上海オフショアベンダが生き残りをかける施策とは?:現地からお届け!中国オフショア最新事情(1)(4/4 ページ)
この新連載では、中国オフショア開発の話題を幅広く取り上げていくほか、中国の最新BPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)事情や、筆者の幸地氏が中国滞在中に感じたこと、食事情まで幅広くコラム形式で取り上げていく。
幸地の見解
上海の中小ベンダでは、プロジェクトの数が少ないため、プロジェクトマネージャの職にありつける人数が制限されています。ところが、誰だってプロジェクトマネージャになりたいと願っています。BPO案件は規模が小さく短納期ですが、プロジェクトの数は多いのです。そのため、中小ベンダであっても、多数のプロジェクトマネージャ(の卵)を抱えることができます。
これは、キャリア志向の強い中国人にとって魅力的ではないでしょうか!
ただし、オフショア開発とBPO案件に従事する人材はまるっきり違うため、開発部門とBPO部門の担当レベルの人材交流は難しいでしょう。しかし、先述したようにマネージャ層の人材交流は可能です。例えば、開発プロジェクトで部下10名の面倒を見てきたマネージャがいたとき、次のBPO案件では部下50名を任せてみるのです。
こうした経験は、必ずや次回の大規模開発で生かされるでしょう。以上が、オフショア開発ベンダが並行してBPO案件を手掛ける相乗効果です。
上海のオフショアベンダがBPO案件を手掛けるメリットをまとめてみます。
- システム開発と比べて、対応できる人材の層が厚い
→日本語不要&技術レベル低い - 人材を獲得しやすく、スピーディーに対応可能
→「来週までに仕上げて!」にも対応可能(印刷業界の悪しき習慣です^^;) - 業務を覚えるまでの期間が短い
→繰り返しが多く、製造業っぽい雰囲気 - 人材獲得、人材確保のためのコストを下げられる
→採用広告、福利厚生、オフィス環境などもバカにできない - システム開発案件に比べてコストダウンの幅が大きい
まとめ
上海の既存のオフショアベンダの多くは中小規模です。ですが、たとえ規模が小さくても、少数精鋭の優秀なSE集団であれば、生き馬の目を抜く厳しい上海市場でも生き残るすべがあります。
しかし、実際にはどの会社も精鋭部隊には程遠いのが現状です。そこで目を付けたのがBPOです。BPOと聞くと、すぐにコールセンタやデータエントリなどを思い浮かべる方がいるかもしれません。
先述したように、BPOでは規模の大小を問わず、繰り返し発生する定型業務をオフショア化します。BPO作業の実態は、オフショア開発と共通点が多いのです。ところが、業務に求められる人材の質がまるっきり異なります。BPOの遂行に当たっては、スーパーマン(高級人材)は要りません。既存のオフショアベンダがBPOも並行して手掛けることによって、業務の幅が広がり、人材獲得&育成の面でも著しい相乗効果が生まれるのです。
筆者プロフィール
幸地 司(こうち つかさ)
アイコーチ有限会社 代表取締役
沖縄生まれ。
九州大学大学院修了。株式会社リコーで画像技術の研究開発に従事、中国系ベンチャー企業のコンサルティング部門マネージャ職を経て、2003年にアイコーチ有限会社を設立。日本唯一の中国オフショア開発専門コンサルタントとして、ベンダや顧客企業の戦略策定段階から中国プロジェクトに参画。技術力に裏付けられた実践指導もさることながら、言葉や文化の違いを吸収してプロジェクト全体を最適化する調整手腕にも定評あり。日刊メールマガジン「中国ビジネス入門 〜失敗しない対中交渉〜」や社長ブログの執筆を手掛ける傍ら、首都圏を中心にセミナー活動をこなす。
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