と、Salesforceのマーク・ベニオフ氏(CEO兼会長)は2024年9月17日、同社の年次カンファレンス「Dreamforce 2024」の基調講演で語った(注2)。Agentforceプラットフォームは2024年10月から一般提供され、すでにJohn Wiley & Sons、Saks Fifth Avenue、The Walt Disneyなどの顧客のプロセス自動化に活用されているとベニオフ氏は述べた(注3)。

 ソフトウェア分野のベンダー各社は、生成AIツールやサービスの優位性を巡って激しい競争を繰り広げている。Microsoftは、ERPや財務を含むさまざまなシステムや機能のタスクに対応するため、「Microsoft Copilot」の提供を拡大しており(注4)(注5)、SAP SEも自動アシスタント「Joule」を自社のソリューション全体に組み込んでいる(注6)。

 Salesforce傘下のSlackは2024年9月第3週初め、Agentforceのインターフェースを発表し、ユーザーが予定作成を自動化したり、ハドルミーティングの要約を自動で取得したりできるようにした(注7)。

 しかし、ほとんどの企業が生成AIを大規模に展開する前に、現在進行中の人材不足に対処しなければならない。Skillsoftのレポートによると、C-suiteの3分の1がAIスキルを人材採用が困難な分野として挙げている(注8)。

 「これらは顧客にとって信じられないようなイノベーションだが、従業員にとっても大きな変革であり、全従業員を確実に巻き込む必要がある」(ミルハム氏)

 2024年9月18日の発表では、同社は7万2000人の従業員にAIの専門知識を高める時間を与えるため、四半期ごとに学習に専念する日を導入したことも話した。

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