中国人は質問したがり、したがらない、本当はどっち?:オフショア開発時代の「開発コーディネータ」(12)(4/4 ページ)
日本ではよく、「上司は部下に細かく指示しない方がよい」といわれる。しかし、中国人はどんなに細かい指示やチェックをしても、指示待ち人間にはならない傾向があるといわれている。今回は、このような中国人独自の習慣や特徴について、読者の声をふんだんに紹介しながら対策を考える。
オフショア開発の成功の秘訣は友達になること?
中国人の質問の問題に関する読者からの声を、さらに紹介します。
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中国語にも「不恥下問」のような言葉があります。ほかの中国企業について、私はなんともいえませんが、私が勤めた3社では中国人同士なら、みんなちゃんと聞いているようでした。
しかし、日本人から仕様とか説明を受けた場合、確かに不明でも聞かないことがよくあります。恥ずかしい部分もあるかもしれませんが、外国人(もしくは外部の人間)だから、という、気持ちの面でのなんらかの壁があるようです。特に普通の担当者の場合、分からなくても、後で中国側のリーダーに確認すればいいと思う人もいます。
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ここままでは、「何でもおくせず質問する中国人」に関する読者からのご意見を主に紹介しました。ここでは、大連に勤務するある中国人読者の声を紹介します。
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こんにちは、中国大連の○○○です。
面白い話ですので、自分もコメントしたくなりました。
私は以前Q&A管理をしたことがあります。人件費が安いからオフショア開発をするので、質問があってもすぐには日本側に問い合わせることはありませんでした。まず、質問内容を中国リーダーに確認してもらいます。または過去の質問を確認して、どうしても分からない場合に限って日本側に質問していました。
質問をする際、必要ならこちらの提案も書いてもらいます。大連でしっかりしている会社なら、どこでもQ&A管理を徹底していると思います。日本側の回答が遅くなったり、意味不明だったりすると、こちらの担当者も質問したくなくなります。
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この情報提供者は、筆者が普段から会社を超えた個人的なお付き合いをさせていただいている方です。ほかにも、北京・広州など、幅広い地域の方から定期的に生の情報をいただいています。これが筆者の武器となります。
これは中国人の知人から直接聞いた話なのですが、やはり中国人エンジニアの中にも「仕様が分からなくても、いちいち確認するのが面倒なので勝手に作り込み、後から日本側に確認してもらえばいい」と思う担当者が間違いなく存在するようです。また、先述の情報提供者は、「私の周りでは、“質問が多過ぎる”ことはあまりない」と述べています。
彼の意見を総括すると、日本との開発が未成熟な組織では、
- 十分に調査しないまま何でもすぐに質問する
- 日本人が理解できず、ささいなことでも聞かないと自信が持てない
という中国人エンジニアが多いようです。その背景には、適切な形にまとめ上げたうえで日本に質問を投げる中国側リーダーの不足という現状があります。一方で、日本向けプロジェクトで実績を重ねた中国企業では、中国側の内部レビューや質問の切り分けが適切になされており、「中国からの質問に日本は閉口する」という状態がなくなるようです。こうした問題の解決を図るうえで、良いヒントとなる読者メールが届いたので紹介します。
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この数カ月間、ほそぼそとオフショア開発を進めておりますが、少なくとも当初からずっと参加していただいているリーダーの方とは、ほんの少しですが親睦が深まった気がしています。
中国側の担当者はおおむねやる気に満ちており、最初のころ多かった「何でも質問してくる」や「何でもサンプルを要求する」といった状態から、「仮定を提示した質問」や「内容不備を指摘した質問」へと変化がみられるので、対等なパートナーになる日もそう遠くない将来だろう、という感じがしています。
-----Original Message-----
中国オフショア開発では、成果を出す前に十分な「交流」が欠かせません。最初が肝心なのです。交流を通して、無味乾燥な「目標値」を魂のこもった「約束」に昇華させることができるのです。中国人は友人との約束は守ることを覚えておきましょう。
教訓
中国オフショア開発では、成果を焦る前に中国人部下との十分な交流が大切だ。中国人は友人との約束は守ることを覚えておくべき
profile
幸地 司(こうち つかさ)
アイコーチ有限会社 代表取締役
沖縄生まれ。九州大学大学院修了。株式会社リコーで画像技術の研究開発に従事、中国系ベンチャー企業のコンサルティング部門マネージャ職を経て、2003年にアイコーチ有限会社を設立。日本唯一の中国オフショア開発専門コンサルタントとして、ベンダや顧客企業の戦略策定段階から中国プロジェクトに参画。技術力に裏付けられた実践指導もさることながら、言葉や文化の違いを吸収してプロジェクト全体を最適化する調整手腕にも定評あり。日刊メールマガジン「中国ビジネス入門 〜失敗しない対中交渉〜」や社長ブログの執筆を手がける傍ら、首都圏を中心にセミナー活動をこなす。
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