日本が得意な“カイゼン活動”。問題があった場合、それを分析して見直していく、いわゆるPDCAサイクルだが、中国ではこれを行うのが難しいという。それはなぜなのか。国民性や報酬に対する意識の違いなどが原因として考えられる。今回はこの問題を考える。
中国オフショア開発プロジェクトの終盤、日本側で品質改善のための対策会議を開きました。そこで問題を分析し、日本側で反省すべき点と中国側で反省すべき点をそれぞれ列挙しました。そして対策会議後、中国オフショア委託先のキーパーソンに「報告された問題の原因を分析して、再発防止策を報告せよ」と依頼しました。ところが、中国からは、
「この問題は修正済みです」
「申し訳ありません。すぐに対応します」
といった、見当違いの回答が寄せられます。なので、私は慌ててこう付け加えました。
「責任追及するつもりはないので、再発防止策のために問題を分析してほしい」
ところが中国からは、相変わらず対症療法的な回答しか得られません。困った私は、同僚のオフショア経験者に「良い知恵はないか?」と尋ねました。すると、次の助言をもらいました。
「中国では、WHY(なぜ)を何回も自問して、問題の根本原因を探るような改善活動は好まれません」
これが本当なら、中国オフショアチームはいつまでたっても成長を望めないことになりますが、実際にはどうなのでしょうか?
本稿ではオフショア開発における持続的改善の促進と、優れた企業風土を醸成する方法を解説します。より実践的に話を説明するために、よくある質問とそれに対する答えの形式で展開します。
オフショア開発に焦点を絞った改善活動と人材育成については、拙著「オフショアプロジェクトマネジメント【PM編】」の第3部と第5部で詳しく解説しました。では、実際のケースを見ていきましょう。
<問1>中国オフショア拠点では、問題の根本原因を探って地味に改善する手法は好まれない。すなわち、中国ではPDCAマネジメントサイクルが回らないという。これは本当か?(Y/N)
<回答1>Yes:日本との相対比較においては、まさにそのとおりです。ただし、国民文化の相違に基づく違いは、単なる「違い」です。決して、日本が素晴らしい、中国は悪いという二元論では片付けられません(異文化理解の原則1)。
また、天然資源が豊富で、汗水垂らして働かなくても現金収入が得られるブルネイ国民と比べると、中国人の方が地道に改善する精神を発揮しやすいかもしれません。要するに、国民文化に基づく特徴は、あくまでも2国間の比較によってのみ定義されます(異文化理解の原則2)。
表1:文化の三層構造の詳細説明 | |||||||||||||||
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出典:『オフショアプロジェクトマネジメント【SE編】』(幸地司、霜田寛之著、技術評論社) |
・原則1:文化に善悪はない
・原則2:文化は相対関係である
出典
『オフショアプロジェクトマネジメント【PM編】』(幸地司、霜田寛之著、技術評論社)
『オフショア開発に失敗する方法』(幸地司著、ソフト・リサーチ・センター)
『オフショアプロジェクトマネジメント【SE編】』(幸地司、霜田寛之著、技術評論社)
参考記事
文化や言語の壁を超えるオフショア開発とは? (@IT情報マネジメント)
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